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帝京ロンドン学園サッカー部顧問に訊く、高校生がイギリスでサッカーを学ぶ意味

HARBOR BUSINESS Online 6/29(水) 9:10配信

 日本のサッカーシーンを飛び出し、海外に通用するサッカー人を育成する日本人学校がロンドンにある。帝京ロンドン学園、帝京グループの海外校として設立されたこの学校には、2008年からサッカーコースが設けられ、昨年度は在学中にスペインの育成機関と契約する生徒も輩出した。しかし、サッカーコースの目的は「決して選手の育成だけではない」という。その独自の教育方針と育成メソッドを、帝京ロンドン学園サッカーコース責任者の末弘健太教諭に聞いた。

◆選手養成以外の授業も

――まず、帝京ロンドン学園サッカーコース開設の経緯を教えてください。

 学園自体は、1989年に創設され、サッカーコース2008年に開設されました。それ以前からサッカー部自体はあって、「本場でサッカーをやりたい」とサッカー目当てで入学してくる子ども達が多かったため、それならそのニーズに応えようということで、サッカーコースを開設しました。基本的に寮制ですが、一部通学して通う生徒もいます。サッカー部は全員が寮生ですね。現在は、3学年合わせて12名で部活動を行っています。

――具体的に、どういった授業を行っているのでしょうか。

 午前中は普通科コースの生徒と同じ授業を受けていますが、午後からはサッカーコース独自の授業を行っています。一例を挙げますと、動画を使ったサッカー戦術の解析、専属のフィジカルトレーナーが個別に組むフィジカルトレーニング、プロ選手を輩出しているアカデミーのイギリス人コーチによるボールトレーニング。しかしこれらはあくまで一例です。というのも、サッカーコースに入学してくる生徒たちの希望が「プロ選手として契約したい」という生徒ばかりではないからなんです。トレーナーを希望する生徒もいれば、まだ漠然と「サッカーの仕事に就きたい」とだけ考えている生徒もいる。なので、トレーニングだけでなく第一線で活躍しているサッカー関係者を講師として招聘し、トレーニング以外の授業も行っています。具体的には、サッカー代理人の方に来ていただいて、契約書の作り方を講義してもらったり、イギリスでのサッカー指導者(コーチ)の資格を取得させたりと様々です。最近では、プレミアリーグで撮影を担当しているフォトグラファーの方に来ていただき、実際にプロの機材で写真を撮ってみる、という授業を行いました。これは生徒から大変好評でしたね。これらのサッカーコースの講義は、基本的に英語で行っています。

◆天然芝ピッチ2面、ナイター設備完備

――卒業後は、どう言った進路を選ぶ生徒が多いのでしょうか。

 帰国して日本の大学に進学する生徒が多いですが、サッカーコースからイギリスの大学に進学する生徒もいます。もちろん、プロ選手を目指す生徒もおり、昨年度まで在籍していた世川楓悟という生徒は、在学中にスペインの育成機関と契約を果たし、卒業後サッカー選手としてのキャリアをスタートしました。彼は入学時にはそこまで目立った生徒ではありませんでしたが、3年間の指導で爆発的に伸び、提携しているサッカー代理人の後押しもあって契約に至りました。本校はイギリス人プロ選手を何人も輩出しているアカデミーとも提携しており、彼は部活動だけではなくそこでも結果を残し、三年生の夏にはイングランド5部のプロクラブの練習にも参加していました。

――施設も拝見しましたが、クラブのユースチームでもこれだけ揃えているチームは少ないと思います。

 天然芝のピッチが2面、それにナイター照明も完備しています。フィジカルトレーニング用のジムや器具はもちろん、コンディション管理のためにジャグジー、温水プール、サウナ、水風呂なども設置していますが、施設のモデルケースにしているのはイングランドプレミアリーグの下部組織なので、これでもまだまだ足りないところだらけです。今年度からは、試合や練習後のケアのために、プールを使ったセッションやメンタルトレーニングも開始しました。施設の運用方法も、もっと改善していきたいですね。

――それに見合う成果も出ていますね。2014年にはイギリスの州大会(日本における県大会)で優勝しました。

 自分が顧問に就任する以前の試合で、その時は現在セレッソ大阪の強化部に勤務している方が顧問でしたが、こういう結果が出たことは学園としても嬉しかったですね。試合はイギリスだけではなく、欧州各地や日本にも遠征して行うことがあるんですが、日本での試合で興味深い出来事がありました。自分達のちょっとしたプレー1つ1つにファウルの笛が吹かれて、試合がスムーズに進行しなかったんですね。試合後には、相手チームの監督さんからも少しクレームが来てしまいました。こちらとしてはイギリスの大会と同じ、普段通りのプレーをしただけだったんですが、日本とイギリスではジャッジの基準が違うことからこういうことが起きてしまいました。しかし、客観的に見てヨーロッパのリーグやW杯のような国際試合は、イギリスの基準に近いと感じています。設備ももちろんセールスポイントですが、それよりも国際基準の下で高校3年間の競技人生を過ごすことができる、それこそが本校最大の強みですし、イギリスの大会で結果を残せている理由だと考えています。

――これだけの設備ですから学費もやはりかかるのでしょうか。

 正直に申し上げて、学費は高いです。1ポンド157円(6月1日現在)で計算しますと、現在サッカーコースは一年で約350万円いただいています。ただし、寮制なのでこれらは学費、部費、食費、寮費など、生活に必要なお金を全て合わせた費用です。文科省が行っている就学支援金制度など、活用可能な奨学金制度の紹介も行っておりますし、7月16日と8月27日に日本の帝京大学板橋キャンパスで説明会も行いますので、もし興味を持たれたら費用にためらわずにまずは問い合わせていただければと思います。多くの選手も輩出しましたが、今後は審判や代理人、運営などあらゆる形で日本サッカーに貢献できる、国際的なサッカー人を育成していきたいですね。

 選手でなくとも、トレーナー志望やサッカー関連ビジネスなど、サッカーに関わる広範なことを本場で学べるのは大きなメリットだろう。日本のサッカーが今後世界の列強に伍していくためにも、こうした学校の存在は大きな鍵になるのかもしれない。

<取材・文/HBO取材班 写真/帝京ロンドン学園>

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:6/29(水) 9:10

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