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前田敦子が開くエロティシズムの扉 カリスマ感と親しみやすさを兼ね備えた「あっちゃん」の足跡

リアルサウンド 7/4(月) 15:00配信

<前田敦子>

 前田敦子さん、あえてAKB48在籍時からの愛称「あっちゃん」と呼びたいのですが…あっちゃんを初めて見た時から、女優としての才能の扉が一つまた一つと開かれていく過程を追い続けています。

 初めてその姿を見たのは、ドラマ『栞と紙魚子の怪奇事件簿』(2008年/日本テレビ)で、AKB48のメンバーとは知らず、独特の存在感が印象的な新人女優と思っていました。その後の主演作『Q10』(2010年/日本テレビ)の未来から来たロボット役は、本物のロボットにしか見えない身のこなしとセリフ回しで、自身を拾った男子高校生にヒヨコが初めて見た存在を親と思うように懐く姿は、今でもたまに夢に見てしまうくらい強烈な可愛らしさでした。

 女優としてのあっちゃんを先に好きになったので、AKB48在籍の間もずっと女優として「アイドル」を演じていたように私には見えていました。でも、ボクらの時代(フジテレビ・2015年12月20日)での「アイドルで始まったから、アイドルで終わるんだよ。」という言葉から、卒業し女優として歩む今でも「アイドル」を背負い続けている覚悟が見え、これからもずっと「あっちゃん」と呼びたいと思いました。彼女の歌声は、どこか虚ろで所在無げに聴こえますが、この世の大半を支配している「確固たる自分を持ち、自身の中身を表現したい」というギラギラした欲望や個性のぶつかり合いに疲れてしまった時、彼女の「自らの内側に表現したいことは何も無い」という佇まいがじわじわと沁みてきます。「個人の感情や思想なんてちっぽけでくだらない、そんなものには縛られないわ」と言っているかのようです。

 主演ドラマ『毒島ゆり子のせきらら日記』(2016年/TBS系)では、恋愛に奔放な女性をエロティックに演じました。ピュアなメガネっ子の紙魚子だった十代の少女が、年月を経て「大人が押し付ける純粋な少女像」から解き放たれた解放感と、奔放に性を謳歌し「私、三股してます!」とハッキリ宣言するゆり子の姿が重なって、ジメジメせず爽やかにあっけらかんとエロい女性像がリアルな形で生み出されていました。ドラマ主題歌「Selfish」のMVでは、「毒島ゆり子」のエロスの延長線上にありますが、真っ直ぐなゆり子とは違う、いくつもの顔を持ち強かに生きる女性像を演じています。

 小さな劇場の公演に始まり、誰もが知る巨大グループとなったAKB48がブレイクへの階段を駆け上がったその先に待っていた重圧。それに耐え続け、常人には想像もできないほど壮絶な道のりを歩んできた伝説的カリスマの超人・大物感と、「近所のかわいい女の子」的な親しみやすい雰囲気の両方を持ち続けている稀有で不思議な存在であるあっちゃんが、毒島ゆり子という経験を経て、新たなエロティシズムの扉を開いてみせてくれる日を待っています。

松村早希子

最終更新:7/4(月) 15:00

リアルサウンド

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