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家族で必読! 新しい育児小説 『主夫のトモロー』 (朱川湊人 著)

本の話WEB 7/6(水) 12:00配信

「私自身の体験が反映された半自伝小説なんですよ」と語る朱川さん。作家デビュー前の十数年間、実際に主夫として家事と育児を担当し、その経験を生かして書かれたのが本作だ。

「編集の方と新しい連載を始めようと打ち合わせをしていたときに、たまたま私のデビュー前の主夫時代の話になりまして、いくつかエピソードをお話ししたら、とても面白いと言っていただいたんです。主人公のトモローが経験する話も、ほぼ実話です」

 トモローは、小さな出版社に勤務していたが、突如倒産。恋人でインテリアデザイナーの美智子に相談したところ、楽天的な美智子に引きずられ、そのまま結婚、トモローが主夫になることに。当初は、2人の親戚も心配するが……。

「進歩的な人でも、男性が主夫になることには、なかなか抵抗があるみたいで、『ジョン・レノンみたいでいいですね』とか言う人でも、実際に身近にいるのはまた別なんですよ」

 もともと、父子家庭で育ち、家事も得意だったトモローは、家事をしながら、以前からの夢である作家を目指すことに……。結婚から半年、美智子は妊娠。無事に娘のチーコが生まれるが、あっという間に美智子は職場復帰。トモローの育児生活が始まる。だが、男の育児は、いろいろと勝手が違う。おっぱいがないから、あやすのも一苦労。公園に毎日遊びに行けば、他のママから避けられ、やっとできたママ友とは、おかしな噂を流されたり。そんな日々のなか、チーコの成長とともに、2人もまた成長していく。

「たまになら、『お父さんあそんでくれていいね』とか声を掛けられますが……毎日だと、どうも勝手が違うみたいで(笑)。私が育児をしていた当時、『イクメン』なんて言葉はもちろんなかったですけど、今でも、たまに手伝う方が褒められる風潮には複雑ですね。だって『仕事』は、いつか終わりがありますが、『育児』には終わりがない。だから、みんなでやればすこし楽になる。実は、当たり前のことなんですけどね」

 男性“育児小説”を書くに至ったのには、今の状況も関係があると言う。

「最近は、普通でないことに徐々に『不寛容』になりつつある気がします。結婚したくても、相手の条件を重視して、なかなか結婚に踏み出せないそうですが、私は好きな人がいるならとりあえず結婚しちゃえば、楽しいですよと、声を大にして言いたい(笑)」

 子育て中の夫婦はもちろん、これからの人たちの応援歌になりそうな、新しくて勇気をくれる家族小説である。

朱川湊人(しゅかわみなと)

2002年に「フクロウ男」で、オール讀物推理小説新人賞を受賞してデビュー。05年に『花まんま』で直木賞を受賞。近著に『わたしの宝石』など。

聞き手:「オール讀物」編集部

最終更新:7/6(水) 12:00

本の話WEB

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