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三上博史、松嶋菜々子、滝沢秀明……夏ドラマで“90年代スター俳優”がリバイバルした背景

リアルサウンド 6/29(水) 17:33配信

 4月から6月にかけての春のドラマでは、朝ドラでブレイクした新人たちや、不倫や結婚をテーマとした作品で大胆なシーンを演じた女優たちが話題となっていたが、7月から始まる夏のドラマでは、三上博史、松嶋菜々子、滝沢秀明、江口洋介、伊原剛志など、90年代に代表作を持つ俳優たちが再び一線に返り咲き、ある種のリバイバルともいえる様相を呈している。新世代の実力派俳優が続々と台頭してきているなか、なぜ90年代のスターたちが脚光を浴びているのか。彼らの現在地から紐解きたい。

■トレンディドラマを代表する三上博史が復活

 6月からすでに始まっているフジテレビのオトナの土ドラ『朝が来る』では、安田成美が16年ぶりの連ドラ主演で話題を呼んでいるが、7月期のドラマでも驚くべきキャスティングがあった。日本テレビ系列木曜深夜に放送される『遺産相続弁護士 柿崎真一』の三上博史だ。

 三上と言えば、バブルの象徴と言える87年の映画『私をスキーに連れてって』で注目を集め、月9トレンディドラマの元祖と言える88年のドラマ『君の瞳をタイホする!』を皮切りに、時代の寵児として数々のドラマに出演。90年代の『チャンス!』では歌手役を演じてCDデビューを果たしたり、『この世の果て』では天才ピアニスト役で重厚な人間ドラマに挑戦したりと、枠に収まらない幅広い役柄を演じ、高く評価された俳優だ。

 もともとは寺山修司に見いだされた俳優ということもあり、アングラ志向も備えているのか、2000年代は舞台を中心に活動し、テレビドラマもWOWOW作品などを選んでいた印象だった。2007年には、山下智久と長澤まさみの『プロポーズ大作戦』で久しぶりに月9に復帰し、ジョニー・デップを彷彿とさせる風貌で妖精役を務めたことで一時、話題にもなった。それから9年の歳月を経て、三上が深夜ドラマの主演として帰ってきたことには、深い感慨を覚える。『遺産相続弁護士 柿崎真一』は、遺産相続を題材にした1話完結のオリジナルストーリーで、三上は膨大な借金を抱える型破りな弁護士役。もちろん深夜ドラマは初主演である。

 ここ数年の深夜ドラマは、これからの俳優を起用するのはもちろんのこと、松重豊や遠藤憲一といったいわゆる“名バイプレイヤー”を主役に抜擢して、これまでにない作風のドラマを生み出すことに成功している。かつてトレンディドラマで一世を風靡した三上を起用したのも、そうした挑戦の延長にあるのではないだろうか。トレンディドラマ世代で言えば、7月期は他にも、特別養子縁組をテーマにしたTBSの家族ドラマ『はじめまして、愛しています。』で、主役の尾野真千子の夫役として江口洋介が出演。テレビ東京『ヤッさん~築地発!おいしい事件簿~』では、伊原剛志がゴールデンタイムの連ドラ初主演を務める。これらの作品の結果次第では、ドラマ界に新たな潮流が生まれる可能性もありそうだ。

■松嶋菜々子、滝沢秀明が久しぶりの連ドラ主演

 フジテレビ木曜22時放送の『営業部長 吉良奈津子』では、松嶋菜々子が久しぶりの主演を果たしている。松嶋演じる吉良奈津子は広告代理店の売れっ子クリエイティブディレクターで、40歳を手前に結婚、出産と育児休暇を経て3年ぶりに職場復帰をする。仕事と家庭を両立するのに孤軍奮闘する、女の戦いと再生を描いた物語だ。女性の育児休暇と職場復帰をテーマにした本作は、連ドラとしては『救命病棟24時』以来3年ぶりとなる主演で、私生活でも8歳と12歳の娘を育てるママでもある松嶋のプライベートとも重なる。常務から「すでに3年も現場を離れた人間を受け入れる土壌はない」と言われ、営業に回される吉良奈津子を、リアルに演じてくれそうだ。2011年に『家政婦のミタ』で視聴率40%獲得した松嶋菜々子が、いまのドラマ界でどれほど存在感を発揮できるのかも含めて、その動向を注視したい。

 そんな松嶋の代表作といえば、松嶋演じる高校教師と滝沢秀明演じる男子生徒との禁断の愛を描き、最高視聴率29.5%をたたき出した99年の『魔女の条件』だが、タッキーもまた7月期のTBS火曜ドラマ『せいせいするほど、愛してる』で武井咲と共に、TBSでは実に7年ぶりとなる主演を務める。

 95年の『木曜の怪談 怪奇倶楽部』から始まり『ストロベリー・オンザ・ショートケーキ』や『アンティーク ~西洋骨董洋菓子店~』などの作品で、90年代から00年代前半にかけてのジャニーズ俳優路線を牽引し、05年に主演したNHK大河ドラマ『義経』をピークに、主な活躍の場を舞台へとシフトチェンジした滝沢。滝沢の後に続いた後輩たちが活躍する中、本人はテレビから一歩引いた印象だった。今回は既婚の副社長役として出演し、彼氏持ちの同僚・武井咲との恋愛物語を紡ぎ出す。

 テレビ出演が減少したことは、一般的なタレントにおいては人気の低迷を意味するだろう。しかし、ジャニーズにおいてはそうとは限らない。ジャニー喜多川氏の意向もあり、舞台での活動こそが真のエンターテイナーの役割として重視されているのである。「滝沢歌舞伎」などのシリーズで座長を務め、自ら演出なども手がけてきたことで培った実力を存分に発揮し、“大人タッキー”の魅力を爆発させてほしいところだ。

 夏ドラマで再び一線へと舞い戻った俳優たちに共通しているのは、90年代以降もさまざまなシーンで独自のキャリアを積んできたことが挙げられる。たとえば松嶋の『家政婦のミタ』も、年齢を隠さないメイクで新境地を切り開いたドラマであり、彼女にとっては従来とは異なるシーンでの活躍だったといえる。90年代当時は青春スターとして活躍していた彼・彼女らにとって、現在は俳優として円熟期を迎える時期なのだ。そして、テレビドラマ全盛期を知りつつ、さまざまなシーンで幅広い経験を積んできたからこそ成し得る芝居こそが、いまの制作陣には求められているのかもしれない。彼らを中心に据えることではじめて成立するドラマは、物語としても新鮮なものになるのではないか。朝ドラなどで新世代の俳優が続々と発掘されるなか、負けじとテレビドラマ界の一線に舞い戻ってきたベテラン勢たちを、視聴者たちはどう受け止めるのだろう。

本 手

最終更新:6/29(水) 20:53

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