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外交的な人がプレゼン上手とは限らない! 内向的だからこそ高められるプレゼンスキル

HARBOR BUSINESS Online 7/6(水) 16:20配信

【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第9回】

 一般にプレゼンテーションのスキルは、営業マンなど外交的な人ほど高いし、さらに向上させる可能性あると思われているのではないだろうか。実は、私はこの意見に賛成しない。年間100を超える企業や団体から参加いただき、分解スキル・反復演習を実施してきた経験をふまえると、後段については、逆のことを申し上げたい。内向的な人ほど、プレゼンテーションスキルを高める潜在余力に満ちているのだ。

 そもそも、プレゼンテーションの良し悪しは何によって決まるのだろうか。演習で参加者にこのように聞くと、「堂々とした態度、良く通る声、伝えるべきことをもれなく伝える、相手に反論を許さない緻密な論理・・・」などの答えが返ってくる。これらの要素が重要であることには異論はない。しかし、これら以上に、プレゼンテーションの成否を決める要素があることが、発揮すべきスキルを分解していくとわかってきた。そのスキルが、聞き手に「なるほど」と思わせる、アンカリングのスキルだ。

◆聞き手の心に響かせる技術

 アンカリングのスキルとは、船が停止する際に錨(アンカー)を降ろし、海底がずしりと響くかの如く、話の内容を、聞き手の心にしっかりと響かせることを言う。読者の周りにも、「あの人の話には、いつも胸を打たれるなあ」、「○○さんの話には心を揺さぶらせた」、「部長のプレゼンテーションには、なるほどと納得した」というように思える人がいるに違いない。そういう人は、アンカリングのスキルが高いと言える。

 もちろん、態度も声も、内容も論理もプレゼンテーションを成功させるために必要だ。しかし、いかに表現力や論理性が高くても、アンカリングのないプレゼンテーションは、聞き手を納得させることは、まずあり得ない。逆に、表現力や論理性はいま一つだったとしても、アンカリングが高ければ、聞き手の納得度を高めることができるのだ。

 そして、このアンカリングある表現というものは、プレゼンテーションしたい製品やサービスについて、突き詰めていければ突き詰めていくほど、生まれやすくなる。そこで、分解スキル・反復演習型能力開発プログラムでは、製品やサービスの特徴を突き詰めていくための、2分程度でできる、とても簡単な、しかし、たいへん有効な演習を行う。

◆たった2分でアンカリング力を高める!

 その演習とは、例えば、ABC製菓の担当者が、同社が新発売したチョコレート製品についてプレゼンテーションするとしよう。その前提で、2人一組になり、聞き手が話し手に、「この商品は何ですか?」と聞き、話し手が、「これは○○です」と答える。話し手が答えると、また、聞き手は「この商品は何ですか?」と聞き、聞き手が別の答えをする。これを繰り返していくものだ。

 時間は2分間で、聞き手は、話し手が何回答えることができたかということと、「なるほど」と思った答えを、ポストイットにメモをしながら聞く演習だ。2人一組で聞き手が矢継ぎ早に質問をして、プレッシャーをかけながら実施した方が効果は高い。しかし、相手がいなければ、自問自答して行うことでも、相当程度の効果が期待できる。

 ひとつの実例を挙げると、次のようになる。

◆内なる声に耳を傾ける人こそ、アンカリング上手

 2分間で平均すると、10回程度の答えが出る。多い人で、20回を超える人も出てくる。そして、答える回数が多い人ほど、聞き手をなるほどと思わせる、アンカリングある答えを発することができるようになるのだ。

 それには、理由がある。標準的なパターンで説明すると、始めてから5回程度までは、会社から与えられたリーフレットに書かれているような、ありきたりの商品説明の言葉がすぐに思い浮かび、返答になる。そのうちに、リーフレットの内容は言い尽くし、その後、10回目程度くらいまでは、アピールされていない効能を説明する。それも出尽くすと、リーフレットにも効能の説明書きにも書かれていない、他ならぬ自分自身の商品への思いが発露されてくるのだ。

 この自分自身の思いこそが、聞き手の心を揺さぶる。どこにも書かれていない、話し手だけが持っている強い思いが、アンカリングを発揮するのだ。それは、外交的な人が、リーフレットや説明書きをいくら巧みにプレゼンテーションしても決して発揮できるものではない。むしろ、自身の内面を見つめることに長けて、内なる声に耳を傾けることができる、いわゆる内向的な人こそが、発揮しやすいスキルなのだ。プレゼンテーションのモデルとして真っ先に名前があがるスティーブ・ジョブズが、内向的な性格であると言われていることは、意外ではないのだ。

※「なるほどと思わせるアンカリング」のスキルは、山口博著『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)のドリル10で、セルフトレーニングできます。

<文/山口博 イラスト/geralt via pixbay(CC0 PublicDomain)>

※社名や個人名は全て仮名です。本稿は、個人の見解であり、特定の企業や団体、政党の見解ではありません。

【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。国内外金融機関、IT企業、製造業企業でトレーニング部長、人材開発部長、人事部長を経て、外資系コンサルティング会社ディレクター。分解スキル・反復演習型能力開発プログラムの普及に努める。横浜国立大学大学院非常勤講師(2013年)、日経ビジネスセミナー講師(2016年)。日本ナレッジマネジメント学会会員。日経ビジネスオンライン「エグゼクティブのための10分間トレーニング」、KINZAI Financial Plan「クライアントを引き付けるナビゲーションスキルトレーニング」、ダイヤモンドオンライン「トンデモ人事部が会社を壊す」連載中。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)がある。慶應義塾大学法学部卒業、サンパウロ大学法学部留学。長野県上田市出身

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最終更新:7/6(水) 16:20

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