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ヒラリー勝利がほぼ見えた11月の米大統領選

JBpress 6/30(木) 6:15配信

 こんなにも変わるものなのか――。

 これが正直な感想である。昨年6月、共和党ドナルド・トランプ候補(以下トランプ)が大統領選に出馬して以来、暴言を含めて様々な主張を繰り返してきた。

 だが今、過去の言い分と最近の発言とを比較すると、矛盾が生まれていることに気づく。昨年発言した内容を否定するかのように、時には都合のいいように、主張を変えているのだ。

 日本の政治家にも見られることではある。だがトランプは大統領候補である。主張や公約の不一致は、政治家としての資質と将来性に大きなマイナスとなるばかりか、当選の可能性を自ら低下させてしまう。

 いくつか例を挙げてみたい。

■ イスラム教徒の入国完全禁止

 まず最もトランプらしい発言の1つであるイスラム教徒の米国入国の禁止についてだ。昨年12月7日、サウスカロライナ州での集会で、トランプはこう言い放った。

 「米国政府が諸要件を見極めるまで、イスラム教徒の入国は完全に禁止したい」

 「完全に(Total and Complete)」という単語を使って語彙を強めたところに、トランプらしさが滲んでいる。発言直後から、米国内のイスラム教徒だけでなく、世界中のイスラム教徒の反発を招いた。

 しかし今年6月25日に発言内容を変えた。英スコットランドのゴルフ場で記者たちに対し、「(入国禁止は)すべてのイスラム教徒ではなく、テロ国家と思われる国のイスラム教徒」と主張を和らげた。

 実は昨年12月7日の発言の5日前に、カリフォルニア州サンバーナーディーノで銃乱射事件が起きていた。犯人はイスラム教徒でイスラム国(IS)に忠誠を誓う発言をした人物だった。

 14人が死亡、17人が重軽傷を負ったテロ事件で、トランプはイスラム教徒に激情型の対応をしたわけだ。それを「トランプらしさ」と呼べはするが、米国大統領の言動としては最もふさわしくない振る舞いかもしれない。

 またトランプが予備選中、共和党有権者から支持された理由の1つに「誰のカネにも頼らない」という姿勢があった。

 選挙資金は基本的に自己資産でまかなうというのだ。それがトランプの候補としての「売り」だった。ロビイストや特定の利益団体から多額の献金を受けないことは、確かに既存の大統領候補と異なる点である。

 「俺は誰の操り人形にもならない」というセリフを、筆者も米取材中に何度か聞いた。有権者にとっては説得力のある言葉だった、はずだ。

■ 最初の献金メール

 ところが6月下旬、トランプは全米の有権者(たぶん1000万人以上)に献金を募るメールを送付した。筆者にもメールが届いたほどだ。「最初の献金メールです」という箇所にはアンダーラインが引かれてさえいた。

 実はこれまでも、トランプに献金したいという有権者はおり、トランプ選対は寄付を受けていた。だが、自らが一般有権者に「選挙資金を寄付していください」と懇願したのは初めてだった。

 と言うのも、トランプ選対には5月末の段階で選挙資金が130万ドルしか残っていなかったのだ(連邦選挙管理委員会報告)。自己申告では資産1兆円超と豪語するトランプだが、資産の多くは不動産や含み資産とみられており、現金は意外にも少ないとの見方がある。

 トランプはここまで、約5500万ドル(約55億円)の自己資金を選挙に使っている。トランプが豪語する「キャッシュは無限にある」との発言が本当であれば、一般市民に献金を懇願することはないだろう。それは紛れもなく、昨年からの選挙公約を破ることになる。つまり、普通の候補になったという証だ。

 さらにトランプの過去と現在の言動に違いが生じているのが、不法移民への処遇である。

 昨年から米国内にいる約1100万の不法移民をすべて強制送還させると繰り返しのべてきた。昨年11月には「強制送還部隊」を組織して、国外に退去させるとも発言した。

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最終更新:6/30(木) 6:15

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