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日本の旅人には分からない2つの島のイスラム濃度

JBpress 6/25(土) 6:00配信

 インドネシアのバリ島のすぐ東隣に、ロンボクという島がある。この島がイスラム教を受け入れたのは16世紀、今も住民の多数はイスラム教徒が占める。しかし、17世紀から19世紀にかけてこの島はバリの8王国の1つ、カランガスム王国が支配していて、それ以来、マジョリティのイスラム教徒(特にもともとこの島に住んでいたササック人たち)の中で、バリからロンボクにやって来た人々の子孫は静かにヒンドゥー教を守り続けている。

バリのガムラン演奏、ロンボクの夕暮れの海岸(写真)

 一方、バリは、今も昔もヒンドゥー教の島だ。最近ではイスラム教徒の住民も増えてきているものの、住民の多数はバリ式のヒンドゥー教、いわゆるバリ・ヒンドゥーを信仰している。家の中には小さなお寺があり、バリの人びとは1日に5回、お供え物をして水をまき、祈りをささげる。それは日本の神棚の要領に近い。神棚との違いは、おじいさんを亡くしたおばあさんだけでなく、老若男女問わずみなが祈りをささげているということだ。

 町を歩くとお香の香りがして、お香にはヒンドゥーの神様のカラフルなにおいが詰まっていて、ここは小ぎれいなインドのようだという感想すら抱く。

 象の神様、ガネーシャの絵が入ったTシャツが、土産物屋の軒先にはためいている。それを西洋人の旅行者が手に取り、ぴんと引っ張る。ガネーシャの顔は伸びて、鼻はますます長くなる。門の前、道端に、いたるところに置かれた、草を編んだお供え物の小さなかご・チャナン。赤い花とクラッカーと合間にお香がささって、ふわふわと煙を立てる。目をつぶって祈る女の額には米粒がついている。鎖骨にも等しく、米粒がついている。上半身裸の男たちの、腕に、胸元に、肩先に見えるのは、ヒンドゥーの神様を模したタトゥー。ヒンドゥーの場所は、土のにおいがする。

■ 船に乗って1時間でイスラムの島に

 船に1時間乗ると、ロンボク島の西岸に着く。道沿いには金のモスクが、エメラルドグリーンのモスクが、真っ白なモスクが、それぞれ赤道直下の太陽の日差しを受けて、キラキラと外壁を煌めかせている。

 女はスカーフの中にすっぽりと髪をおさめ、長いスカートの裾は地に引きずられて少し埃っぽい。もうすぐラマダンね、と彼女たちは言う。「知ってる?  ラマダン、断食月のことなんだけど」「知ってる」と私は答える。裸の男たちの胸元にタトゥーはない。「イスラム教では禁止されているからね」

 夕べに、海辺のモスクに向かって、礼拝用の小さなイスラム帽をかぶり、白いシャツドレスを長くはためかせる2人の男が歩いている。インドネシア人にしてはアラブに近い服装に、私ははっと、この島がイスラムであることを思い出す。彼らは夕陽を背にしてうつむきながら歩き、まるでモスクに着く前から祈っているようだった。

 1日に5回、モスクのスピーカーからアザーンの響きが漏れてくる。私はそれを聞いて、心をしんとしずめる。誰かが見守ってくれているような気がする。イスラムの場所は、人のにおいがする。

■ 「インドネシアは旅しやすい」

 朝の海で泳いでいると、近くで泳いでいたアラブ系の顔立ちの青年が近寄ってきて、「オンジョイ」と言った。フランスなまりの英語で、きっとエンジョイと言いたいのだろう。アラブ系のフランス人に違いない。そう予測して「フランス人?」と聞くと、青年は「アルジェリア人だよ」と答える。「でも今はフランスに住んでいるんだ」

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最終更新:6/25(土) 9:05

JBpress

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