ここから本文です

高齢化社会型人材サービス企業「キャリア社」がIPO。今後のポテンシャルは?

HARBOR BUSINESS Online 6/28(火) 9:10配信

 2016年6月27日、株式会社キャリアは、東京証券取引所マザーズ市場への新規上場を果たした。IPO主幹事はSMBC日興証券である。公開価格は仮条件1,850~1,950円の上限である1,950円(1単元19.5万円)、予想PERは16.2倍だったが、初値は3870円となり公開価格を98.5%上回る結果となった。

 今回のIPOにおける公募増資の資金使途は、自社WEB媒体の強化やスタッフ募集のための広告宣伝費、基幹システムの導入費用、借入金の返済に充当する予定。ベンチャーキャピタル保有株が無いことが特徴で、需給面での不安が少ない。

◆キャリア社の事業および業績推移

 2009年4月、キャリア社は、高齢化社会型人材ビジネスを目的に、新宿区に設立された。高齢化社会において、労働市場の減少、介護市場での人材不足を課題と捉えている。老後の暮らしの安心確保および慢性的な労働力不足を解消するため、シニア人材が働ける就業機会を創造することを目指し、日本全国20拠点において、高齢化社会に向けたシニア人材の人材派遣、人材紹介、業務請負、介護施設向けの看護師や介護士を主とした有資格者の人材派遣、人材紹介などのビジネスを行っている。

 キャリア社の事業は大きく二つにわかれる。①シニアワーク事業、および、②シニアケア事業である。

①シニアワーク事業;主にビルメンテナンス、ベッドメイキング、オフィスワーク、ロジスティックスなどの分野で主にアクティブシニアの人材派遣、人材紹介および業務請負を行っている。

②シニアケア事業;主に介護施設に対して、看護師や介護士の有資格者の人材派遣、人材紹介および紹介予定派遣を行っている。

 過去5年間のキャリア社の業績推移を見ると、売上はきれいな右肩上がりで、経常利益および当期純利益は2013年9月期に落ち込んだことがあったが、その後は回復し、右肩上がりである。

◆キャリア社の今後を左右するファクター

【高齢者の就業状況】

 内閣府の「平成27年版高齢社会白書 4 高齢者の就業」によると、男性の就業者の割合は、55~59歳で89.7%、60~64歳で72.7%、65~69歳で49.0%となっており、60歳を過ぎても、多くの高齢者が就業している。また、不就業者では、60~64歳の不就業者(27.3%)のうち3割以上の人が、65~69歳の不就業者(51.0%)のうち2割以上の人が、それぞれ就業を希望している。また、女性の就業者の割合は、55~59歳で65.0%、60~64歳で47.3%、65~69歳で29.8%となっている。すなわち、アクティブシニアの就業者の割合は高い一方、就業を希望するアクティブシニアが一定の割合で存在している。

 有効求人倍率が上昇傾向、完全失業率の指数が低水準に留まるなど、雇用情勢は改善傾向に推移していることから、アクティブシニアの就業のマッチングを促すキャリア社の「高齢化社会型人材ビジネス」の事業環境は良いと言える。

【アクティブシニアの就業の課題】

 キャリア社は、「新規上場申請のための有価証券報告書」(※PDF)の中で、事業の対処すべき課題として、“現状、多くの業界や各企業においてはシニア人材の活用を敬遠する傾向にあることは否めません。”と、はっきりと記述している。まだまだ受け入れ体制や、労働環境の整備、単純な双方の理解不足など、企業側とのミスマッチによる、就労機会の未発掘が多く存在するようだ。平たく言えば、「ちゃんと働けるの?今の業務フローで大丈夫?人事制度は?いままで若い人でやってきたし……」(参照:キャリア社Web サイト )という企業側の懸念はいまだに残っている。

 同社は、上記課題に対して、シニア活用コンサルティングにより、シニアでも対応可能と考えられる業務を抽出し、業務分析及び業務フローの改善提案を行っている。業務分析と実際の就労状況をノウハウ・実績として蓄積し、アクティブシニアの高い就業率を図るとしている。

 また、高齢化社会のもうひとつの大きな課題のひとつとして、医療、介護労働力の不足(2025年に、介護士が38万人不足)があるが、キャリア社では、この人手不足の医療、介護市場にたいし、看護師、介護士等の人材の提供を行う事業を拡大するとしている。

◆増えるアクティブシニアに活躍の場を

 キャリア社は「高齢化社会のなかで、すべての人々が仕事を通じて社会に貢献し、生きがいを見つけることのできる世の中の実現を目指します。」を企業理念としている。企業理念通りの経営をキャリア社は実践しているし、アクティブシニアの就業サポートは社会的意義のある事業であると言えるだろう。

 他方、筆者がひとつ気になる点は、キャリア社が得意とするシニアワーク事業やシニアケア事業以外の分野で、アクティブシニアが就業機会を見つけられないだろうかということである。これはキャリア社に関する論点ではない。経営企画、事業企画、営業、マーケティング、生産、……などで、アクティブシニアが現役時代の時に培った経験と知恵を活かすことができないだろうか、ということである。会社の顧問として、アクティブシニアが活躍する機会を提供するマッチングサイトも複数あるようだ。多種多様な形で、アクティブシニアが活躍できる場が提供されるといいと思う。<文/丹羽 唯一朗>

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:6/28(火) 9:10

HARBOR BUSINESS Online