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「離脱ドミノ」も警戒、英EU離脱ショックの4つの波及経路

会社四季報オンライン 6/29(水) 15:31配信

 英国のEU(欧州連合)離脱ショックが広がっています。市場の動揺はやや収まりつつあるように見えますが、英国内の政治動向やEUとの離脱交渉の行方は不透明であり、先行きへの警戒感は一段と強まっています。

 それでは実際のところ、EU離脱は世界経済や日本経済にどの程度の影響をもたらすのでしょうか。これについては、多くの国際機関やシンクタンクが試算しています。まず英国への影響についてIMF(国際通貨基金)が国民投票の前に明らかにした試算によると、2018年でGDP(国内総生産)が残留した場合に比べて5.2%減少、19年に5.6%減少するとしています。

 OECD(経済協力開発機構)が今年4月にまとめた試算では、英国のGDPは20年までに3.3%、30年までに5.1%、最大で7.7%減少するとし、離脱による英国経済への打撃はかなり長期間にわたると見込んでいます。

 英国はリーマンショック後、G7の中ではカナダ、米国に次ぐ成長を維持しており、これまでのところドイツ、フランス、イタリアの欧州主要国より高めになっています。これがEU離脱ショックによって落ち込む可能性が高くなったわけです。

 IMF、OECDともに、影響は英国以外のEU加盟国にも及ぶとしており、
国民投票の結果を受けての世界的な株価急落はこうした試算が現実味を帯びてきたことを示しています。

■ 日本への4つの波及経路

 日本へは、4つの経路で影響が及んできます。短期的には株価下落と円高による影響が最も大きく、これはすでに現実のものとなってしまいました。今週に入って株価下落と円高進行には一応歯止めがかかったように見えますが、今後の展開によっては株安・円高が一段と進行するおそれは十分にあります。EUとの離脱交渉の見通しはまったく立っておらず、株安・円高は中期的にも続く可能性があります。

 みずほ総研は国民投票に先立ち、リーマンショック直後や欧州債務危機などと同程度の株安・円高となった場合を想定して、実質GDPは1年間で0.1~0.8%押し下げられるとの試算を発表していました。

 またSMBC日興証券は国民投票後に発表したレポートで、10%の円高進行により実質GDPは1年目に0.08%、2年目に0.44%押し下げられると試算しています。ただし株安で消費性向が低下すれば、GDP押し下げ効果は1年目に0.35%に達する可能性があると指摘しています。

 第2の経路は、実体経済を通じてのマクロ面での影響です。ここではまず、英国向け輸出がマイナスの影響を受けることが考えられます。ただ日本の輸出のうち英国向けは1.7%(15年実績)にすぎませんので、それ自体の影響は小さいと言っていいでしょう。しかしEU向け輸出で見ると日本の輸出全体の10.6%(同)を占めていますので、欧州全体の景気が悪化すれば、日本の輸出減少などの影響が出てくるという点を軽視することはできません。

■ 中国経由の影響に要注意

 また英国やEUの景気悪化が米国や中国など世界全体に波及すれば、日本への影響も避けられません。特に要注意は、中国経由の影響です。中国にとってEUは米国と並ぶ最大の輸出先であり、欧州の景気動向は中国の輸出、つまりは中国の景気に大きな影響を与えるのです。ただでさえ減速傾向が強まっている中国にとって、英国のEU離脱は大きな懸念材料であり、それが日本にも波及するという経路にも注意が必要です。

 第3は、EUからの離脱手続きや交渉の進展具合が経済に与える影響です。EUの離脱手続きをめぐっては、新首相が選ばれる9月以降に交渉を開始したい英国と、直ちに開始すべきだとするEU側の間で食い違いが表面化しており、今後の交渉の道筋が見えない状態です。離脱後の英国とEUとの関係がどのようなものになるのかなど、根本的な事柄が不透明なままではさらに株価下落や円高が進行するほか、英国企業や同国に立地する外国企業の活動にも影響が出ることが心配されます。

 すでに米国などの大手金融機関の中には、ロンドンの人員の一部を大陸に移動させることを検討し始めたなどの報道も出ています。こうした動きが本格化すれば、シティの地盤沈下は避けられません。

 英国に進出している多くの日本企業も、拠点機能や人員の一部を大陸側に移すなどの検討が必要になる可能性があります。今後の投資計画も含めて欧州戦略の抜本的な見直しを余儀なくされそうです。

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最終更新:6/30(木) 18:36

会社四季報オンライン