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よなよなエール社長語る 小さいチームで“勝つ”術

R25 7/5(火) 7:00配信

「よなよなエール」など、個性的なクラフトビールの製造・販売で知られるヤッホーブルーイング。老舗の大手企業が大きなシェアを握るビール業界にあって、新規参入ながら確かな存在感を示している。代表取締役の井手直行氏に話を伺った。

●調査から“答え”は出てこない。勝つためには「価値観」を探る

「大手が絶対にやらないことをやるのが新規参入組の存在意義。だから、万人受けする商品は出しません。ターゲットを狭め、そこだけに刺さる個性を際立たせる。たとえば、若者向けの『僕ビール、君ビール。』をローソンと共同開発してつくったときは、ターゲットを“30代前後の男性”に絞りました」

相手は“ビール離れ”ともいわれる若者世代。そもそも狭いマーケットをさらに絞り込んで勝負をかけるのは無謀に思えるが、現に「僕ビール、君ビール。」はビールを飲まないはずの彼らにウケた。やはり入念なマーケティングを行ったのだろうか?

「大手企業ならコストを惜しまず、リサーチ会社にマーケティング調査を依頼するのでしょうが、弊社はお金がないので自分たちでやります。とはいっても、若いスタッフの友達を3人呼んで、2時間くらいインタビューしただけ。定量的なアンケートだと最大公約数のデータはとれるんでしょうが、それを参考にしても僕らが目指す差別化はできません。それなら少人数でも対面で深く聞き取りをしたほうがいい。3人いればいろんな意見が出ますし、違うことを言いながらも根本的なところの価値観はつながっていたりするんですよね。彼らはビールに対して『おじさんの飲み物』『会社の飲み会を思い出して気が重くなる』といった共通のネガティブなイメージを抱いていました。だったら、堅苦しくなく、おじさんの飲み物っぽくもないビールなら飲んでもらえるんじゃないかと。従来のビールとは味もデザインも差別化し、ネーミングにも『君たち、僕たちの飲み物なんだよ』というメッセージを込めました。直接的な“答え”が出てくるわけではありませんが、共通項を読み解き、アイデアにつなげることが大事だと思っています」

こうした、いわば“弱者の戦法”を徹底的に貫くことで、大手のビール会社が掘り起こせないマーケットを開拓してきた。

「マーケティングにおける“ランチェスター戦略”(=領域・ターゲットを絞ることで中小企業が有利にビジネスできる戦略)というやつですね。ピンポイントにターゲットを絞るのはやはりリスクだし、特に大手企業だと上司にそういう尖った商品の企画を出してもなかなか通りませんよね。でも、小が大に勝つためには最も正しいやり方だと思っているんです」

●楽天・三木谷氏から直筆の手紙…そこには?

「勝つ」ためには、チームのひとりひとりが力を発揮しなければならない。そして人の真価は、自らが立てた夢や目標に向かうときにこそ発揮されると井手氏は語る。かくいう自身も、「今年は1000人を集めたヤッホーブルーイングのファンイベント『よなよなエールの超宴』を大きくしていって、2020年に“全国ドームツアー”をやりたい」という夢を持っている。日々の仕事に忙殺されがちないち会社員でも、こうした夢を見つけられるのだろうか?

「誰かの夢に“感化される”ことが大事だと思っています。たとえば、テスラ社のイーロン・マスクCEOは本気で火星に移住すると公言している。僕もいろんな起業家の講演を聞いてきましたが、さすがに真面目にそんなこと考えている人は他にいない。同時に自分はまだまだだと感じます。

また、ヤッホーブルーイングが出店している楽天の三木谷さんもすごいですよ。僕らは楽天市場の一期生で、三木谷さんが直々にうちまで営業に来られていた時代もありますが、その時に頂いた直筆の手紙には『ご出店ありがとうございます。一緒に世界を目指しましょう』と書かれているんです。手紙をもらった時、私は担当ではなかったのでその存在を知らなかったのですが、2004年頃にその手紙を見つけて読んだとき、三木谷さんが創業当時から世界を見据えていたことに衝撃を受けました。じつはその頃のうちの業績はドン底で、僕は今にも潰れそうな会社の営業リーダー…。片やプロ野球チームの設立に乗り出すほどの企業に成長した会社のトップ。年齢も近く、つい数年前は同じようなところにいたのにですよ。

それって、結局は自分の夢を信じ切れるかどうかの差だと思ったんです。自分も大きい夢を掲げてとことんやればうまくいく、と思えたのはそこからですね」

(榎並紀行/やじろべえ)大ヒットした「僕ビール、君ビール。」。若者世代にウケるキャラクターを検討した結果、採用されたのは「カエル」井手直行(いで・なおゆき) 
1967年、福岡県生まれ。コンピューター周辺機器のエンジニア、環境アセスメント会社、長野の広告代理店営業などを経て、1997年「ヤッホーブルーイング」に創業メンバーとして参加。2008年、代表取締役就任。社内でのニックネームは「てんちょ」。2016年4月に著書『ぷしゅ よなよなエールがお世話になります―くだらないけど面白い戦略で社員もファンもチームになった話』(東洋経済新報社)を出版
(R25編集部)

※コラムの内容は、フリーマガジンR25およびR25から一部抜粋したものです
※一部のコラムを除き、R25では図・表・写真付きのコラムを掲載しております

最終更新:7/5(火) 7:00

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