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“6000万部編集者”が語る 部下への「ポジ出し」術

R25 7/1(金) 7:00配信

マネジメントという仕事をするなかで、部下が思い通りに動いてくれることは少ない。“ダメ出し会”になりがちな打ち合わせを、お互いが気持ちよく円滑にすることはできないだろうか。

そんな話を伺ったのは、ライトノベル編集者として『とある魔術の禁書目録』などのヒット作を生み出し、業界最大手レーベル『電撃文庫』の編集長も経験した三木一馬氏。著作『面白ければなんでもあり 発行累計6000万部――とある編集の仕事目録』でも明かしている、モチベーションを高める“打ち合わせ術”の秘訣を聞いた。

●相手のいいところをひたすら伝える“ポジ出し”

マネジメントの話を伺いたいと切り出すと、「実はぼく、編集長というマネージャー職としては低評価だったと思ってるんです」と当時を振り返ってくれた。

「編集者としての評価は悪くなかったと思いますが、後輩編集者をマネジメントすることは、上手くやれたとはいいづらいところですね。この2つの役職って、使う脳がまったく違いますよね。イチ編集者のときは、失敗も成功も全部自分のせいだったのが、マネジメントにまわると、部下の失敗と成功をしっかり見守ることが仕事になります。そういった業務に必要な度量が足りなかったんだと思います」

しかし、著書で「作家が10人いたら、10通りのやり方を用意する」と書いているとおり、作家との打ち合わせに向ける情熱は人一倍だ。この熱量を部下に向ければ、マネジメントもうまくいったのでは…?

「たしかに、部内のマネジメントにも応用できますね。僕が重視していたのは、ダメ出しの反対の『ポジ出し』です。作家から原稿や企画をもらったら、ちょっとしたことでもいいので、『いいね!』と思えるポイントを細かく探して、打ち合わせで伝えます。面白いフレーズや驚かされるアイデア、気持ち良い文章表現…荒削りでも、キラリと光るポイントがあったりするんです。

次に重要なのが『対案を出す』こと。作家さんは現状のベストと思った原稿を出してきているはずなので、直してほしいところがあっても、必ず対案を出す。部下が相手でも同じですよね。否定されてばっかりだとイヤになるし、意図や理由を説明せずにただ批判するだけだと、アドバイスを聞く気もなくなっちゃう」

●部下にとって「耳の痛い指摘」をするなら、過剰な馴れ合いは不要?

しかし、ただ「ポジ出し」するだけでなく、あえてのダメ出しが必要な場合もあるという。相手のスタイルに合わせるのが打ち合わせのコツだとか。

「たとえば作家さんから原稿や企画が上がってきたとき、『単刀直入に言います。つまんないです、すみません』って言ったほうがいい場合もある。どう話せば響く相手なのか、スタイルを把握する必要があるんです。打ち合わせの頻度も、みっちりゼロベースから話したいのか、プロットの矛盾だけ指摘してほしいのか、作家のスタイルに合わせるんです。これをマネジメントに応用すると、部下のキャラクターを把握して、相手によって指導やアドバイスの方法を変えるべき、ということでしょう」

それぞれのスタイルを把握したり、さらに打ち解けたりするためには、相手を食事や飲みに誘うべきか? ときくと、三木氏は「慣れ親しんだ仕事相手とは打ち合わせ以外では会わない」という。

「せっかくプロ同士でやれているバランスが、友だち感覚になってしまって、打ち合わせが“なあなあ”になってしまうのが怖いですね。ベテランのお笑いコンビが、わざと楽屋を別にするのに似てるかもしれません。本番前に話してしまうと、そこでネタが終わっちゃって、新鮮さが失われる。マネージャー(上司)のみなさんも、耳の痛い指摘をしなくてはいけないとき、情けをかけるとむしろ相手のためにならなかったというケースがあると思います。ですから、必要以上に部下と馴れ合う必要はないかも、と考えています」

「ぼくと同じ轍を踏んでほしくないので、ぜひ参考にしてみてください」と苦笑する三木氏。相手に合わせてポジ出しとダメ出しを使い分け、必要以上に馴れ合わない。たしかに、これができれば素晴らしいマネージャーになれることは間違いないだろう。

(森 祐介)三木一馬(みき・かずま) 上智大学卒業後、メディアワークス(現在のKADOKAWA アスキー・メディアワークス事業局の前身)に入社、『電撃文庫』編集部に配属。『灼眼のシャナ』『とある魔術の禁書目録』『ソードアート・オンライン』など数々のヒット作を生み出し、担当作の累計部数は6000万部を超える。編集長を務めた後に独立し、現在はストレートエッジ代表として、電撃文庫の既存シリーズ編集やメディアミックスのプロデュースを手掛ける
(R25編集部)

※コラムの内容は、フリーマガジンR25およびR25から一部抜粋したものです
※一部のコラムを除き、R25では図・表・写真付きのコラムを掲載しております

最終更新:7/1(金) 7:00

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