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出口が見えない中国との関係

JBpress 7/5(火) 6:00配信

 国際関係において戦争が殴り合いであるとすれば、冷戦は口喧嘩のようなものである。20世紀、世界は殴り合いと口喧嘩の両方を経験したが、21世紀に入ってから国際関係は新たな結合の形に向かっている。

 かつて、戦争は国家の「利益」を最大化する行動だった。冷戦はどちらかと言えば「価値観」(イデオロギー)を軸とする戦いだった。今の国際関係は、表面的には価値観で動きながら、国益を追求することが真の目的になっている。

 英国のEU離脱はまさかの結果であり、当事者(英国人)以外のほとんどが予想できなかった。EUから離脱しても英国にとってメリットはほとんどないと思われていた。しかし、当の英国では、EUにとどまることこそが英国に不利益をもたらすと感じる人が多かった。まさに、表面的な価値観よりも国益を追求した結果であった。

 5月に開かれた伊勢志摩サミットでは、英国のEU離脱についてほとんど真剣に議論されなかった。これは今回のサミットの大きな失敗と言えるだろう。

 英国のEU離脱は英国にとっての危機ではなく、EUにとっての危機である。今となっては、そもそもEUの結成に無理があったと言わざるを得ない。英国の離脱でEUの弱体化は避けられなくなった。日本にとっても英国のEU離脱は対岸の火事ではない。欧州の危機は東アジアの秩序を乱すことになる可能性が高いからである。

■ 問題解決の糸口が見えない中国との関係

 ナポレオンは「中国が目覚めるとき、世界は震撼するだろう」と述べたという。これまでの30年余りで中国は徐々に目覚め、ナポレオンの言った通り、今、世界は震撼している。

 かつて鄧小平は「韜光養晦(とうこうようかい)」という教えを残した。この言葉は、十分に強くなるまで姿勢を低くするということを指す。中国はいずれ強くなるが、それまでは姿勢を低くして警戒されないようにする、という意味だったようだ。

 中国の強さは、その専制政治にある。政府はあらゆる資源を動員でき、たとえそれが失敗しても責任を問われることがない。中国は何も恐れず新しいことにチャレンジしていける。

 一方、中国の弱さは、一握りのトップリーダーはとびきり優秀な頭脳を持っているかもしれないが、それ以下のミドルクラスの幹部は能力が不十分なことである。中国はトップレベルで戦略を策定する力が十分にあるが、戦略を歪まずに実行する力がまだない。

 それに対して、日本の戦略実行力のレベルは非常に高いが、トップレベルで実効性のある戦略を策定する力がほとんどない。

 辞任した前東京都知事を見てもそのことがよく分かる。また、現在行われている参院選で候補者が選挙民に訴えていることを聞くと、日本の将来の国家像や本質的な戦略にはほとんど触れられていない。

 例えば保守派の政治家は、中国の情報収集艦が日本の接続海域などに入ってきていることを声高に批判する。日本が地政学なリスクに晒されているということを言いたいのだろうが、では日本はどうするのか。

 本当ならば、中国の艦船が日本の領海に侵入したことを確認したのならば、日中間の首脳同士の電話会談を提案すべきである。中国がそれを拒否すれば、国連に申し入れることができる。しかし、そのような措置は取られない。結果的に日中の国民感情はどんどん悪化するだけであり、問題解決の糸口はまったく見えてこない。

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最終更新:7/5(火) 6:00

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