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塚本晋也監督、“20年来の大親友”L・アザリロヴィック監督と登壇 「妥協なき姿勢に励まされている」

リアルサウンド 6/27(月) 10:28配信

 現在開催中の「フランス映画祭2016」の関連イベントとして、最新作『エヴォリューション』が同映画祭にて上映されるルシール・アザリロヴィック監督と、アザリロヴィック監督と親交の深い塚本晋也監督によるマスタークラスが、昨日6月26日、アンスティチュ・フランセ東京にて行われた。

 両監督は、アザリロヴィック監督の長編デビュー作『エコール』(04)の上映後に登壇。『エンター・ザ・ボイド』『LOVE【3D】』のギャスパー・ノエ監督のパートナーとしても知られるアザリロヴィック監督は、塚本監督との出会いについて、「私も製作の協力をした『カノン』でギャスパーと一緒にアヴォリアッツ国際ファンタスティック映画祭に行った時、ちょうど塚本監督の『鉄男』が上映されていたんです。作品を観た私たちは「これはすごい映画だ! この日本人監督に絶対に会いに行かなくちゃ!」と思いました。私たちが2人で迫っていったので、塚本監督はちょっと怖がっていたかもしれないです(笑)」と当時を振り返る。塚本監督も「こんなに長くお付き合いが続くというのもビックリですね。ギャスパーの家に泊まったこともありますし、『ミミ』の前に作られたルシールの短編もかなり早い段階で見せてもらいました。暗いんですけどすごく綺麗で、『ダークビューティフル!』って言ったら、そのフレーズを相当喜んでくれました」と思い出を語った。

 アザリロヴィック監督は塚本監督の作品について、「新しいものを発明するような実験的な作品です。楽しさもあるし、感動も呼ぶし、非常に自由に作っていらっしゃる。『BULLET BALLET/バレット・バレエ』や『東京フィスト TOKYO FIST』はとても好きですし、『六月の蛇』にはすごく驚きました」と語りながら、「彼の作品は、夢がだんだん悪夢になっていくようなところがあって、それがすごく好きなんです。最新作『野火』も歴史を語る戦争映画でありながら、非常に現代的で、メンタルの深さもある」と分析。続けて、「ギャスパーも言っていましたが、塚本監督は、監督、俳優、照明、編集、製作など、すべてやってしまう“オーケストラマン”。それが信じられない。『野火』に関しては配給までやっている。役を演じられている時はすごく感動を生む演技をされています」と称賛した。

 「今日はルシールの場なので……」と塚本監督が謙遜しながら、上映が行われた『エコール』の話題に。塚本監督は、卒業まで外界と接することなく、7年間を学校の中で過ごす6歳から12歳までの少女たちを描いた『エコール』について、「今ここにいるルシールがそのまま映画になったよう。一緒にカラオケに行っても小ちゃい声で唄うような、少女みたいな感じがそのまま映画になっている」と感想を述べる。すると、アザリロヴィック監督は「外部の大人の視線ではなく、少女の視線で捉えた世界を見せたかった。かなり自伝的な内容です」と語った。塚本監督が「最後に“ギャスパーへ捧ぐ”って出てきますよね? あれ、私はこうやってあなたに辿り着いたっていうような話だから、ギャスパー泣いたんじゃないですか?」と質問すると、「はい。それで“自伝的”ということになるんです」と笑顔で答え、会場を和ませた。

 さらに塚本監督は、「割と自分はじっくり撮る方だと思われてるんですけど、結構せっかちで雑なところがあるんです。ギャスパーもそうなんですけど、ルシールにはそういうのがまったくなくて、すべて厳格に映像を作っている。その厳格性に、僕も『よっしゃ頑張ろう!』って励まされるんですけど、厳格性はどうやって保っているんですか?」と質問。アザリロヴィック監督は、「映画作りは私にとってすごく難しいところがある。だから、自分なりのルールを作ってそれを守るようにしています。例えば、ストーリーボードを作らない、なるべく固定ショットで長回しで撮る、というようなことです。塚本監督の作品のように、動く映像にはすごく憧れがあるんですけど、なかなかできないんですよね」と、自身の映画作りにおいてのルールを明かした。

 続いて、話題はフィルムとデジタルの話に。アザリロヴィック監督は、「『エコール』は16mmフィルムで撮って、35mmでプリントしています。世代ということもありますが、私にとっては映画=フィルムです。そのほうが生き生きとしているし、カメラワークもきれいに流れるようになる」とフィルムへの思いを語る。続けて、「一方、最新作『エヴォリューション』はデジタルです。私にとって初めてのデジタル作品だったので、どうなるか心配でしたが、なんとかうまくできました。フィルムからデジタルへの移行の話になると、よく映像が変わったことが大きな変化だと言われます。でも、実際は編集の作業がすごく変わったように思います。私にとってはデジタルの編集がすごく難しかった」と、デジタルの編集作業に苦労したというエピソードを披露した。

 『エヴォリューション』を鑑賞したという塚本監督は、「海の映像で始まる最初のシーンがあまりにもきれいだったので、今日会った時『こんにちは』の代わりに『あれ35mmで撮ったの?』って聞きました。で、デジタルで撮ったと聞いてビックリしました。物語ももちろんすごいんですけど、映像が物語を生み出す。デジタルですけど、本当に35mmフィルムにしか思えない映像でした」と感想を述べる。さらに、「僕は死ぬ直前に、海の中で少年が直立しているシロイルカに会ったところで終わるような映画を作れたら、人生最高だと思っているんですけど、その導入がいきなり始まっちゃったかと思って(笑)。『待って! 先にいかないで!』って思いながら観ていたら、案の定少年が出てくるんですよ。『ヤバ!』と思ったんですけど、少年が会うのがシロイルカじゃないので、乞うご期待(笑)』と話し、会場を沸かせた。

 最後に、塚本監督は「ギャスパーもそうですけど、ルシールの映画は、自分の頭の中のものを大事にしながら、そのまま厳格に妥協なく皆さんにお見せする。その姿勢には本当に国の境目を超えて励まされています。自分も影響を受けているので、これからも是非頑張っていただきたいです」とアザリロヴィック監督にエールを送り、イベントを締めくくった。

 なお、『エヴォリューション』は本日6月27日にフランス映画祭で上映された後、11月に全国公開される予定だ。

リアルサウンド編集部

最終更新:6/27(月) 10:28

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