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ラッパーが役者として重宝される理由は? YOUNGDAIS、ANARCHYらの活躍に見る魅力

リアルサウンド 7/1(金) 6:10配信

 映画やドラマにおいて、ラッパーを目にする機会が多くなった。とりわけ、YOUNGDAIS、ANARCHY、OMSB、般若など、いわゆるJポップではなく、日本語ラップシーンで活躍する面々が、役者としても高い評価を得ている。いったいなぜ、ラッパーが役者として重宝されているのか、それぞれの魅力から紐解いてみよう。

■YOUNGDAIS

 まずラッパー俳優の中でも、特に注目を集めるのがYOUNGDAISだ。園子温監督作『TOKYO TRIBE』の主人公・出口海役に抜擢され、そのルックス、演技力、独特のオーラでカリスマ性のあるキャラクターを演じきった。音楽シーンでは決してメジャーな存在ではなかったものの、染谷将太、鈴木亮平、佐藤隆太、竹内力、窪塚洋介、でんでん、中川翔子といった並みいる俳優陣に拮抗する存在感は、観る人の記憶に強く残るものがあった。

 ヒップホップミュージカルと呼れる『TOKYO TRIBE』には、漢、D.O.、KOHHなど、彼のほかにも日本語ラップシーンを牽引するラッパーたちが多数出演しているが、DAISはその中でも群を抜いて演技が上手かったという。園子温も「彼は演技は初めてなのに、めちゃめちゃ上手くて、すごく自然。他のラッパーとは雲泥の差で芝居が良かったんで、彼がいたことはすごくラッキーでした」(『TOKYO TRIBE』で魅せた世界初のバトルラップミュージカル Sion Sono×YOUNG DAISと賞賛している。

 『TOKYO TRIBE』での演技力が買われ、現在公開中の白石和彌監督の最新作『日本で一番悪い奴ら』では、主演・綾野剛の相方として抜擢されている。純粋な心を持つクスリの運び屋である山辺太郎は、どこか憎めない軽薄さがありながら、しかし単純なわけではない心情を持ち合わせたキャラクターで、DAISの高い演技力をたしかに感じさせる。植野行雄(デニス)とのコミカルな掛け合いにもキレがあり、コメディからクライムサスペンスまで、幅広いジャンルで活躍できるポテンシャルがある。

■ANARCHY

 現在放送中のドラマ『HiGH&LOW』にて、“MIGHTY WARRIORS”のメンバー・ナイン役を務めるANARCHYも、俳優として存在感を発揮している。ANARCHYは札付きの不良として育ち、少年院に入ったこともあるが、ヒップホップと出会ったことで自らの人生をそれに捧げることを決め、ハードコアな生い立ちやその哲学を鮮烈な歌にすることで支持を得てきた。日本語ラップシーンの中で、ハスラー・ラップを真に体現する数少ないアーティストのひとりだ。そんなANARCHYが、EXILE TRIBEのメンバーが数多く出演するドラマ『HiGH&LOW』に出演したことは、ある意味では衝撃的な出来事である。日本語ラップシーンにおいては、セルアウトーーメッセージ性を排し、商業性だけを追い求める行為ーーと捉えられかねないからだ。しかし、EXILE TRIBEが提示するエンターテイメントの根底には、日本でいかにヒップホップを浸透させるか、との挑戦があることも忘れてはならないだろう。実際、『HiGH&LOW』の作風は、これまでのドラマとは大きく異なり、まるで壮大なミュージックビデオを観ているかのような面白さがある。その中で、ANARCHYのようなタイプのラッパーが、自らのキャラクターを活かして登場することは意義深い。

 2015年に公開されたニール・ブロムカンプ監督作『チャッピー』では、ヒップホップグループ“ダイ・アントワード”のニンジャとヨ=ランディ・ヴィッサーが本名でギャング役を演じており、現実世界での破天荒なキャラクターをそのまま映画の世界に持ち込むことで、作品をより面白いものにしていた。ラッパー自身のキャラクターを活かすことで成立する映像作品もあるのだ。

■OMSB

 映画『ディアスポリス DIRTY YELLOW BOYS』で“ダーティ・イエロー・ボーイズ(留学生犯罪者集団)”のメンバー・ホセ役を務めるOMSBも、今後、役者として注目したい人材だ。アメリカ人と日本人のハーフならではの風貌は、今作のような役柄を演じるのに適しているのはもちろんのこと、そのかすれた声と柔らかな口調が独特の親しみやすさを感じさせ、映画に味わいをもたらしている。いわゆる三枚目として重宝されること請け合いだ。『ディアスポリス DIRTY YELLOW BOYS』では、一見すると強面ながら、誰からも好かれる青年を演じている。まさにOMSBそのままのキャラクターで、ほかの役者では代替できないだろう。


 ちなみに海外では、ラッパーが俳優業を行うことは珍しくない。『ワイルドスピード』シリーズのリュダクリス、『グランドイリュージョン』のコモン、元N.W.Aメンバーのアイス・キューブ、50セントなど、名前を挙げたらいとまがないほどで、あの世界的ハリウッドスター、ウィル・スミスもかつてラッパーとして活動していた。ラッパーは、音楽性が大事なのはもちろんだが、それと同じくらいキャラクターが重視される。その人間がいうからこそ、ライムに説得力が宿るのが、大きな特徴のひとつなのだ。そしてその特徴は、そのまま役者業にも活かすことができるのだろう。

 近年の日本映画においては、YOUNGDAISが出演する『日本で一番悪い奴ら』のようなバイオレンス作品が流行のひとつとなっている。どこかアウトローな雰囲気を自然にまとうことができるラッパーたちから、次なるスター俳優が生まれる可能性もありそうだ。

泉夏音

最終更新:7/1(金) 6:10

リアルサウンド

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