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来日した巨匠ディーター・ラムスが説く、グッドデザインの規範。

Casa BRUTUS.com 7/2(土) 18:30配信

今なお多くのデザイナーが信奉するディーター・ラムス。彼が考えるデザインの意義、現在、そして美について。

「カーサ ブルータス? 11年前の取材をよく覚えているよ」とディーター・ラムス。1950年代からデザイナーとして活躍し、ブラウンなどの製品を通してデザイン界に絶大な影響を与えた彼は、2005年に京都の建仁寺で個展を開催した。その直前、準備に忙しい最中に取材に応じた思い出を淀みなく語るほど、現在もラムスは頭脳明晰だ。そして若々しい批評精神にあふれている。

Q 84歳を迎えた現在、どんな活動をされているのですか?

デザインの仕事はほぼしていない。私がデザイナーだったころとは、デザインの意味合いが変わってしまったからね。ライフスタイルの一部として消費されるデザイナー家具のようなものは、自分には無縁の分野。それよりも、シンポジウムなどで考えを伝えたり、f/p designのフリッツ・フレンクラーと一緒にミュンヘン工科大学で建築を学ぶ学生を指導したりしている。工業デザインの視点から建築を考えることに、大きな可能性を感じているんだ。例えば太陽光パネルを外壁に使う際、どうやって人が住む環境にふさわしいものにするか。デザイナーの発想が役立つケースは多いだろう。

Q 現在の日本のデザインや建築は、あなたにはどう見えますか?

残念ながら自己主張が強すぎる。特に大型施設の建築は顕著だね。ある時期までと違い、情報過多でデザインしすぎたものが増えてしまった。周囲の環境について深く考えず、自分の巣を作っているみたいだ。日本の建物で素晴らしいのは、限られた土地を上手に使いこなすところだ。プロダクトについては、量を重視しすぎていると思う。私は長期的な関係を築けるわずかなクライアントとだけ仕事してきた。だから1つの製品を発表してからも細かい改良を重ね、同じシステムに基づいて発展させることができた。結果、長生きするデザインが生まれていく。私が今、座っているヴィツゥの椅子もそんなふうに完成した。

Q それではアップルのデザインについてはどう思いますか。

評価している。一度、アップルのデザイン部門を率いるジョナサン・アイブの招待で彼らの仕事場を特別に見せてもらったが、きっちり整った環境に、私がブラウンにいたころを思い出したよ。いい環境はいい製品を作るのに欠かせない。またスティーブ・ジョブズとジョナサンの関係が良好だったことも大きいだろう。やはりブラウンも企業のトップと私たちデザイナーに強い信頼感があった。その意味では、ジョブズ亡き後のアップル製品は、私には未知数だ。

Q あなたが70年代末に考えたという「グッドデザインの10箇条」は多くの人々に影響を与えてきました。その後の時代の変化から、どこかを変更するとしたら?

この10箇条を、岩のように不動の鉄則だとは最初から考えていない。実際に、多少表現を変えたところもある。しかし大きく変更したり、項目を加えるような必要が今まで見つからなかったんだ。

Q 10箇条にグッドデザインとは「美しい」とあります。あなたにとってデザインの美しさとは?

美とは本質にさりげなくそなわるもの。デザイナーが自分から誇示するものではない。建仁寺の庭もそうだが、日本の庭園にはそんな美しさがあり、時代に左右されることがない。また美しいデザインとは、優れた執事に似ている。常にそばにいて整った姿をしているが、決して自分から存在を主張せず、必要なときにとても役に立ってくれる。美しさを表現しようなんて、デザイナーや建築家が意識する必要はないはずだ。

photo_Manami Takahash text_Takahiro Tsuchida

最終更新:7/2(土) 18:30

Casa BRUTUS.com

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