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鶴田真由×海堂尊「ゲバラは旅で成長した」 『ポーラスター ゲバラ覚醒』 (海堂尊 著)

本の話WEB 7/8(金) 12:00配信

いまなおカリスマ的人気を誇る革命戦士の青春旅行を描いた海堂さん。ドキュメンタリー番組で、キューバを訪れた鶴田さんと、ゲバラの魅力、旅の醍醐味について存分に語り合った。

鶴田 若き日のチェ・ゲバラの青春の旅を堪能させてもらいました。海堂さんが、『ポーラースター ゲバラ覚醒』を書こうとしたきっかけはなんだったのでしょうか。

海堂 2011年くらいに、NHKの『旅のチカラ』というドキュメンタリー番組から、「好きな場所に旅をして成長してください。さらには、旅行中に短篇の執筆も!」というオファーがあったんです。そのときに、キューバしかないと。さらにキューバに行くなら医師という共通点もあるし、ゲバラを描こうと。鶴田さんも、ロケでキューバに行かれていますよね。

鶴田 私も昨年、NHKの番組(『ザ・プレミアム 鶴田真由のキューバふしぎ体感紀行』)で約1カ月間、滞在しました。サンタクララという街では、ゲバラの霊廟も特別に撮影させていただいて。

海堂 あの街にあるゲバラ像は本当に大きいですよね。ゲバラたちが立てこもったという山中の最前線基地も、狭苦しいところかと思ったら、風が抜けてハンモックもぶら下がったりしていて、気持ちのいい場所でしたね。

鶴田 ラテンの国というのもあるのかもしれないですね。

海堂 たしかに。中南米は時間の流れ方が違いますからね。いい加減でルーズだけれど、人間の本性にはあっているんでしょう。街中ではゲバラはどんな存在でしたか?

鶴田 ゲバラの肖像画がいたるところにあふれていて、どれを見ても、なんて色っぽいんだろうと。カストロがかわいそうになってしまうくらい(笑)。人々にインタビューをして感じたのは、若者にとっては、学校で習った英雄で、年配の方たちにとっては、「ゲバラとカストロのおかげで今、私たちは生きている」という存在でしょうか。

海堂 ゲバラは人物というよりも一つのシンボルになっているところもありますね。

鶴田 そういえば、海堂さんがキューバに行かれたときのディレクターさんとお仕事したことがあるんです。「取材をしている最中にゲバラに口説かれたという女性が何人も居た」という話をききました。

海堂 そんな話がありました(笑)。

鶴田 やっぱりみんな、ゲバラに会うと恋しちゃうんですね。実際に口説かれたかどうかは分からないけど、やっぱり優しい言葉をかけてもらって、「私は今、ゲバラに口説かれたんだわ」って思っている人がいたるところにいるなんて素敵です。

海堂 若き日のゲバラは、女性がいたら口説いてしまうような普通のあんちゃん。そういう若者が、いろんな体験をしてストイックな英雄になっていって、きっと苦しい思いもしたんだと思う。そういうところを書きたかったんですよね。

鶴田 まさにそれが描かれていますが、ゲバラはもともとはヒッピー的な要素を持っている人ですよね。文章を書くことがすごくお好きだったみたいですし。革命家じゃなかったらアーティストになっていた人だと思います。一方で、カストロは政治家の気質ですよね。

海堂 だから面白い組み合わせなんです。「街中ゲバラだらけで、カストロさんかわいそう」とおっしゃいましたが、あれは「ゲバラを押し立てることで自分は後ろに引っ込む」というカストロの考えです。カストロは偶像化されることを嫌っていて、銅像なんて一つもないんですよ。

鶴田 賢明なやり方ですよね。ゲバラはやっぱり英雄になる人物だから、彼を表に出して、彼の魅力と直観力みたいなものを、政治家として利用するというか。

海堂 女性から見て、ゲバラという人物は魅力的でしたか?

鶴田 もちろんです。小説を拝読して、ゲバラは青春期から既に、生きることに覚悟を持っていたと感じました。例えば婚約者を置いてブエノス・アイレス郊外を出る場面だとか。ああいう時に自分の宿命に対してちゃんとストイックでいられる人物だった。そこがやっぱり女性にとってはたまらなく魅力的に見えるんです。あの場面で婚約者のもとに残られたら、ゲバラの魅力は半減します(笑)。いくら女性にだらしなくても、どうしようもないあんちゃんだとしても、彼には、自分が最も大切だと思うことを人生の中心に置けるストイックさがありましたから。

海堂 ストイックになったのは、幼少期に喘息発作で死にかけ、その後もずっと、生涯喘息に苦しめられ続けたのが大きな理由だと思います。婚約者のもとを去るエピソードをそう読み解いていただいたとは嬉しいですね。

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最終更新:7/8(金) 12:00

本の話WEB