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単純に喜んではいけない増税延期 法政大学 小黒一正教授

Japan In-depth 7/12(火) 7:00配信

法政大学経済学部の小黒一正教授を迎え、参議院選挙の大きなテーマである経済問題について聞いた。

政府は消費税の再増税延期を決めたが、それだけ経済状態が悪いということなのか。「今の日本経済はノーマルな状態だと思う。」と小黒氏は回答した。例えば、今回の選挙が始まる前、安倍首相は、失業率や有効求人倍率が改善していることをアピールしていた。

内閣府や日銀が出している日本の潜在成長率を実質GDPでみた場合、0.3~0.5%程度であり、1980年代4.4%、90年代1.6%、2000年代0.8%と比べると確かに下がってきている。その大きな要因には、生産性が上がらないこともあるが、人口減少の影響もかなり受けている。小黒氏は「一人あたりのGDPでみればアメリカとほぼ同じ。」と話し、極端に悪い状況ではないという見方を示した。

経済がノーマルな状態であるとすれば、増税延期という判断は本当に正しかったのかという疑問が出てくる。長期的に見れば、時間が経つと人口が減っていくため、実質GDPが2040年にはマイナスになるとも言われている。「なるべく早く、財政、例えば税金や社会保障の改革が必要。2020年~2025年になると、団塊の世代が75歳以上になり、医療・介護費は2015年に50兆円だったものが、2025年には75兆円になる。」と小黒氏は指摘した。

その間に財政再建できなければ、当然債務が膨らむ。国民の将来への不安はさらに大きくなっていく。「社会保障改革をするのは当然だが、改革し終わった後に、それを支える税源をきっちり持っていかないと、(国民は)将来が不安なので、消費を引き締めて貯蓄をしてしまう。本当に今回の増税延期が良かったのか、よく考える必要がある。」と述べ、長い目で見ると今回の増税延期が、国民の将来への不安につながる懸念を示した。

政府は、2020年度に基礎的財政収支を黒字化すると言っている。実現しなければ、2020年に社会保障費が急増してしまうので、2019年10月は増税のタイムリミットと言える。しかし、小黒氏は、「ここでやらなきゃいけないことは間違いない。ただ、2019年10月の増税は難しいかなと思う。」と話す。

その理由として、2019年10月の前に参院選があることを指摘した。今回先送りされた2017年4月増税に関しては、17年度予算のため、今年の10月に増税するか否かを決めても間に合った。「しかし、2019年度予算は18年12月に編成するので、ここで増税するかしないかを決めなければいけない。そうすると2019年夏の参院選で増税するかしないか判断して選挙に臨まなければいけない。これは非常に難しい。」と小黒氏は述べ、選挙のことを考えると与党が増税に踏み切れない可能性を示唆した。

また、2018年9月には総裁も交代する。「(新総裁は)相当肝が据わっていないと、増税するという形で選挙に突っ込んでいくことはできない。」と小黒氏は指摘した。

「個人消費を伸ばすためにはどうすればよいのか。」と細川氏が質問すると、小黒氏は「経済成長させることが当然重要。また、人口状態の影響もかなりあると思う。」と回答した。高齢者は老後の医療費等の心配があり、若い層に比べてあまり消費をしない。人口が同じでも、高齢者が増えれば消費は落ちていく。全体として消費を増やすためにはやはり経済成長させることが重要だ。「将来への不安から貯蓄している人たちの不安を取り払ってあげるために、社会保障の再建と財政改革をすることが消費を増やす要因になる。」と小黒氏は述べた。

「今の社会保障制度では、人口が減ればもたない。」と細川氏は指摘し、人口を増やしていくことの重要性を訴えた。毎年、人口は80万人も減少している。消費が落ちるのは当たり前だ。「子育て支援も重要。さらに、移民や外国人に来てもらうことを視野に入れなければならない。」と小黒氏は述べた。

この問題は全方位的な視点を持たなければ、解決できないと言える。最後に細川氏は、「自分の将来、子供の将来を考えたときに、今どのような決断をしなければならないかを考えるのが、選挙権を持っている大人たちの大きな責任だと思う。」と話した。

(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2016年7月2日放送 の要約です)



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細川珠生(政治ジャーナリスト)/Japan In-depth 編集部(Aya)

最終更新:7/12(火) 7:00

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