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ブレグジットで原油価格の主導権はブレントへ

JBpress 7/8(金) 6:10配信

 英国のEU離脱決定を受けて、欧州の銀行は金融市場から容赦ない洗礼を浴びている。前回のコラム(「英EU離脱が引き起こす金融危機、震源地はここだ」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47227)でドイツ銀行の苦境ぶりを説明したが、7月に入るとイタリアの大手銀行に対する懸念が急速に高まってきた。

 イタリア最大の銀行であるウニクレジットの株式時価総額は120億ユーロだが、抱える不良債権は4倍以上であり(510億ユーロ)、イタリア全体で不良債権の総額は1980億ユーロにも上る(7月5日付ブルームバーグ)。

 英国でも不動産関連ファンドの償還凍結が相次ぎ、不動産関連融資が銀行にリスクをもたらす懸念が急速に高まっている(7月6日付ブルームバーグ)。

 このように欧州の銀行がまるでリーマン・ショック前夜の様相を呈してきており、欧州全体がリセションに陥る可能性が高まっている。

 そして、このことが原油価格の動向に影響を与えつつある。

■ 市場関係者の注目はブレント原油へ

 世界の原油価格はこれまでのところ米国の事情が大きく反映されていた。米国で在庫が減少するとWTI原油先物価格が上がり、石油掘削装置の稼働数が増えると原油価格が下がるという具合である。

 だが、英国のEU離脱決定を受けて、渦中の英国が生産する「ブレント原油」に市場関係者の注目が集まりつつある。

 ブレント原油とは、英国領北海海域にあるブレント油田から採掘される硫黄分の少ない軽質油である。生産量は日量約50万バレルと少量だが、米WTI原油(日量約30万バレル)と並ぶ世界の原油価格の指標となるマーカー原油である。

 ブレント油田が属する北海油田は150余りの海底油田・ガス田から構成されており、英国、ノルウェ-、デンマーク、ドイツ、オランダの各経済水域にまたがっている。それらの大半の油田、ガス田は、英国とノルウェーの経済水域の境界線付近に存在している。

 1960年に英国が開発に着手すると、ノルウェーもこの動きに追随して開発に乗り出した。北海油田の生産量は、1970年代の2度にわたる石油危機による原油価格の急上昇によって急拡大し、この拡大によって英国は1980年代に原油輸出国となった。だが、1990年代後半に英国の原油生産量はピークを迎え、2004年に原油の純輸入国に転じる。現在の原油生産量は日量約90万バレルである(ただしEU加盟国では最大の原油生産国である)。

 ノルウェ-も2001年に原油生産のピークを迎えた。だが、2010年に有望な油田が発見されるなど、英国に比べ埋蔵量は豊富である。現在の原油生産量は日量約190万バレルと英国の生産量の2倍以上で、その3分の2が輸出されている。ノルウェーはEU加盟国ではないが、原油の輸出の8割以上がEU諸国向けである(英国の23%が最大)。

■ 苦境に陥る英国の石油業界

 北海油田はEU諸国にとって貴重な原油の調達先であるが、生産コストが高く、原油価格下落によって石油開発企業が苦境に陥っている。

 特に英国の石油業界は深刻な打撃を受けている。生産コストが1バレル当たり60ドルを超える企業が少なくないため、2015年の1年間に破産に追い込まれた企業数は28社と、1年前の18社から急増した(2013年はわずか6社だった)。石油関連業界の従業員数も、2014年のピーク時に45万人だったが、昨年末には37万人に減少した。

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最終更新:7/8(金) 6:10

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