ここから本文です

指示待ちタイプにプライド先行型。頼りない若手を一人立ちさせるには?

HARBOR BUSINESS Online 6/25(土) 16:20配信

 若手がなかなか育たない……。そんな悩みを抱える職場は少なくない。“指示待ち”タイプも困るが、プライドばかり高くて実力が伴わないのも厄介。仕事がおぼつかない部下や後輩を一人立ちさせるには、どうすべきか。

 今回は『五二屋傳蔵』(山本一力著/朝日新聞出版)から打開策を探りたい。

 タイトルにある「五二屋」は質屋を指す符丁(五と二を足すと「七(しち)」になる)。本作の舞台は江戸深川にある老舗質屋「伊勢屋」。生活に困窮した母子、盗品を持ち込む輩、強盗一味まで、さまざまな人々が店を訪れる。主人公・傳藏は伊勢屋の八代目当主。持ち前の鋭い勘と行動力で、降りかかる難題を次々に解決していく。

◆「どれほど気立ても器量もよくても、ツキのないひとを雇うことはできません」

 伊勢屋の番頭が懇意にする料亭「折鶴」。女将は数多くの奉公人を雇ってきた。雇い入れた後、ためらいなく暇を出した相手には、ある共通点があるという。「どれほど気立ても器量もよくても、ツキのないひとを雇うことはできません」と、女将は語る。

 料亭は景気の良し悪しの影響を受けやすい商売のひとつだ。景気が悪くなれば客足も鈍る。人気が傾けば、屋台骨も揺らぐ。ビジネスの要となる能力は、仕事の数だけある。打たれ強さに愛嬌、探究心……etc。まずは最重要スキルを絞り込み、徹底して磨きをかける。その取捨選択が“頼りない若手”を次のステージに引き上げる。

◆「おまんまを戴くときに、泣いたりするのは縁起に障るからね」

 母親と別れ、伊勢屋で丁稚小僧として働き始めた亀次。昼食の席で気がゆるんだのか、涙が止まらなくなる。母親代わりの女中・おひでは「おまんまを戴くときに、泣いたりするのは縁起に障るからね」と咎める。さらに、 “泣きたいなら庭に出て泣け”と叱った。

「縁起」とは仏教用語で「因縁によって万物が生じ起こること」を指す。いわば、因課論である。食事中に泣く者がいれば、周囲も気が気ではない。食事がおろそかになれば、仕事に支障をきたす恐れもある。だからこその“庭に出て泣け”発言なのだ。冷たく突き放しているようでいて、丁稚小僧としてあるべき振る舞いを教える発言でもある。

◆「しくじらねえためと言うと、みんなのあたまにはしくじりが浮かびやす」

 伊勢屋への押し込みを目前に控えた盗賊一味。リーダー格の男が「しくじらねえためには……」と話を始めるようと、仲間の一人が割って入る。曰く「しくじらねえためと言うと、みんなのあたまにはしくじりが浮かびやす」。“上首尾に成し遂げるために”と言い換えてほしいと懇願する。

 ネガティブな物言いは“呪い”に他ならない。同じ指摘も、ポジティブな言い回しを選べば、伝わり方は如実に変わる。士気を高く保つ努力は、おのずとチームの成果につながるものだ。

「若手が育たない」という嘆きには“自分は悪くない”という自己弁護が潜んでいる。どんなに頼りない若手にも、適材適所はある。そう信じるのも“教育係”の仕事のうちだ。本気で相手を見込んで、仕事を頼む。その覚悟がお互いを育てる。

<文/島影真奈美>

―【仕事に効く時代小説】『五二屋傳蔵』(山本一力著/朝日新聞出版)―

<プロフィール>

しまかげ・まなみ/フリーのライター&編集。モテ・非モテ問題から資産運用まで幅広いジャンルを手がける。共著に『オンナの[建前⇔本音]翻訳辞典』シリーズ(扶桑社)。『定年後の暮らしとお金の基礎知識2014』(扶桑社)『レベル別冷え退治バイブル』(同)ほか、多数の書籍・ムックを手がける。12歳で司馬遼太郎の『新選組血風録』『燃えよ剣』にハマリ、全作品を読破。以来、藤沢周平に山田風太郎、岡本綺堂、隆慶一郎、浅田次郎、山本一力、宮部みゆき、朝井まかて、和田竜と新旧時代小説を読みあさる。書籍や雑誌、マンガの月間消費量は150冊以上。マンガ大賞選考委員でもある。

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:6/26(日) 10:47

HARBOR BUSINESS Online

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。