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右傾化を許した失政でどんどん貧乏になる英国

JBpress 6/28(火) 6:20配信

 「まさか、ということはあり得る。頭痛の種だ・・・」

 そう言って、サー・ジョン・ボイドは頭を掻きました。このところロンドン滞在の折は、必ずサー・ジョン邸をお訪ねします。ケンブリッジ大学チャーチル校前学長として大学間協力のサポートをいただく、あるいは前大英博物館長として研究プロジェクトでお世話になる・・・。

 様々な話題がありますが、彼と食卓を囲むと、話題の中心はどうしても外交になります。

 現在もアジアハウス理事長の職位にある英国の老練な外交官であるサー・ジョン・ボイドは1990年代前半には駐日大使として東京で様々な音楽イベントも主催しておられました。

 自身も長年にわたってヴィオラ奏者として室内楽で活躍してこられたサー・ジョンが、このところ一番恐れていたのが英国のEU離脱でした。そしてそれが現実のものになりつつある。

 「グレグジット(Grexit)よりブレグジット(Brexit)が先に来る、などということは、あってはならないことだけれど・・・」

 そのあってはならないこと、「まさか」が「まさか」でなくなってしまったのが2016年6月23日でした。ことによるとこれは大英帝国800年落日の始まりになっているかもしれません。

 ちなみにグレグジットとはギリシャのEU脱落、ブレグジットはブリテンつまり英国のEU離脱を意味します。拙劣な経済より先に、拙劣な行政判断で、こともあろうに英国が「欧州」という枠組みを壊していく端緒を切ることになってしまうとは・・・。

 なぜこんなことになってしまったのか。

 「守り」に回って国を失う衆愚の妄動というのが、報道に接して最初に個人的に感じた事ではありますが、まずは順をおって考えていきましょう。

■ 経済的にはメリットなし

 私は欧州圏でベルリンとロンドンを音楽の基軸に仕事をしていますが、本連載でも幾度か記したように日本人にはロンドンは物価が高く、このところ往生させられることが少なくありませんでした。

 両替の手数料を含め、1ポンド200円くらいで考えておく方が安全というのが生活上の実感ですらあった。

 さて、いま本稿を書いているタイミングでのポンド為替の値動きを見てみると、低値を133.42円までつけています。ちなみに1ユーロは113円代まで落ちている。ちょっと前にベルリンの家賃を払った時は130円代でした。これだけでも大変なことが起きているのは明らかでしょう。

 為替のみならず経済外交の観点から英国のEU離脱を観察するなら、良いことなど1つもありません。ある試算では200兆円が消えたとも言われています。そもそもまず信用と通貨が弱くなる。

 EUの一部であるというのは「欧州連合の3つの軸」、行政、司法、経済の統合にあずかるということで、そのメリットをすべて失う事を意味します。

 早い話、現在の英国はEU圏との貿易で関税を払う必要がありません。EUに属するあらゆる国家、地域と自由に経済的なやり取りができる。

 私たちは北海道の産物を東京や関西、九州や沖縄で売買する際、いちいち関税など払うことはないですよね。ところが(はっきり書きますが)欧州では大衆衣料として流通するH&Mの衣料品に結構な値段の正札がついているのは、関税の障壁が経済圏を守っているわけですね。

 冬場のベルリンでユニクロのヒートテックはなかなか人気ですが、明らかに日本より高い値段がついているのとよく似ています。

 H&Mはスウェーデンの企業で、EU内のベルリンで展開する際には関税がかりません。同様に英国企業が欧州で展開する際にも、EU圏の中にいる間は無関税、もっと言えば、世界各国の企業が欧州で展開しようと思えば、ロンドン支社をハブにして自由な戦略を組むことができました。

 で、それを全部手放した。

 率直に言って「英国」全体として考えるならバカみたいな話であって、離脱派は、昨今の日本の似非右翼が言う「反日」同様、極めて「反英」的な行動を取って、今回僅差ながらEU離脱という恐るべき選択をしてしまった。

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最終更新:6/28(火) 6:20

JBpress

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