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「支持したい政党がない」への処方箋

HARBOR BUSINESS Online 7/2(土) 9:10配信

 選んではいけない最低の選択肢というものがある。

 さしずめ、イギリスのEU離脱などは、その典型だろう。国民投票の結果が出た直後から、世界中の金融市場は大混乱となり、残留コストをはるかに上回る国富が失われた。スコットランドや北部アイルランドまで、連合王国からの離脱を示唆し出す始末。果ては、「国民投票のやり直し」を求める請願には数百万の署名が集まりつつあるという。離脱の是非そのものは問うまい。イギリスの有権者が判断すれば良いことだ。しかしやはりこうした顛末を見れば、イギリスの民主主義が示したドタバタ劇には、失笑を禁じえない。

 長らくイギリスの民主主義は、我が国の民主主義にとって、お手本のような存在であった。昭和憲法の規定する議院内閣制は、多分にイギリスのそれを意識したものだし、90年代の我が国が朝野をあげて熱狂し、小選挙区制の導入という結果を生んだ「政治改革」なるものの議論では、常に、「イギリスの民主主義」が引き合いに出された。

◆「支持したい政党がない」ときの心構え

 過日、財界のとある人物に会った時、この「日本から見たイギリスの民主主義」について、興味深い話を聞いた。曰く、「チャーチルは、『選挙に出る人間は、誰であれ、名声を欲しがり、権力を欲しがる、ろくでなしばかりだ』といった」という。さらに、「イギリスの小中学校では、選挙リテラシーについての授業がある。そこで教えられるのは、『選挙には必ず、情勢報道がある。その報道で、当選最有力と伝えられる候補でよければ、棄権するのも構わない。しかし、その候補が嫌だと思えば、2位につける候補に投票すればいい』と、教える」とも語ってくれた。

 チャーチルが本当にそんなことを言ったのか、イギリスでそのような授業が実際に行われているか、裏はとれなかったが、チャーチルであれば、言いそうなことであり、彼の国の教育ならありそうなことではある。

 同時に、『選挙に出るのはろくでなしばかりだ』という教えと、『情勢報道で当選最有力と伝えられる候補が嫌であれば、2位につける候補に投票すれば良い』という教えは、今の日本にも極めて有効だとも思った。無党派とはすなわち、「積極的に支持したい候補や政党がない」という状態のことだ。その無党派が圧倒的大多数を占めているからこそ、選挙の投票率が上がらない。低投票率の結果、ろくでもない連中が何のチェックも受けず政界に居座る。その結果、さらに有権者の選挙離れが起き、投票率が下がる……という悪循環に今の日本は陥っている。

 だがこの悪循環の大元は、「投票用紙には、支持する人物の名前を書かねばならない」という思い込みから発生している。この思い込みを、「ろくでもない奴の中からよりマシなろくでなしを選ぶ」「当選しそうなろくでなしが嫌ならば、次点のろくでなしに投票する」と転換すれば、投票は随分と気楽なものとなる。

◆「白票」の劣悪さ

 そしてまたこの「教え」は、昨今猖獗を極める「棄権するぐらいなら白票を」などと呼びかける輩が、いかに劣悪であるかもきっちりと指摘してくれている。

 白票と棄権に何ら変わりはない。白票は集票所において無効票とカウントされ、「意志を表示しなかった票」として積み上げらるのみだ。それでも白票を呼びかける人々は、「投票率は上がる」と強弁する。だが厳密に言えば、投票率は「投票所に足を運んだ人」の集計(所謂「ターンアウト率」)だけでなく、有効投票数でも集計される(所謂「有効投票率」)。一票単位でシビアな戦いを繰り広げる候補者たちが気にするのは、この有効投票率だ。白票を呼びかける人たちが言う「候補者への影響」など、棄権と何ら変わりない。

 そもそも「白票でもいいから投票を」という愚劣な呼びかけが横行するのは、「投票にあたっては、自分が積極的に支持する候補者の名前を書かなければならない」という思い込みがあるからだろう。しかしそんなことは決してないのだ。先の「教え」の通り、「支持する候補はいないけど、気に食わない候補はいる。そいつが通りそうだから、我慢できない。情勢報道でその候補の次点につけている候補に投票してやろう」という、消極的な投票行動だってできるのだ。

 参院選まであと少し。「憲法を変える!」を旗印とするろくでなしと、「憲法を守る!」というろくでなしが、各地で接戦を繰り広げている。ことは改憲だ。イギリス国民のように最悪のチョイスをしてから、「てへぺろ」とは言えない。落とすべきろくでなしをしっかり見極め、しっかり落としてやることが肝要だ。

<文/菅野完(Twitter ID:@noiehoie)>

※菅野完氏の連載、「草の根保守の蠢動」が待望の書籍化。連載時原稿に加筆し、『日本会議の研究』として扶桑社新書より発売中

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:7/2(土) 15:01

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