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タイ在住ライターが、パクチーブームの日本で「カオマンガイ」を食べて気付いたこと

HARBOR BUSINESS Online 6/30(木) 16:20配信

 2014年に東京・渋谷にオープンしたカオマンガイの専門店「ガイトーン・プラトゥーナーム」は、タイで最も売り上げるというカオマンガイ専門店だ。バンコクでは伊勢丹デパートの近くにあり、ピンクのカオマンガイと呼ばれ親しまれている。オープンから2年が経つ今でも渋谷店は連日たくさんの客で賑わっていて、本店さながらの雰囲気がある。

⇒【画像】「ガイトーン・プラトゥーナーム」本店のカオマンガイ

 カオマンガイは日本語では蒸し鶏乗せご飯などと呼ばれる。元は中国南部の海南(ハイナン)にあった「海南鶏飯」が原型で、1800年代ごろにシンガポールやマレーシアに海南人が移住し東南アジアに伝わった。シンガポールでは家庭でも作られるほどポピュラーな料理だ。タイでは南部地方から全土に広まった。シンガポールなどの海南鶏飯とはやや違う味わいになっており、タイ料理として独自に進化している。日本のカレーやラーメンのように完全に自国のものとなっているのだ。

 渋谷の「ガイトーン・プラトゥーナーム」には本店にはないメニューがいくつかある。この「本店にはないメニュー」が、タイ在住15年の筆者にとってはなんとも驚きの一品だったのだ。

◆タイ人もびっくりの食べ方

 なにがそんなに驚きだったのか。

 特に驚いたのは、パクチーサラダだった。葉から茎まで、どっさりとパクチーが盛られているではないか。

 もちろん、本場でもカオマンガイに付くスープにパクチーが一葉二葉程度が入れられるが、日本では小さなカップにたくさんのパクチーが無料でもらえる。そのパクチーを、日本のOLさんたちが、これでもかとばかりにたっぷりとカオマンガイに載せて食べていた。ビタミンが豊富なので美容にもよく、人気になる理由はわかるが、本場のタイ人が見たらびっくりするような食べ方である。聞けば、日本は空前のパクチーブームだそうで、タイ在住15年の筆者にとってはある意味斬新な印象を受けたのである。

◆パクチーブームの日本と本場タイの食べ方の違い

 パクチーはセリ科の一年草で、その名はタイ語である。以前はコリアンダー、中華料理では香菜(シャンツァイ)と呼ばれていたが、近年のタイ料理を始めとしたエスニック料理の台頭でパクチーという呼び方が日本全国で通じるようになった。日本にも鎖国以前にポルトガルから入ってきていたそうで、平安時代に編まれた辞書「和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)」にも記載されているという。

 しかし、ここまでブームになったのはここ最近のことだろう。

 このブームにおいてパクチーはサラダにされたり、スープや炒めものに入れられている。

 しかし、これはあくまで日本のブームの中での食べ方だ。

 本場タイではつけ合わせ程度の使われ方しかしない。基本的には火は通さず、トムヤムクンスープやヤム(タイ風のサラダ各種の総称)などに最後にちょこんと入れるくらいでしかない。

 カオマンガイを食べるにしても、渋谷の「ガイトーン・プラトゥーナーム」のランチタイムのOLさんのように、まるで「パクチーを食べる」ことが目的のような食べ方は見られない。パクチーはあくまでも脇役の中の脇役なのだ。

 さらに、パクチー以外でも「カオマンガイ」へのスタンスもタイ人との差異があった。

◆カオマンガイは「米を食べる」料理

 タイ全土にはカオマンガイ有名店が無数にあり、何十年も続いている名店も多い。

 バンコクにもオススメのカオマンガイ店はたくさんあるが、ぜひとも一度試してほしいのはタイで最も高いとされるカオマンガイだ。それは世界的に知られた歓楽街パッポン通りの目の前にある「モンティエン・ホテル」にある。1階の奥にあるコーヒーショップで供され、1セットが330バーツ(約1030円)もする。これは相場の8倍の値段だ。

 値段が高い分、量はかなり多い。普通のカオマンガイひと皿では日本人成人男性だともの足りない。このホテルのはほぼ1羽の半身はあり、普通のカオマンガイの5皿分以上(米は2皿分程度)はある。肉は脂がしっかりと乗っているし、好みで選べる4種類のタレもつく。値段も高いが、味もトップクラスなので満足度は高い。

 カオマンガイは単純でありながらピンからキリまで揃っており、いまだに知られていない名店もある。カオマンガイの店だけで1冊のガイドブックができるほどなのだ。

 そして、このカオマンガイについても、日本人とタイ人の間には「楽しみ方」に差があった。

 日本人はカオマンガイの善し悪しを鶏肉とタレで判断することが多いが、タイ人は米の状態を見る。カオマンガイを直訳すると「鶏の脂ご飯」。タイ人にとっては名称通り米がいかにおいしいかが決め手となるようだ。そのため、日本人がおいしいと思うものとタイ人がおいしいと思うものには若干乖離がある場合もあるのだ。

 いずれにせよ、カオマンガイはシンプルで奥深い。それゆえ、米やタレ、鶏、スープとそれぞれに様々な個性を出す必要がある。食べる側にも作る側にもチャレンジ精神に溢れた逸品と言える。

 それにしても、パクチーの食べ方といいカオマンガイといい、タイと日本では微妙に差があるのも面白い。しかし、山盛りのパクチーを食べるなんていうのは、タイ人にとっても新鮮だ。日本からタイ人にパクチーの新しい食べ方を教えてあげるというのもおもしろいのではないかと思う。タイ人にはない発想なので、驚かれるに違いない。

<取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:@NaturalNENEAM)

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:6/30(木) 16:30

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