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理想のアパルトマンを見つけるための 雨宮塔子さんの細かなチェックポイント

CREA WEB 6/27(月) 12:01配信

第20回:“オスマン様式”は物件の中でも根強い人気を誇る

(第19回「パリに来てから6回目となる引越しを前に 雨宮塔子さんが譲れない物件の条件は?」のつづき)

 じゃあ、その私的に素敵だと思えるディテールは何かというと、たとえば“cheminée”(暖炉)や“moulure”(縁飾り)。暖炉は昨今のパリでは“cheminée condamnée”(使用されていない暖炉)がほとんどで、実際には使えない場合が多いのだが、この暖炉がサロンにあるだけで、すごくフランスらしいアパルトマンに映るのだ。

 パリでの引っ越しを5回経験した私も、この暖炉の付いた物件に2回住めたことがあるのだけれど、白の石材でできた暖炉の上にお気に入りのオブジェを置いて、よりフランス的気分を盛り上げたりしていた。不動産サイト上でも、暖炉付き物件は必ずそのように明記されているけれど、時に使われている大理石などの石材が白ではなく、焦げ茶だったり、深い緑色だったりするので、私のように暖炉イコール白というイメージがある人は、やはりアパルトマンの下見の際に確認することが肝要だ。

 moulureはいわゆる建築用語のひとつで、壁と天井の境目や、天井の中央などに装飾を施す目的で作られたそうだ。“オスマン様式”と呼ばれる、物件の中でも根強い人気を誇るナポレオン3世時代に建てられた石壁のアパルトマンには、このmoulureが随所に見られる。

 cheminée、moulureに続いて私がサイト上で一応チェックする細部は、“balcon”(バルコニー)付きかどうかだろうか。前述したオスマン様式のアパルトマンには2階と5階(日本でいう3階と6階)に美しいバルコニーが備わっている場合が多い。なぜ2階かというと、当時はエレベーターがないので、地上から近すぎず、でも階段で上がる距離は長すぎないこの階に富裕層が住んでいたからだそうだ。

 が、ではなぜ5階にもあるのかというと、その理由は定かではない。体力に自信のある、若くして財を得たかつての富裕層が建てさせたのか、あるいは後世になってエレベーターを作る技術ができてから増築したのか……。私は勝手に当時からあったのだと思っている。アパルトマンの外観を眺めた時に、2階にだけバルコニーがあるよりも、5階にも備わっている方がバランスがいいのだ。美に対してうるさいフランス人だから、つまるところ需要よりも景観を重視したのではないだろうか。

 とにかく、今でもこのバルコニー付きは人気があるのか、物件サイト上でもここが売りとばかりに謳っている。とくに、“balcon filant”(長いバルコニー)なんて明記してあるものは部屋から部屋に渡り歩けるほどバルコニーが長く、ロートアイアンの美しい曲線を描く手すりがついているに決まっていて、ついついうっとりとしてしまう。

 ここに挙げた3点はあくまで“素敵だと思う”ディテールであって、けっしてマストな条件ではない。私にマニアックな気質があるのは認めるが、この3点は一般的にも素敵なディテールなので、この3つが備わっている物件は家賃も高いのだ。ただ参考までにチェックしてみて、この3点のうちどれかがついているのに家賃がお手頃だったとしたら、それはお買い得物件として候補に上がる。

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最終更新:7/26(火) 14:21

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