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【熊本】家に帰れるありがたさ--。巻の言葉に象徴される3か月ぶりの“ホーム試合”の意義

SOCCER DIGEST Web 7/4(月) 6:00配信

入場はホームスタンドのみも多くのサポーターが詰めかける。

 4月の熊本地震から約3か月が経った7月3日、ロアッソ熊本はようやく、ホームうまかな・よかなスタジアムで“復帰戦”を迎えた。
 

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 安全確認の問題などで使用できたのはホームスタンドのみ。現状ではゴール裏、バックスタンドは立ち入り禁止となっている。試合約1時間前には震度3の揺れを感じ、人々がどよめくなど、以前の姿に戻るまでにはまだ時間はかかりそうだ。
 
 それでも待ちに待った日を迎えたサポーターの熱は非常に高かった。ホームスタンドを覆い尽くする赤い声援は、選手の登場とともに最高点に達し、力強く後押しする。この日を待っていた――スタンドには涙を浮かべる人も少なくなかった。
 
 それは選手たちも同様である。地元出身の巻は語る。
 
「自分たちの背中に多くのサポーターがいてくれるのは凄く感慨深かったです。力強かったです。絶対に勝たなくちゃいけないと感じていました」
 
 想いは序盤から形となって現われる。「先制するまでは良い状態でやれた」。選手が口々に振り返ったように、リーグ2位のタレント軍団・C大阪を相手に一歩も引かずにゴールへと迫った。
 
 そして歓喜の瞬間は8分。ショートコーナーから清武がクロスを入れると、ファーサイドで園田がヘディングで折り返し、薗田がダイビングヘッドで反応する。ネットが揺れた瞬間、溢れんばかりの歓声がこだまし、選手たちも大きなジェスチャーで呼応する。俺らはここに帰って来たんだ! そう言わんばかりに各々が雄たけびを上げた。
 
 しかしだ――、やはりC大阪の壁は厚かった。13分に同点に追い付かれると、やや可哀想な判定で、この日のヒーローとなるはずだった薗田が27分にPA内でR・サントスを倒して一発退場。結局は1-5で敗れた。
 
「もっとできたんじゃないかなと悔しいです」
 
 試合後、キャプテンの岡本は厳しい表情で語った。
 

「この試合を絶対に忘れずに進むことが大事」(嶋田)

 試合には負けた。だが、巻はこのゲームの重要性をこう説明する。
 
「本来はもっと11人でやりたかったなあと。これだけの雰囲気だったので、それが正直なとところです。でもなによりもホームに戻ってこられたというのが大きいことで、帰れる場所があるというのは本当にありがたいことです」
 
 いまだ熊本では避難所での生活を強いられている方がいる。この日、偶然にスタジアムから乗ったタクシーの運転手の方は、益城町に住んでおり、家は倒壊したのだという。地震が起こった際には家の炬燵で寝ており、天井の崩落を炬燵が守ってくれ、命からがらに逃げ出したという。そして今も避難所で生活を続けているというのだ。
 
 帰れる場所があることのありがたさ――それは選手、サポーター、そして多くの人が実感していることなのだろう。
 
 だからこそ復興のシンボルとなる熊本がホームのうまかな・よかなスタジアムに戻ってこられた意味は大きい。
 
「この試合を絶対に忘れずに進むことが大事」
 
 ユース出身の有望株・嶋田は強調する。
 
 震災の影響でリーグ戦から一時離れたことで、熊本は今後タイトなスケジュールを乗り越えていかなくてはいけない。次節は中2日、7月6日(水)にアウェーで山形と対戦する。
 
「僕らは勝点を重ねていって、このスタジアムをちょっとずつ真っ赤に染めていって、ぐるっと一周真っ赤なスタジアムにしていきたい。それが僕らとしての復興なのかなと」(巻)
 
「皆さんの声援は本当にありがたいですし、熊本では絶対に勝ちたいので、負けるのは今日だけで今後は勝点3を掴んでいきたいです」(岡本)
 
 熊本の戦いは始まったばかりだ。今後も苦境に何度も立たされるだろう。でも、その背中を押す多くのサポーターたちがいる。その心強さはホーム復帰戦で証明された。
 
取材・文:本田健介(サッカーダイジェスト)
 

最終更新:7/4(月) 6:00

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