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しまむら株が10年ぶりの高値をつけた本当の理由 (多田稔 中小企業診断士)

シェアーズカフェ・オンライン 7/5(火) 5:09配信

6月29日付の日本経済新聞に、「しまむら 10年5カ月ぶり高値」という記事が掲載されました。アパレル大手のしまむら株が東京株式市場で2006年以来の高値を付けたという内容です。

しまむら株が人気になっている理由として、記事では好調な決算内容や円高による原価低減、消費増税の延期などが挙げられています。また他の分析では、消費環境の再デフレ化に伴い、低価格帯商品に強みを有するしまむらの評価が高まっていることも要因に挙げられています。

これらの分析はもちろんすべて正しいと思いますが、私は、投資家がしまむら株を高く評価する本当の理由は別にあると考えています。今日はそのことについて書きたいと思います。

■そもそも、株式投資とは?
株式投資に出てくる用語は難しく、PER、EPSなどとアルファベットの略語も多数登場しますので、慣れないと取っつきにくいものです。しかし、その目的と手段はいたってシンプルです。

まず、投資家の目的はたった1つ、「リターンを得ること」です。そして、株式投資においてリターンを得る手段は2つしかありません。キャピタル・ゲイン(株の値上がり益)かインカム・ゲイン(配当)です。

このうちキャピタル・ゲインについては、株価が市場で決まる以上、最後は「運まかせ」の要素がどうしても残ります。それに対しインカム・ゲインの方は、投資家が企業経営者に向かって要求することができます。つまり、交渉によってより確実にリターンを得ることが可能なのです。

ただし、当然ながら企業に配当できる余裕がなければ配当はできません。「配当できる余裕」とは、まず過去の利益の蓄積である利益剰余金が貯まっていること、そしてそれが短期間で換金可能な状態になっていることです。たとえ利益剰余金が積み上がっていても、それが店舗などの固定資産に変わっていれば配当はしにくくなります。なぜなら、「利益」とはあくまで会計上の概念のことで、利益を銀行振込したり投資家の財布に入れたりすることはできないからです。

■しまむらは「お金持ち」
しまむらの貸借対照表を見ると、流動比率(1年以内に換金可能な資産を分子、1年以内に支払義務のある負債を分母とした比率)は430.8%と、同業他社(総資本100億円以上)平均の240.3%や、競合のファーストリテイリングの299.2%を大きく上回っています。また自己資本比率は86.8%と高く、自己資本のうち配当に回せる利益剰余金が占める割合も87.9%と、配当余力が極めて高いことが分かります。一言でいえば、しまむらは「お金持ち」企業なのです。

今回、しまむら株が市場で人気を集めた原因は、この「宝の山」のバランスシートが、好調な業績と相まって投資家に再評価されたからではないか、というのが私の見立てです。

■投資判断にはバランスシートも活用を
同じ理由で投資家に人気のある銘柄に富士フィルムホールディングス株があります。同社は写真フィルム製造からライフ・サイエンス事業への事業転換の見事さがクローズアップされがちですが、現在の稼ぎ頭は子会社化した富士ゼロックスで展開する事務機事業です。これによりリース料やメンテナンス費など“日銭”が入りやすいビジネスモデルとなり、キャッシュフローが劇的に改善しました。流動比率は10年前の189.9%から、昨年度は293.8%まで上昇しています。

企業分析は、売上高や利益といった損益計算書ベースの数字に目が行きがちですが、投資家やアナリストなどはむしろ貸借対照表の数字を重視するものです。今回のしまむら株の人気は、そんなプロの目の付け所が垣間見えた出来事ではなかったでしょうか。

多田稔 中小企業診断士 多田稔中小企業診断士事務所代表

最終更新:7/5(火) 5:09

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