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中国「三戦」に対抗する米海軍の頭脳戦

JBpress 6/28(火) 6:10配信

 中国の南シナ海における岩礁埋め立てや軍事拠点化に代表される、力による現状変更や国際的な規範無視が顕著である。それとともに、中国は“アジアの安全はアジアの人々が守る”とした「新安全保障観」や、海路と陸路の経済の活性化を図る「一帯一路」といったスローガンを掲げ、アジア太平洋地域における主導的立場を採ろうとしている。

ニューポートにある米海軍大学の建物(写真)

 2011年11月、米国は、中国の軍事的能力の向上と軍事的行動の拡大を踏まえて、「リバランス」政策を掲げ、アジア太平洋地域をその最優先事項の1つとした。厳しい財政事情下にある米国は、すでに世界の警察官とはなり得ないとは言え、依然として、同地域に大きな影響力を及ぼす主導的立場にあることは間違いない。

 このように、現在のアジア太平洋地域は、地域秩序を揺るがす挑戦がなされ、これはまさに「火が立たない戦争」と形容することができよう。この平素からの戦いという視点から想起されるのが、中国特有の戦争形態である「三戦」である。

 「三戦」とは、国内外の世論に訴える「世論戦」、相手の心を揺さぶる「心理戦」、行動の正当性を主張する「法律戦」からなり、2003年の『中国人民解放軍政治工作条例』により、人民解放軍の任務として加えられている。

 「三戦」を通じ、中国の考えが国際社会に浸透、拡散していく影響力は計り知れないものであり、特に、南シナ海や東シナ海等の海洋における影響力の行使が顕著である。特徴的なことは、軍事的行動が活発化、広域化し、それとともに高圧的な主張が伴っていることである。中国は、「三戦」を駆使してアジア太平洋地域における主導的立場を確保しようとしており、つまり、主張しつつ行動するのが「三戦」の実態と考えられる。

 このような中国の海洋における主張と行動に対し、米海軍は「航行の自由作戦」やASEAN諸国との連携などによって影響力の行使を維持し続けている。その米海軍を強力に支えているのが、「米海軍大学」である(上の写真)。

  (* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の写真をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47168)

 米海軍トップのリチャードソン(John M. Richardson)海軍作戦部長は就任後3週間を待たずして米海軍大学を訪れ、1884年の創立以来、米海軍大学が米海軍の知的基盤であることを強調した。これは、米海軍大学の特別な位置づけと、米海軍がいかに米海軍大学に信頼を置いているかを示す出来事であった。

 実際に米海軍大学は、長きにわたって米海軍の戦略構築に大きな影響を与え、とりわけアジア太平洋地域の平和と安定に長く寄与してきた実績がある。それでは、中国の主張と行動に対して、米海軍大学はどのようなシーパワーを行使しているのであろうか。

■ 図上演習が生み出す3つのシーパワー

 世界最強の米海軍を支える米海軍大学と言えば、『海上権力史論』で名を馳せたシーパワーの権威、A.H.マハン(Alfred Thayer Mahan)が教鞭を執っていたことでつとに知られている。

 米海軍大学の最大の特徴は、130年以上の長きにわたって、「シーパワーをいかに行使するか」を問い続けてきた図上演習にある。太平洋戦争が、米海軍大学における図上演習を踏まえて作られた対日戦争計画「オレンジ計画」とほぼ同じような作戦展開がなされたという実績を尊重し、現在も年間50回もの様々な図上演習が繰り返されている。

 米海軍大学の図上演習生みの親であるW.マッカーシー.リトル(William McCarty Little) 大尉に次ぐ永続勤務を誇る現在の図上演習部長のデラボルペ (David DellaVolpe) 教授は、過去の膨大な教訓から、作戦を成功に導く大きな鍵は、「コンセプト、図上演習、訓練、実際」のステップにあることを強調している。

 つまり、図上演習が生み出すシーパワーとは、研究を通じて、コンセプトを作り出し、それを発信し、そのコンセプトに基づく図上演習を繰り返すことにより、徹底的な検証を行う。そして、最後に艦隊レベルの実動訓練を実施しなければ、実際の作戦はできないという考えに基づく影響力の行使と言える。この発信力、検証力、訓練力という3つのシーパワーを通じて平素から影響力を行使することは、まさに中国の「三戦」に対する「頭脳戦」である。

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最終更新:6/28(火) 6:10

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