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スズキ編集長の噂のクルマ試乗記──Porsche Boxster Spyder

GQ JAPAN 7/7(木) 22:01配信

3.8リッターの自然吸気エンジンを積むミド・エンジン・オープン・スポーツに感激!

【スズキ編集長の噂のクルマ試乗記:全文はこちらから】

ポルシェを着る

現行のすべての生産車中からいちばん欲しい1台を選べ、といわれたらこれにする。旧型同様に非自動であるにもかかわらず開閉がはるかに容易になった幌、ボディ、そしてインテリアもすべてブラックにした黒ずくめの1台を注文したい。

外形スタイリングは、限定1960台だった初代(987型、2009年発表)よりも、エアダム上部の開口部がグンと大きくなってフロントが分厚すぎるかな、とちょっと気になったけれど、1960年のタルガ・フローリオを制したRS60ばりのチャーミングなエンジン・フード上の2つのバルジは残っているし、空冷時代の911ぐらいに感じる手頃なサイズ感がいい。ちなみに、こっちは約16cm長く、約20mm低いが、幅は7cmほど広いので、見た目はよりシャープで、実寸以上にコンパクト感がある。薄い幌をかけた姿もクラシックでよい。カッコ悪いクルマには乗りたくないが、派手すぎるのもイヤだから、これくらいの塩梅がちょうどいい。

そして、乗ると、息を呑むほどすばらしいクルマだ。

6MTのみと組み合わされる3.8リッターは、991型カレラSに搭載されていた自然吸気ユニットを前後逆にしてドライバー背後のミドに載せたもので、最高出力375ps、最大トルク420Nmと、カレラS用よりも若干デチューンされた。それでも0-100km/h加速は4.5秒、最高速は290km/hというから動力性能に不満のあるはずもない。

乗り込んですぐにシフトとステアリングが、まったき信頼に価する剛性感を有していること、そして、それらの操作感の精妙さに打たれた。いずれもアルカンターラ(スウェード調の人工皮革)張りのステアリングとシフト・ノブは、触れると手が吸い付くようで、そのヒタっとした感触はほとんどエロティックですらある。エンジンは、幾重にもエンタテイニングだ。まず、レスポンスが並外れている。大排気量でそもそも地のトルクが太いとはいえ、6速、45km/hからペダルを踏み込んでも、平然と加速する。そのさい、パワートレインはいっさい揺動しない。この、すこぶるつきのタイト感は、各所の取り付け剛性の高さだけでなく、エンジンそのものの非凡なスムーズさゆえでもある。完璧に丸いものが完璧に丸く回っている感覚がつねにあり、しかもレスポンスはすこぶるシャープで、トルクの立ち上がりは、どんなときでも瞬発的だ。

サウンドもアドレナリンの分泌を促す。4000rpm辺りで咆哮音が加わり、そこから先、レヴ・リミットの7800まで、パワーは高原状態を維持し、エキゾーストはハイトーンで炸裂しつづける。ステアリング操作に対するシャシーの応答も、思い描く以上に鋭い。加えて、そこに信用できる落ち着きがある。ブレーキの信頼感が比類ないことは高性能版ポルシェの通例どおりであり、その他の性能も推して知るべしだ。

ポルシェ好きは、ポルシェと自分との一体感を表現するのに「ポルシェを着る」というけれど、このボクスター・スパイダーは、僕がこれまでに「着た」ポルシェのなかで、いちばん着心地のいいポルシェだった。

文:鈴木正文 イラスト:遠山晃司

最終更新:7/7(木) 22:01

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