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タクシーよ、ユニークであれ

GQ JAPAN 7/1(金) 23:10配信

日ごろお世話になっているタクシー。人手不足で稼働率は8割がいいところだとか。クルマと社会の交差点にある「クルマ文化」にストップかゴーの判定を下す好評連載。今回のテーマは、ニッポンタクシーのオリジナリティについて。

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インバウンドと呼ばれる訪日観光客はいまだに大きなビジネスの対象だ。国土交通省は自治体にホテル容積率の規制緩和を求める通達を出すとニュースで読んだ。すごいなあと僕などはひたすら感心する。ホテルも増えている。ただし外資系が中心のようだ。日本にせっかく来てもらったのなら、日本勢もがんばって、ホテルの世界でももっと日本的なコンテンツで勝負できないだろうか。

同じことがいえるのがタクシーだ。観光客が増えれば当然タクシーの需要も増えるだろう。業界は人出不足らしい。クルマの稼働率は高くて8割(十分いいと思うけれど)、タクシー会社としてはもっと増やしたいのだ。訪日客にとって日本のタクシーはある意味便利な乗り物だ。欧米と違ってチップがないから、日本の慣習に慣れていないひとでも使いやすい交通手段のひとつである。

タクシーに関していうと、ただ、諸外国に負けているのは“キャラクター”かもしれない。たとえばロンドンタクシー。トランクは使わないと割り切ってそのぶん室内を広くし、天井高をうんと上げ、前輪を小さくして回転半径を小さく取り回し性を上げる。機能主義に徹したデザインだ。都市内交通手段としてりっぱなのリューションである。

ニューヨークシティでも、タクシーには個性がある。ひとつは色。イエローキャブというぐらいで、遠くからでもすぐ見つかる。車体も専用設計のものがある。新世代は日産自動車のNV200をベースにしたものだ。後席へのアクセスがいいし、スペースもかなり広い。ニューヨークシティでの乗客のニーズを踏まえて使い勝手のよさを追求しているはずだ。

日本でもようやく動きが見えはじめた。

日本では現在、ほとんどのタクシーが一般のセダンの改造型だ。そこにあって数少ない例外が、ニューヨークシティのイエローキャブとほぼ同型の日産NV200ベースのもの、それとトヨタ・コンフォートだ。後者は地味ながら専用設計ということもあり、機能には際だったものがある。それは後席の乗り降りのしやすさだ。後席ドアを開けたとき、クォーターピラーの切りかきがほとんど直角的なので、乗客は頭をぶつける心配が少ない。

コンフォートのよさはタクシー運転手が誰よりよく知っているようだ。コンフォートでないクルマに乗っている法人タクシー会社の運転手が「私もコンフォートを使いたい」とぼやいていたこともある。後席へのアクセスでいきなりベントレーを例に出すのもなんだけれど、高級セダンは後席乗員の顔が隠れるようにシートレイアウトを決めることが多い。高級なクルマは根本的なコンセプトが違うことが多いのだ。

トヨタ自動車では現在、2017年の発売に向けて「次世代タクシー」を開発中と聞く。「次世代タクシーは、日本の街の風景を変えることを念頭に、“おもてなしの心”を反映した内外装デザインを採用。日本で使用するお客様に向けた安心・快適性能を持たせることで、環境負荷低減、超高齢化などの社会変化に対応」とトヨタ自動車のプレスリリースにはある。

乗降性とか取り回し性については触れられていないけれど、おそらくおろそかにはなっていないだろう。さきに試乗記を書いたが、2016年にフルモデルチェンジしたハッチバックである新型パッソに乗ったとき、後席の乗り降りがたいへん楽だった。見るとコンフォートと同じようなデザインである。高齢者などを載せる機会も多いはずと考えているのだろう。

クルマの世界では、デザインとスタイルとが同義語にとらえられることも多い。けれど、スタイリングがカッコいいクルマを作る仕事だしたら、デザインはこのように乗員の抱えている問題を開発する方便であるといってもいいだろう。少し言葉の含む意味が違うのだ。僕は東京の町を魅力的にしてくれる新世代タクシーの未来に「GO」を送りたい。

文:小川フミオ

最終更新:7/1(金) 23:10

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