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求めても、得られない苦しみ ~「当所即ち蓮華国」の心得~

BEST TIMES 7/8(金) 18:00配信

 
人生は四苦八苦

 昔よく見ていたテレビの時代劇の歌に、「人生楽ありゃ苦もあるさ」というものがありました。小さい頃の苦しみといえば、テストやお手伝いといったものだったでしょうか。しかし、成長して学校を卒業して、社会に出ていくにつれてある時ふと思うのです。「人生苦しみだらけ。本当に楽はあるのだろうか」と。

 人間として生まれたからには、必ず老いて、病になって、死んでしまいます。いつかは必ずやってくる「死」という苦しみからは逃れられないのです。楽しく幸せな毎日というわけではなく、苦しみもたくさんあります。むしろ苦しみの方が多いのではないかと思うくらいではないでしょうか。その苦しみを、仏教では「四苦八苦」と表現しているのです。

 まず、「生老病死」という四苦、そして、愛(あい)別離(べつり)苦(く)(好きな人とも別れなければならない)、怨憎(おんぞう)会苦(えく)(嫌いな人とも一緒に暮らさなければならない)求(ぐ)不得(ふとく)苦(く)(求めるものが思うように得られない)五(ご)陰(おん)盛(じょう)苦(く)(体があり心があるから、苦しみを受ける)、これらの八つの大きな苦しみのもと、私たち人間は生きていると、お釈迦様はお説きになります。言い換えれば、私たちの人生は「四苦八苦」とともにあるということになります。

 その中の『求不得苦』について考えてみます。これは、「不老不死など、求めても得られない苦しみ。あるいは物質的な欲望がみたされない苦しみ」をさしています。

 人間は、手にすれば手にするほど、次々と色々なものが欲しくなります。欲望がとどまらないとお釈迦様は言われるのです。物を買っても、買ってもまだ欲しくなる。欲望には際限がない。お腹がすいてご飯を食べても、数時間するとまたお腹がすいて食べたくなる。

「好きなものが欲しい」「美味しいものが食べたい」に始まり、大きな家に住みたい、いい車に乗りたいとお金で買うことが出来るものから、「病気にならない」「年をとらない」「死なない」という「不老不死」まで。

 いくらお金を出しても、どんなことをしても、医学や、科学が進んでもどうしても手に入れられない、得ることができないものまで、人間は欲してしまうのです。

 今年5月に起こった、東京・小金井市の「アイドル刺傷事件」は特徴的な出来事だと感じました。はじめは、憧れていたアイドルに会えたことに、大きな喜びを感じていたと思います。しかし、人間の欲には際限がありません。そのうちに直接話をしたくなり、会うだけは満足出来なくなってくるのです。ついには、他の人に対して笑顔でいることさえも不満になって、自分だけのものであって欲しいということに行き着きます。アイドルを欲するあまり、自分の意に反する行いに、自分勝手に失望して事件を起こしてしまったのでしょう。

隣の芝生を見ない心
 

  では、どのように生きていけばこの苦しみから逃れて、幸せにいきることができるのか? 

 江戸時代の禅僧、白隠慧鶴禅師の言葉に「当所即ち蓮華国」というものがあります。今まさにこの場所を、蓮華国つまり「極楽」だと思うことができたなら、人生は「幸せに満ちあふれる」というのです。「当処即ち蓮華国」とは、自分の足もとをしっかり見なさいということに他なりません。

 私たちはどうしても、「隣の芝生は青く」見えてしまい、「もっといい家に生まれていれば」「もっと頭がよければ」「もっといい容姿をしていたら」「もっと健康だったら」「もっといい仕事に恵まれていれば」……と求めて、求めて、得られないことに苦しみを感じてしまいます。

 その苦しみから逃れるために必要なことは、「今ここ、目の前のこと」としっかり向き合い、それが最高で最良でベストあると心から思うことしかないのです。

 苦しみはなくなりません。しかし、その苦しみをしっかりと観察して、向き合ってみることが出来たなら、『求不得苦』を「苦しみ」とは思わなくなり、幸せな人生を歩むことができると信じるものです。

 今、目の前のことを蓮華国と思える自分を見つけていただければ幸いです。

文/細川 晋輔

最終更新:7/8(金) 18:00

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