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誰に託せば?ユニクロもトヨタも抱える後継者問題

JBpress 7/4(月) 6:10配信

 ソフトバンクグループの孫正義社長の後継者として指名されていたニケシュ・アローラ副社長が退任した。アローラ氏の退任と孫氏の続投は、オーナー企業の後継者選定がいかに難しい問題なのか、あらためて印象付ける結果となった。

 ソフトバンクの一連の人事は、後継者問題が以前から指摘されているファーストリテイリングや、まだ先のこととはいえ、オーナー企業の筆頭格であるトヨタにも同様の問題が降りかかる可能性があることを示唆している。

■ 孫社長の後継者にふさわしい経歴だったが

 ソフトバンクグループは6月22日、株主総会を開催し、新しい役員人事を承認した。孫正義社長の後継者として指名されていたアローラ副社長が退任し、孫氏の続投が決まった。同社の社外取締役でもある柳井正ファーストリテイリング会長兼社長や、同じく社外取締役の永守重信日本電産会長兼社長が、続投を強く後押しする発言をしていることなどから、孫氏は当分の間、同社の経営の舵取りを続けるものと市場は認識している。

 退任するアローラ氏は米グーグル出身で、2014年に孫氏が巨額報酬を提示して迎え入れた人物である。ソフトバンクは国内の通信事業に加え、米スプリントの買収をきっかけに北米通信市場への進出も試みている。また初期段階から投資していた中国の電子商取引サイト「アリババ」が上場したことから、再びネット事業を強化していくとの見方も出ていた。

 アローラ氏はグーグルのビジネス部門の責任者を務めていたが、以前はドイツテレコムなど通信会社にも在籍した経験があり、通信事業とネット事業の両方を視野に入れるソフトバンクのトップにふさわしい経歴に見えた。ソフトバンクはアローラ氏に対して高額な報酬を支払っており、その金額は、2015年3月期は165億円(契約金含む)、2016年3月期は80億円となっている。孫氏の期待がいかに大きかったのかが分かる。

 また、高額報酬をもらい逃げするのでは? という懸念を払拭するため、アローラ氏は2015年8月、約600億円分のソフトバンク株を市場から購入する方針を明らかにしていた。購入資金は孫氏が援助したとも言われているが、孫氏に次ぐ個人大株主となることで、とりあえず、市場に対して「覚悟」を示したわけである。

 孫氏は一時、アローラ氏と「毎日のように電話でやり取りしている」と述べており、トップの禅譲は既定路線にも見えていた。それだけに今回の辞任は市場に少なからず衝撃を与えている。ちなみに、アローラ氏の持ち分は孫氏が個人的に引き取るという。

■ 社外取締役2人もまったく同じ問題を抱えている

 今回の人事について孫氏は、経営を対して「欲が出てきた」と説明しており、アローラ氏も「(孫社長の)意向を尊重したい」としている。孫氏は同社の創業者であり、欲が出てきたという説明自体は嘘ではないだろう。

 だが、この人事は株主総会直前に決まり、当日になって議案が差し替えられるというドタバタぶりであった。こうした経緯を考えると、2人の発言を額面通りに受け止めることは難しい。

 孫氏からこれ以上の説明はないので、退任の理由については推測するしかないが、アローラ氏の実力を孫氏が過大評価してしまった可能性は高いだろう。アローラ氏はグーグルでも高い実績を上げたことで知られているが、あくまでプロ経営者であり、企業の創業者ではない。ソフトバンクという企業をゼロから立ち上げ、世界企業にまで育て上げた孫氏とは立場がまるで異なっている。

 プロ経営者としていくら優秀でも、すべてのリスクを引き受け会社を大きくしてきた創業社長とは、着眼点などにおいて歴然とした違いが生じることも多い。皮肉にも、孫氏の続投を後押しする発言を行ったファーストリテイリングの柳井氏や日本電産の永守氏もまったく同じ問題を抱えている。

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最終更新:7/4(月) 6:10

JBpress

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