ここから本文です

「バランスの良い食事」は健康にいい? 8万人を15年追跡調査してわかったこと

HARBOR BUSINESS Online 7/10(日) 9:10配信

 最近では糖質制限ブームとも言える状況になっており、過剰なまでに悪者扱いされている糖質。中には「バランスの良い食事」までも否定する声もあるほどだ。

⇒【資料】食事バランスガイド

 そんな中、今年3月に国立がんセンターが発表した「多目的コホート研究(JPHC研究)」の結果が興味深いものになっていることをご存知だろうか?

◆国立がんセンターの予防研究

 国立研究開発法人国立がん研究センター(National Cancer Center)は、日本におけるがん征圧の中核拠点として、がんその他の悪性新生物に対する診療、研究、技術開発、治験、調査、政策提言、人材育成、情報提供を行う日本の国立研究開発法人である。国立がん研究センターの予防研究グループで、地域住民、検診受診者、病院の患者さんなど人間集団を対象に、疫学研究の手法を用いて、発がん要因の究明(がん予防のために必要な科学的根拠を作る)がん予防法の開発(科学的根拠に基づいて具体的かつ有効ながん予防法を提示する)を目的とした研究が行われている。

 研究で採られる「多目的コホート研究」の「コホート」とは、共通の性格を持つ集団のことを指す。また、「コホート研究」とは、そうした「ある共通点を持つグループ」と「共通点を持たないグループ」を設定し、それぞれのグループにおける、病気の発生率を比較して研究することである。「コホート研究」は、分析疫学における手法の1つであり、特定の要因に曝露した集団と曝露していない集団を一定期間追跡し、研究対象となる疾病の発生率を比較することで、要因と疾病発生の関連を調査するという手法だ。

 この「多目的コホート研究(JPHC研究)」は、日本各地にお住まいの約10万人の方々から、その生活習慣についての情報を集め、10年以上の長期にわたって疾病の発症に関する追跡を行うことによって、どの様な生活習慣が疾病の発症に関連しているのかを明らかにすることを目的とした研究である。

 今年3月に国立がん研究センターが「British Medical Journal 2016年3月22日号)」に発表した論文は、その「多目的コホート研究(JPHC研究)」で導かれた結果のひとつだ。

 研究チームは、1990年と1993年に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、東京都葛飾区、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の11保健所(呼称は2014年現在)管内に住んでいた40~69歳の人を対象に、食事調査を含む生活習慣についてのアンケートを行った。そして、5年後の1995年と1998年には、より詳しい食事調査を含む2回目のアンケートで、当時の生活習慣についてのアンケートを行った。そのうち、1回目と2回目の調査時点で循環器疾患、がん、肝疾患のいずれにもかかっていなかった男女約7万9600人の方々を、2回目の調査時点から平均約15年追跡したという。

 その結果、どういうことが明らかになったかというと、「バランスの良い食事が、健康寿命のさらなる延伸のために役立つ」という結果であった。

◆「食事バランス」がいいほど死亡率が低い!

 研究開始から5年後に行なったアンケート調査の結果を用いて、主食(ごはん、パン、麺)、副菜(野菜、きのこ、いも、海藻料理)、主菜(肉、魚、卵、大豆料理)、牛乳・乳製品、果物、総エネルギー、菓子・嗜好飲料由来のエネルギーの各摂取量を10点満点として評価し、70点満点の「食事バランスガイド遵守得点」というのを導き出した。

 この「食事バランスガイド」というのは、2005年に厚生労働省・農林水産省が「何をどれだけ食べたら良いのか」について、食事の望ましい組み合わせとおおよその量をイラストでわかりやすく示したもので、このガイドにある栄養バランスを遵守している人ほど総死亡のリスクが低下しており、遵守得点が10点増加するごとに総死亡リスクが7%減少していたのだという。

 死因別に見ると、食事バランスガイドへの遵守度の高い人ほど循環器疾患死亡、および、脳血管疾患死亡のリスクが低下することが分かった。食事バランスガイドへの遵守得点が10点増加するごとに、循環器疾患死亡リスクが7%減少、脳血管疾患死亡リスクが11%減少している。

 一方で、がん死亡および心疾患死亡については、食事バランスガイドへの遵守度が低い人は死亡リスクが高く、遵守度の高い人ほど死亡リスクが低い傾向は見られたが、統計学的に意味のある違いではなかったという。

◆やっぱり重要だった「栄養バランス」

 結論をいうと、やはり「バランスのいい食事」は、循環器疾患死亡や脳血管疾患の死亡リスクとの関連がはっきりしたわけだ。

 詳細を見てみると、副菜(野菜、きのこ、いも、海藻料理)および果物の摂取量が「食事バランスガイド」で指定されるバランスに忠実なほど循環器系リスクが低下し、主菜(肉、魚、卵、大豆料理)の摂取量が「食事バランスガイド」で指定されるバランスに忠実なほど脳血管疾患死亡のリスク低下が見られるという結果になっている。

 もちろん、太り過ぎも大きなリスク要因であるため、短期的には糖質制限などで体重を落とすのはありかもしれない。しかし、長い目で見ると、やはり「バランスの良い食事」が長生きするには良さそうである。

<文/丹羽唯一朗>

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:7/10(日) 9:10

HARBOR BUSINESS Online