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【隔週連載】森博嗣 道なき未知〈第18回〉発想できる頭を持とう

BEST TIMES 7/11(月) 12:00配信

第18回 
発想できる頭を持とう


 

考えるのは大変

 道があれば、そこを突き進むことは、さほど困難ではない。むしろ、じっとしている方が面倒なくらいだ。そして、なによりも難しいのは、道を見つけたり、道を作ることである、という話をしてきた。
 道を見つける、道を作る、というのは、具体的にどんな行為なのか。答は簡単だ。「考える」ことである。では、「考える」とはどんなことなのか? 
 多くの人は、「考える」を、本を読んだりして勉強することだ、とイメージしているが、これは間違い。学ぶことは、頭に情報を入れる行為であり、つまり食べることと同じだけれど、考えるのは、頭を動かすことで、これは運動すること、アウトプットする行為なのだ。
 したがって、頭を使って考えると、お腹が減るように、頭の空腹感を覚え、知識や情報が欲しくなる。適度に学び、適度に考えるのが、頭の健康に良い、という話になる。
 しかし、この情報化社会では、黙っていても頭に飛び込んでくるものが膨大にあって、考える暇もない。しかも、学ぶことが頭を使うことだと勘違いしている人が多いため、本を読んだり、○○教室に通ったりして勉強することで頭の老化を防ごう、なんて方向へ行きがちである。これも大間違いだ。
 僕は作家なので、文章を書くことが仕事だが、たとえば、テーマが設定されていたり、質問を受けてそれに答えて文章を書く、といった仕事もある。このような「返答」「回答」というのは、頭を使わなくて良いため実に簡単で、時間もかからない。それに比べると、なんでも良いからエッセィを書け、という仕事が一番大変なのである。
 小説もシリーズ一作めは時間がかかる。二作めからは急に楽になり、エッセィよりもずっと簡単に書ける。これはつまり、考えないからだ。決まったものが既にあって、それに反応すれば良い行為なのだ。
 エッセィも、何を書くかを決めるまでが労力の九割で、あとの一割が執筆という単純労働になる。
 落語家の大喜利は、お題が振られて反応するだけで、僕は魅力を感じない。一人で出てきて、何を話すのか、というところに考え抜かれた「芸」がある、と認識している。

 

発想できない頭

 ネット社会で多く観察されるのは、「誰か私に問いかけて」という人たちだ。自分から発するものを生み出せない。子供のときからずっと、周囲の問いかけに応えて成長してきたからだろう。「何が欲しい?」「何になりたい?」と問われないと考えられない。考えているうちに、いろいろ候補を挙げられるから、「それ」と答えるだけになる。本当に大切なのは、一人でいるときに、ふと、自分は何になりたいのかな、と考えることであり、その発想を持つことなのである。
 まず、何を考えれば良いのか、を考える。これが大切であって、この思考をいつも持っているかどうかが、その後の人生を決めるだろう。すぐには効果は表れない。十年後くらいに違いが出てくるはずだ。逆に、現在どうも面白くない生活だという場合は、十年前に考えなかった結果なのである。
 楽しいことは、「発想」から生まれるものだ。他者が持ってくる面白そうなものに飛びつくだけの人生では、真の楽しさを知らずに終わることになる。そういう人は、誘われることでしか楽しめない。誘われるようになるにはどうすれば良いのか、と悩んでばかりいる。そのうち、誘ってくれないのは相手が悪い、と周囲を憎むようにもなるだろう。
 一方、発想する頭は、常に楽しさを生み出す。つぎからつぎへと楽しいことを思いつき、やりたいことばかりになる。もちろん、すべてが実行可能なわけではない。でも、誰かから誘われなくても、自分にはやりたいことがある、というだけで、もうかなり楽しい状態なのだ。
 もう一つ言えることは、学んだり、誘われることは出費になるけれど、発想は生産的で、収入につながる可能性が高い、という違いだ。アウトプットするから、仕事になり、対価が得られる、という側面である。この収入も、きっと楽しさを大きくするだろう。

 

ジューン・ブライト

 正しくは、ジューン・ブライドだが、六月は一年で最も天気が良い月と言われている(日本は真逆? )。初夏の爽やかな晴天が気持ちが良い。我が庭園鉄道も工事がちゃくちゃくと進み、間もなく全線五百メートルが開通しそうだ。
 ここ数週間は、最後の難関、木造橋の建設工事を行っている。橋の長さは十メートル。先日、恐る恐る初めて走行試験をした。楽しかった! 

文/森博嗣

最終更新:7/11(月) 12:00

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