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IBM、がん撲滅プロジェクトに認知型コンピューター「ワトソン」を寄付

Forbes JAPAN 7/5(火) 8:00配信

米コンピューター大手のIBMは、がん患者1万人のゲノム解析に役立てるために、米退役軍人省(VA)に同社の認知型コンピューター「ワトソン(Watson)」を寄付する。6月末、ジョー・バイデン米副大統領が主導するがん撲滅ムーンショット計画の会議が開催されるのに先立って発表された。



このムーンショット計画がなければ、IBMがVAにワトソンを寄付することはなかった。ワトソンのヘルスケア応用に向けた事業部門、ワトソン・ヘルスのスティーブ・ハーベイによれば、IBMとしてムーンショット計画を支援する方法を模索する中で、ワトソンを寄付することはなかっただろう。

米国内がん患者の3.5%の治療を行っているVAは、がん治療においてDNA解析の利用を拡大する方法を探していた。IBMのワトソンは、過去にもメンタルヘルス関連のプロジェクトでVAと協力している(このプロジェクトは完了しているが、結果は公表されていない)。

「われわれのがん精密治療の取り組みは、VAがその種の専門知識を有する分野に重点を置いたものになっている」と、VAの保健担当次官であるデービッド・シュルキンは言う。「IBMのワトソンと協力することで、その取り組みを劇的に前進させることが可能になる」

現在のところ、ニューイングランド州またはノースカロライナ州在住で、がんが標準的な薬に耐性を持つようになった患者であれば、新たな治療法を模索するために役立つDNAシークエンシング(塩基配列の解読)を行うことができる。

だがこうしたことが、国内のその他の地域で行われる可能性はほとんどない。VAでは、ワトソンを使うことが、この技術をより広い地域で展開する上で助けになることを期待している。

「ボストンやニューヨーク、ヒューストンのように大規模な医療センターがあるところに住んでいるかどうかが、治療に影響すべきではない」とハーベイは言う。「中西部に住んでいる患者でも、一流の専門医が使っているのと同じ情報にアクセスすることができるべきだ」
--{がん撲滅を少し前進させられる}--
ワトソンによる解析はコンセプトにおいて、DNAのシークエンシングを行う企業、ファンデーション・メディシン(Foundation Medicine)やナントヘルス(NantHealth)などと、そう大きく異なるものではない(これら2社がVAから送られてきた患者のサンプルを基に腫瘍のDNAシークエンシングを行い、その後ワトソンがそれらの解析を行う)。IBMはこのサービスを、数十の病院との共同研究の一環として、販売または提供しているという。

これはムーンショット計画のようなプロジェクトが、各企業や機関を結びつけ、また各企業にインセンティブを提供して技術をより幅広く利用可能にすることで、何を達成し得るかを示す素晴らしい例だ。だが同時に、短期間のプロジェクトの限界も示している。

今回のVAとワトソンの協力は、腫瘍のDNAシークエンシングが実際に人命を救えることを証明する新たな医学的証拠をもたらすものではない。また、退役軍人以外のがん患者の、新たな情報や治療へのアクセスを改善するものでもない。ワトソンがこの任務において、どれだけ有能なのかを示すものでもない。

がん撲滅ムーンショット計画のような取り組みにおいては、大々的な宣伝に実態を伴わせるのが難しい。それでもこうしたプロジェクトによって、がん撲滅の取り組みをほんの少し前進させることはできる。

Matthew Herper

最終更新:7/5(火) 9:00

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