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[電力自由化]で得する家庭、損する家庭

HARBOR BUSINESS Online 6/27(月) 9:10配信

一般家庭における電力市場が4月、ついに自由化された。だがサービス内容は複雑、最適解を選ぶのは難しい。そこで市場に詳しい2人の識者に、お得にする方法を聞いた。

◆[電力自由化]で得する家庭、損する家庭。

 これまで、一般家庭では地域によって決められた電力会社からしか電気は購入できなかった。それが今春、ついに一般家庭における電力市場の自由化が始まり、購入先を選べるようになった。制度変更に伴って、サービスを提供する事業者は一気に増加。その数は、全国で160社を超える乱立ぶりだ。

 ところが、各社が提供するサービス内容は実に複雑。そもそも自宅の電力事情を把握していない消費者は多く、切り替えを行う家庭は少数派だ。

「使う電力量やライフスタイルによってあずかる恩恵にばらつきがあります。今回の自由化は電気料金への意識を高めるいいきっかけと考えるべきです」

 こう語るのは、元経済産業省の官僚で、現在は太陽光や風力、バイオマス発電を自身で手掛ける宇佐美典也氏だ。

「注目なのが、Looop(ループ)でんきです。電力量料金は東京電力よりも高いものの、基本料金が無料というプランがあります。一人暮らしでクーラーもあまり使わず電気消費が少ないという方は、お得になる可能性が高い」

 また、既存の自社サービスと組み合わせて、特典などでお得感を出しているところも多い。

「例えばauやソフトバンクですね。こうした会社の携帯電話を使っていて、今後も使い続けるだろう人は、各社のセットプランを利用するのもいいかもしれません。自動車での移動が多く、ガソリン消費が多い人には昭和シェル石油やJXエネルギーなどがあります。ガソリン価格が安くなりますから。他にも、東急電鉄グループの東急パワーサプライは、電力使用量に応じてPASMOカードのポイントが貯まります。いずれも電気料金そのものは大きく値下げされませんが、自社サービスとの抱き合わせで、お得になるように設定しています」

◆契約年数などの縛りには注意を!

 だが、こうした電力会社以外の事業者が提供する抱き合わせサービスには注意も必要だ。指摘するのは、関東3か所に太陽光発電所を建設した、電力市場に詳しいライターの藤本健氏。

「携帯電話会社に顕著ですが、契約した場合には2年間の縛りがあります。まさに携帯電話回線の契約と同様にユーザーを縛ろうとしているわけです。事業者による囲い込み戦略であることも意識すべき視点です」

 せっかく電力市場が自由化されたのに、こうしたサービスを選ぶことで、逆に“不自由”になってしまう可能性もあるわけだ。

「さらに、こうした事業者の場合、自ら発電所を持っておらず、外部から調達してくるんです。そうしたビジネスモデルで、そもそも電気を大幅に安く売れるはずがないですよね」

 電気の購入先を切り替えた場合、多くの家庭では安くなったとしても月に数百円程度というのも現実だ。それならば、少し節電すればいいだけの話という。

◆2020年まではトレーニング期間

 電力会社を替えても、それほどお得感がない。それでは、どうして電力市場の自由化をしたのか? 再び元キャリア官僚の宇佐美氏に解説をお願いした。

「今回の電力市場の自由化というのは、完全自由化に向けての第一歩にすぎません。次のステップ、ガス市場の自由化のある来年からはより本格的な競争が起こります。そして2020年頃をめどに、完全な自由化を行おうというのが政府の方針です。例えば、原油が上がったら即座に電力料金も上がるという仕組みになるかもしれません。これまでは電力会社が勝手に料金を上げられないように政府が見張ってきましたが、自由化はその規制がなくなるのです」

 自由化すれば、電力が安くなるというのも誤解だ。世界に目を向ければ、電力自由化で先行した国では、ほぼ例外なく値上げされているからだ。

「ですから、今は完全自由化後に損をしないために、電力リテラシーを高めるためのトレーニングをすべき期間なんです。ある意味、利用者が政府に守られている今のうちに、電気料金の仕組みを見る目を養う良い機会にすべきです」

 だが、漠然と各電力会社の動向を見ていても、見る目を養えそうにもない。トレーニングという意味も含めて、損しない範囲内で電力会社を切り替えてみたい。この観点から、宇佐美氏に改めて注目すべき電力会社を聞いた。

「結局のところ、安さを優先するのなら、原発が稼働した後の東京電力が一番安くなる可能性が高いです。既に高圧部門では再稼働を見据えた価格設定にしつつある。そんな中、例えば反原発という考えを持っている人であれば、東京ガスに切り替えるのもアリですよね。もしくはLooopなど、再生エネルギーを含んだFit電力を提供している新電力という選択肢もあるでしょう。どれくらいが石油や石炭の化石燃料で発電されているか、または再生可能エネルギー由来の電力なのか、その構成比は各事業者が発表しています。最初はとっつきにくいでしょうから、『電力エネニュー』など電力会社の比較サイトなどを参考にするといいですよ」

 自分のライフスタイルに最適な、損をしない電力会社を見つけるのが早道。そうすることが、来るべき本格的な電力市場自由化に向けての備えとなるのだ。

◆乗り換えるならココ!? 注目の電力事業者

基本料金ゼロ!再エネ支持派に◎『Looop』

ソーラーパネルなど、太陽光発電の設備を販売する会社が興した事業。供給電力のうち26%が再生可能エネルギー。比較的に電気料金は安く設定されている。大規模事業者向けへの供給実績もある

車での移動が多い人には魅力大『昭和シェル石油』

同社スタンドでガソリンを給油した場合に、レギュラーで10円/リットル引き、軽油で5円/リットル引きとなる。電気料金は、電力使用量が月に600kWhを超える家庭でのみ、東京電力よりも安くなる

近所のスーパーのポイントが貯まる『スマ電』

スーパーマーケットで電気が買える「スマ電」。電力使用量が多いほど割引率が高くなり、300kWhを超えた場合は12%お得。また契約したスーパーが独自に設定したポイントや会員割引が得られる

東電に対抗できる唯一の大本命『東京ガス』

ガスと電気とのセット割では、電気料金の基本料金が毎月270円、年間3000円お得。提携プロバイダーと契約すれば、通信費だけでも年間1万2000円お得になる。その他、お得な特典が多い

東急沿線在住ならお得度が高い『東急パワーサプライ』

東急グループなので、東急沿線在住であれば、さまざまな特典を得られる。同社クレジットカードのポイントが貯まるほか、東急線のPASMO定期券購入時やオートチャージの際に、ポイントが2倍に

【宇佐美典也氏】

元経産省官僚。太陽光や風力、バイオマスなどの事業を手掛けるエネルギーコンサルタント。新電力の立ち上げにも携わる。著書に『30歳キャリア官僚が最後にどうしても伝えたいこと』

【藤本 健氏】

ブロガー/ライター。Webサイト『DTMステーション』を運営するライター。また自身で山梨県と千葉県に、太陽光発電所を設置するまでの様子をWebサイト『家電 Watch』でリポートしている

取材・文/河原塚英信 図版/ミューズグラフィック

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:6/27(月) 19:16

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