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一流企業出身の経験豊富なシニアが起業で失敗する理由とは? (玉木潤一郎 経営者)

シェアーズカフェ・オンライン 7/11(月) 6:09配信

起業ブームである。

都会・地方を問わず、そして老若男女を問わず、起業しようと考える方は多い。そしてそれを煽るウェブサイト、成功法則本、セミナーが活況である。

かくいう筆者も、会社経営の傍ら地方の起業支援の片棒を担いでおり、その相談者がバラエティ(?)に富んでいることには驚くばかりだ。若者は言うに及ばず、子育て中の主婦、企業の中堅であるはずの40代男性、そして企業を退職したシニア層もいる。

退職シニア層の中には、一流企業に長年勤務し、それなりの業務と役職を経てきた、いわゆるハイキャリアな方も少なくない。普通に考えたら、ビジネスを知り尽くしたはずのそれらの方々が独立起業に失敗するとは考えづらいのだが、実際には失敗事例の方が多いのが残念な現実だ。

■ハイキャリアのシニア層起業に多い「安定走行型」
サラリーマン時代は、自社ブランドが確立しており、取引先との信用が構築されている中での商取引であろう。そこで高度なビジネススキルを発揮してきたシニア層であっても、いざ独立開業となると少々事情は異なる。

当時の会社の看板と肩書きは当然使えず、これまで一声かければ協力してくれていた取引先も、あからさまに態度を変える。強いと思っていた自分のネゴシエーション能力が通用しなくなっている事に驚く。かつては大きな仕事をしていた上級管理職であればあるほど、そのギャップは激しいだろう。

企業の最前線でバリバリ仕事をしてきたシニア層は、既に収益化している事業の管理や遂行能力は、当然に高い。これは、走り出した自転車を、さらに高速で、しかも安定させて走らせる能力といえるが、実は起業初期に要求されるのは、止まっている自転車のペダルを強く踏み込み、最初の数メートルをヨロヨロと走り出す力なのだ。

■起業に要求されるスタートアップ能力とは
起業~収益化までのスタートアップに必要な能力、それは自転車でいえば、最初のひとこぎから走行が安定するまでのもっともパワーを必要とするところであり、起業を成功させるために最重要な局面でもある。

すでに収益化した事業を運営するサラリーマンに求められる資質とはやや異なるし、残念ながらそれを企業で学ぶことは(例え新規事業のプロジェクトリーダーだったとしても)難しい。むしろ企業に長くいるほど、「最初のひとこぎ」の力は低下しているのかもしれない。

独立後、自分の金が、運転資金としてじゃぶじゃぶ出て行く恐怖。
企業の看板なしで営業に行き、受付の女性にすら断られる屈辱。
愚痴や思いを共有する者のいない孤独。
資金繰りに奔走して、起業した目的を見失いそうになる自分。

独立起業すれば、企業にいた時とはまったく種類の異なる課題が、それこそ矢継ぎ早に襲いかかってくる。

■シニア起業を成功させるために
どのようなハイキャリアの所有者であっても、独立起業後の仕事はこれまでの仕事とは全く別ものだと割り切らなければならない。

さて、筆者が地方で起業支援に取り組む中で感じる、スタートアップに際してもっとも肝に銘じ無ければいけない点は、「売るのは自分」という当たり前のことであろう。当たり前すぎて恐縮だが、そこをわかっていない方は多い。よくある勘違いで、素晴らしい商品を巧妙にプレゼンできれば一気に販路が開けると考えているケースがあるが、独立起業後の自社の商品を売り歩いてくれる取引先はない。

自社商品の価値をもっとも理解している自分以上に、それを売ることができる営業マンはいない。小さなスタートアップは、その何もかもが売れることから始まるという商売の基本に、キャリアを忘れて立ち返ることが出来るかが、単純だが成功の重要な要因だ。

ペダルの最初のひとこぎを力強く踏み込み、歯を食いしばって安定走行までこぎ続けられる起業家だけが、事業を収益化させることが出来る。


玉木潤一郎 経営者 株式会社店舗応援団 代表取締役

最終更新:7/11(月) 6:09

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