ここから本文です

ステージ優勝を逃し川崎の“無冠の呪縛”は継続 それでも中村憲剛の目に失意が宿らぬ理由

Football ZONE web 6/26(日) 18:41配信

川崎勝利も鹿島がファーストステージ制覇

 夕暮れ時の等々力陸上競技場に、大宮アルディージャ戦のスタメンの一員として川崎フロンターレの象徴である背番号「14」の名前が呼ばれると、スタジアム全体を大歓声が包み込んだ。今季ホーム最多2万6612人の観衆が詰めかけた25日のファーストステージ最終節、全てのサポーターが負傷離脱していたキャプテンの復帰を、そして川崎の悲願の初タイトルを心待ちにしていた。

英メディア選定「FKキッカー世界トップ5」 中村俊輔もランクイン

 MF中村憲剛は、1週間前に行われた第16節アビスパ福岡戦を腰痛により欠場した。勝てばステージ優勝に王手がかかる一戦の命運を仲間に託した。しかし、結果は2-2のドロー。最終節を目前に、第12節から死守してきた首位の座を鹿島アントラーズに明け渡してしまった。この試合が今季のリーグ戦で唯一、中村が欠場した試合だったが、最下位の福岡相手に致命的な勝ち点1止まりとなった。

 そのなかで迎えたホームでの第17節。先発に名を連ねた中村は、「福岡戦の責任を強く感じていた」と、より一層の気迫を持って試合に臨む。

 序盤から大宮守備陣は中村に激しいチャージを仕掛け、二度、三度とピッチに転倒するシーンが続いた。しかし前半22分、敵陣で相手のパスをインターセプトすると、間髪入れずに前線へスルーパス。裏に抜け出していたFW大塚翔平がボックス右でボールを受けると、冷静にゴール左隅に流し込み、先制点を奪った。中村はすぐさま大塚に駆け寄り、頭を3回叩いて今季初ゴールを祝った。

 この試合、中央が本職の中村が左サイドハーフに配置されていたが、先制点の場面について試合後、「これまで基本的に(大久保)嘉人がパスの供給先だったけど、今日は自分が左に入ったことで、(トップ下に入っていた)翔平がスペースに走り込んでくれるから、パスの選択肢が増えた」とコンバートを前向きに振り返った。

中村が実感する川崎の進化

 試合が後半に入ると、この日一番のハイライトが訪れた。後半11分、右サイドでボールを受けた中村が、ドリブルでボックス内に侵入。3人のマークがついたなかで左足を一閃すると、ボールはゴール左隅に突き刺さり、貴重な追加点となるスーパーゴールが生まれた。「前線の選手がマークを釣ってくれたおかげ」と謙虚に語ったが、負傷明けとなる復帰戦で1ゴール1アシストをマークし、圧倒的な存在感を放って2-0の勝利に貢献した。

 それでも、同時刻に行われたゲームで首位の鹿島が福岡に勝利したことで、ファーストステージ優勝は夢物語に終わった。あと一歩のところで、またも悲願の初タイトルがその手からこぼれ落ちた。「今年のチームは勝負強い」と、今季のチームの完成度については特に自信を示してきただけに、悔やまれる2位でのフィニッシュとなった。しかし、その表情に失意の色はない。

「勝ち点を38も得ることができて、最も重要な年間勝ち点1位を狙える立場にあることを喜ぶべきなのも事実で、ファーストステージの優勝を鹿島に譲ってしまったことを悔むべきなのも事実。でも、今年は若手も中堅組もグッと成長して、僕と嘉人が常に声を張り上げなくてはいけない状況はなくなった。新戦力組も馴染んできている。今年は今まで以上にそれを実感する」

 ファーストステージでの黒星はわずか1つ。2戦連続の引き分けもなく、失点も例年に比べて格段に少なくなった。優勝こそ果たせなかったが、それら数字で示された事実こそが川崎が明確に勝負強くなった証だ。初タイトルを逃した主将の目に宿っていたのは、失意でも後悔でもなく、最後に王者となるための並々ならぬ闘志。中村は最後に一言、「これからですよ。まだ、半分ですから」と口にして、颯爽とスタジアムを後にした。

城福達也●文 text by Tatsuya Jofuku

最終更新:6/26(日) 18:41

Football ZONE web