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英EU離脱が引き起こす金融危機、震源地はここだ

JBpress 7/2(土) 6:10配信

 「これから英国とEUとの間で政治・経済の分離に向けた長く複雑な交渉が行われ、世界の金融市場は混乱が続く可能性がある」

 著名投資家ジョージ・ソロス氏は6月25日、ウェブサイト「プロジェクト・シンジケート」への寄稿でこう述べた。同氏は「2007~2008年の世界金融危機と似たような金融市場の危機が解き放たれた」と見る。

 国民投票による英国のEU離脱決定で翌日(6月24日)の世界の金融市場は大荒れとなり、日本の株式市場の下げ幅は世界最悪で2008年9月のリーマン・ショック時よりも大きかった。

 冷静に考えてみると、リーマン・ショックの時のように世界の金融市場を揺るがすような巨大銀行が倒産したわけではない。英国がEUに対して「離脱交渉を開始する」と通告してから実際に離脱に至るまでには最低でも2年かかるとされており、しばらくの間は実体経済にこれといった悪材料があるわけではない。そのため日本では「ユーロ圏景気の失速はない」「世界経済への影響は限定的」との見方も有力になってきている。

 だが、筆者は「リーマン・ショックのように、デリバティブ市場を震源地とする金融危機が早ければ数カ月以内に発生するのではないか」と危惧している。

■ ポンドは暴落、英国債は2段階格下げ

 デリバティブ(金融派生商品)は元々株式や債券、外国為替などの金融商品のリスクを軽減されるために開発された。最近では、リスクを覚悟して高い収益性を追求する手法として用いられるのが一般的になっている。

 その市場規模は巨大だが、証券取引所などの公開市場を介さない取引が主流である。当事者同士が相対で取引を行うデリバティブのことを「店頭デリバティブ」と呼ぶ。国際決済銀行(BIS)によれば、店頭デリバティブの取引残高は493兆ドルに上る(「市場デリバティブ」の取引残高は100兆ドルに満たないと言われている)。

 リーマン・ショックの引き金となった「CDS」(クレジット・デフォルト・スワップ)というデリバティブの取引残高はピーク時の5.1兆ドル(2008年末)から現在は1兆ドル未満に減少している。一方、店頭デリバティブの取引残高のトータルはリーマン・ショック前の水準に回復している。

 店頭デリバティブ取引の主役は、米シティグループやJPモルガン・チェース、ドイツ銀行などの国際金融グループである(6月27日付ブルームバーグ)。店頭デリバティブで取引されるデリバティブの原資産は金利や為替に関連するものが多いという。

 その金利や為替が、6月23日の英国のEU離脱決定で猛烈に変動したのである(コンピューターが取引するファンドが主導したとされている)。

 英国の場合、国民投票の当日の為替のスポット取引が急増し、通貨ポンドは1985年以来の安値に暴落した。6月27日には大手格付け会社が英国債の格付けを2段階引き下げる事態となった。

 国内の過剰債務問題が深刻化している中国でも資金流出が加速した。市場の過剰反応を鎮めるために人民銀行は再三にわたり「中国の債務・金融リスクは制御されている」との声明を発表したものの、効果はなく、人民元は記録的な低水準となっている。

■ 警戒されるハイブリッド証券への波及

 想定外だったのは、ファンダメンタルズ(経済成長率・物価上昇率・財政収支など)の面で、先進国の中で最も良好とされているドイツの株式市場が暴落したことである。

 その理由について、「ドイツ銀行に対する漠然たる不安」を挙げる声が少なくない。ドイツ銀行株は、リーマンショック後の最悪期よりも割安になっている(6月29日付ブルームバーグ)。ドイツ銀行が保有するデリバティブの残高が巨額であることに加え、レバレッジ比率(企業の自己資本に対する有利子負債等の割合)が47倍と高い(世界大手金融機関のレバレッジ比率の平均は24倍)と推測されているからである。

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最終更新:7/2(土) 6:10

JBpress

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