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尿検査で分かること

月刊糖尿病ライフ さかえ 7/9(土) 11:01配信

尿の検査で何がわかるのでしょうか?(2型糖尿病、54歳、女性)

【回答】 尿はただの排せつ物の一つではなく、さまざまな体内の環境を教えてくれる手紙のような役割を持っています。古い医学書には、患者さんの尿を飲むという診察法も書かれていたほど、尿は重要なサンプルです。また、侵襲(体に傷をつけること)なく採取できる点も簡便でよいのではないでしょうか。尿検査の意義を理解し、有効に活用しましょう。
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■ 血糖コントロールに関して(尿糖)

 一般的に、健康な人では尿糖は陰性になります。尿を生成している(作っている)腎臓の、尿細管という部分にあるSGLT1、 SGLT2によって、原尿(最初にろ過された尿のもと)中のブドウ糖が100%再吸収されるからです。しかし、腎性糖尿のようなSGLT2に遺伝子変異がある特殊な病態や、血糖値が高すぎて再吸収が十分追いつかなくなっている場合は、尿糖が陽性になります。その閾値(いきち)は、おおよそ血糖値が160~180mg/dLとされています。ですから、尿糖が陽性であったら、血糖値が180mg/dL以上の時間帯が近い過去にあったと思ってください。

 現在のように簡易血糖測定が頻繁にできなかったときは、入院患者さんに1日蓄尿していただき、尿糖が出なくなるのを目標に血糖コントロールをしていました。最近では、血糖変動や食後高血糖の指標として尿糖を活用しています。

 図に示したように、血糖値は一日中変動しています。Aの波を形成する人とBの波を形成する人がいた場合、血糖値の平均は同じなのでヘモグロビンA1cは同じ値を示します。

 しかし、実は血糖値の最高値が高く、大きく波打つAの人の方が、血管合併症が進みやすいことが分かってきました。もしもAとBの人がいつも早朝空腹時に来院して検査をしていたら、まるでAの人の方が血糖コントロール良好であると誤解されてしまいます。ですから、受診の際には普段通りの朝食や服薬、インスリン注射を行って、食後の尿糖や血糖値を包み隠さず見せてください。

 もし、食後の血糖値が低値でも尿糖が陽性であれば、数時間以内に血糖値が180mg/ dL以上になっていた足跡ありと考えられます。しかし、多くの患者さんは受診日の朝食は緊張して控えめになってしまうのではないでしょうか(笑)。それでは、日常の食後高血糖を十分にチェックできません。わたしは自宅で食後の尿糖をチェックすることをお勧めしています。ウリエース(テルモ)のような尿糖試験紙は薬局でも購入することができます。週に2~3回、1日で一番多くご飯を食べた後の尿糖をチェックしてみることで、血糖自己測定をしていない患者さんでも食後高血糖をチェックできます。

 SGLT2阻害薬を服用中の患者さんは、尿糖は常に陽性になりますので、残念ながらこの方法は使えません。


■ 危険なケトン体

 病院やクリニックで行う尿検査の項目にはケトン体が含まれます。インスリンが不足すると、脂肪組織から出された遊離脂肪酸をもとに肝臓でケトン体が生成されます。糖尿病患者さんではインスリンが不足するとケトン体が過剰に産生され、糖尿病ケトアシドーシスという恐ろしい急性合併症を引き起こすことがありますので、あまりお目にかかりたくない物質です。

 インスリンが不足しているので、通常は高血糖も同時に認められますが、SGLT2阻害薬を服用している患者さんや、長い間食事がとれずインスリンも打っていないような患者さんでは、血糖値がさほど上昇していなくてもケトン体を認めることがありますので、血糖値が低いからケトン体もなく安心というわけではありません。また、3‐ヒドロキシ酪酸というケトン体は、尿ケトン体ではチェックできませんので、尿ケトン体が陰性だからといって、ケトン体が体内で増えていないとも言い切れません。ケトン体が上昇している危険性があるときには、尿検査だけではなく確認のための血液検査を必ずしてください。


■腎症の有用なマーカー(尿たんぱく)

 尿たんぱくは、糖尿病の三大合併症の一つである糖尿病腎症の重要なマーカーです。初期の腎症は微量アルブミン尿という特殊な検査で診断されますが、腎症が進むにつれて、尿たんぱく定性も陽性になっていきます。また、糖尿病があって尿たんぱくが陽性であるからといって、全てが糖尿病腎症によるものとは限りません。他の腎臓の病気が隠れている可能性もあるので、詳しい検査を受けてください。


■ おわりに

 尿の検査はそれ以外にも膀胱(ぼうこう)炎をはじめとした尿路感染症や潜血の有無など多くのことを教えてくれます。また、尿中Cペプチドの測定によって、インスリンの自己分泌能を測定することも可能です。血液検査に勝るとも劣らぬ尿検査を、ぜひ糖尿病療養にお役立てください。

 また、高齢者で尿が出ないという方がよくおられます。しっかりと尿検査をするためにも、脱水予防のためにも水分補給を心掛けましょう。



福岡大学医学部
内分泌・糖尿病内科
野見山 崇(のみやま・たかし)

※『月刊糖尿病ライフさかえ 2016年6月号』より

最終更新:7/9(土) 11:01

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