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ポルトガルが狙った膠着状態。大会中の戦術変更。菱形の中盤とスローテンポによる1点勝負【西部の4-4-2戦術アナライズ】

フットボールチャンネル 7/13(水) 10:20配信

 中盤を菱形にした4-4-2でEURO2016を制覇したポルトガル代表。開催国フランスとの決勝戦では、膠着した試合に持ち込み、エデルの一撃で勝利を掴んだ。グループステージで3位だったイベリア半島のチームは、大会期間中にスタイルを大きく変更している。悲願のタイトルをもたらした、その英断とは。(文:西部謙司)

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守備的なスタイルへの変化。南米のような戦いぶり

 ユーロで優勝したポルトガルは4-4-2と4-3-3の2つのフォーメーションを使い分けていた。4-4-2のほうは中盤をダイヤモンド型に組んだ形である。

 ポルトガルはオランダと並ぶウイングプレーヤーの宝庫なので3トップのイメージが強いが、菱形MFの4-4-2もある。ジョゼ・モウリーニョ監督下でCL優勝したときのFCポルトが4-4-2を使っていた。ベンフィカもよくこの形を使っていて、ポルトガルでは馴染みのあるフォーメーションなのだ。

 ところが、同じ4-4-2でもユーロのポルトガルはグループステージとノックアウトステージでは全く違う戦い方をしていた。当初は高いボールポゼッションを軸にした攻撃的なプレースタイルだったが、途中から人選を代えて守備的なスタイルに変化しているのだ。

 開催国フランスを破った決勝では、まるで南米のチームのようなプレーぶりだった。南米といってもブラジルやアルゼンチンの代表チームではなく、かつてトヨタカップで来日してヨーロッパ王者に勝利したり、互角の戦いをみせたリベルタドーレス杯王者のようなスタイルである。

 情報量が圧倒的なヨーロッパ勢に比べると、南米勢はチームも選手もほとんど知られていなかった。ところが、いざ対戦してみると“無名”の南米クラブはのらりくらりとヨーロッパの攻勢をかわしながら、したたかな試合運びと鋭いカウンターアタックで対抗していた。

試合を“殺す”つもりだったポルトガル

 今回のポルトガルも、対戦相手の勢いを吸収するような戦いぶりが印象的だった。ブラジルとの関係が深く、ブラジル人選手は外国人枠にカウントされていない。プレースタイルにもブラジルの影響が表れている。

 とにかくプレーのテンポを上げない。基本的にパスは足下から足下、FWも引いて受ける傾向があるので中盤は渋滞を起こしがちなのだが、行き詰まりかけても失わない。技術の高さはもともとヨーロッパでも屈指、守備的なスタイルにしてからは自陣でも失わないプレス回避能力の高さがスローテンポの維持に寄与していた。

 深く引いて守る以上、ボール奪取地点も自陣深くが多くなる。ポゼッション型の相手は、そこでハイプレスをかけて早期のボール奪回を狙う。ポゼッション→ハイプレスの循環でリズムを作ろうとする。しかし、ポルトガルは相手のプレッシングをかわし、あるいはファウルをもらい、いったんは押し返すことができた。

 サンドバッグ状態に陥らず、試合のテンポも下げた。ゲームのテンポが上がらないので、どちらもスペースを空けることのない得点の入りにくい展開になるのだが、ポルトガルはそれでいっこうに平気だった。むしろ最初から膠着状態を望んでいて、試合を殺すつもりなのだ。ひたすら時間を浪費させて0-0の状態を長引かせる。1点勝負なら何が起こるかわからない。

 個々のテクニックは高く、パスワークも上手いポルトガルは本来攻撃型のチームである。しかし、その特徴を持ちながら守備的なプレーをしたときには南米勢のしたたかさが香るヨーロッパでは珍しいタイプのチームになっていた。

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最終更新:7/13(水) 10:49

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