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中国の外交は“中国版ネトウヨ”の機嫌とりだ

JBpress 7/13(水) 6:15配信

 中国は事あるごとに日本に対して「歴史に学べ」と言う。しかし、今、その言葉はそっくり中国に返してやりたい。昨今の情勢を見ていると、歴史に学ばなければならないのは中国の方だからだ。

■ “負け組”が推し進めた戦争

 中国が言う「学ぶべき歴史」とは、日中戦争である。日本が中国を侵略し多大な迷惑をかけた。この事実を否定するつもりはない。そして日本はこれまで何度も謝ってきた。

 歴史に学んだからこそ、戦後は1度も海外に派兵していない。平和憲法を順守し、あまりに順守し過ぎて同盟国である米国の戦争も手伝わない。このような事実を見る時、日本は歴史によく学んだと言ってよい。

 戦前、日本がアジアに居丈高な態度に出た背景には、黒船が来航して以来、西欧に対して抱いてきた劣等感があった。その劣等感は日清日露の戦役に勝利し、かつ第1次世界大戦の戦勝国になったことで大いに払拭された。

 「一等国日本」、これは1920年代に日本においてよく使われた言葉だそうだ。一等国になると、西欧への劣等感がアジアへの優越感へと変わった。その自信がアジアへの侵略につながった。

 政治が軍部をコントロールできなかったために戦争になったとも言われるが、そもそも戦前の政治は、“国際協調派”とアジアへの“膨張主義派”に二分されていた。

 国際協調派は昭和天皇や西園寺公望を中心とした宮中、外務省を中心とした高級官僚、高橋是清に代表される経済界、そして条約派と言われた海軍の軍人。一方、膨張主義派は陸軍、民間の右翼、その背後には大勢の貧しい庶民や農民がいた。

 国際協調派は戦前における“勝ち組”。エリートだから体制が維持されれば、自然に恩恵を受けることができる。洋行経験者も多く、欧米の実力を知っていた。

 一方、膨張主義派の多くは“負け組”。昭和恐慌に苦しんでいた庶民は、戦争でもなんでもよいから現状が変更されることを望んでいた。そして農地を持たない農民(小作人)は満州に入植し自作農になることを夢見ていた。

 5.15事件、2.26事件などのクーデターが頻発し、気がつけば軍部が実権を握り、そして戦争に突入してしまった。

 その戦争責任を軍部だけに押し付けるのは正しくない。それは庶民が戦争を望んでいたからだ。民衆の気持ちに沿う記事を掲載すると売れるから、朝日新聞や毎日新聞の前身は戦争を煽る記事を掲載し続けた。時流に悪乗りした新聞も悪いが、その背後には戦争による現状打開を求めた戦前の”負け組”がいたことを忘れてはならない。

■ まるで戦前の日本

 戦前の日本について長々書いたが、それは、その状況があまりに現在の中国に似ているからだ。

 アヘン戦争以来、中国は西欧に対して強い劣等感を抱き続けてきた。だが、その劣等感をここ30年ほどの経済成長によって払拭することに成功した。中国のGDPは世界第2位。“一等国”である。周辺の国を見下している。現在の中国人の意識は1920年代の日本人によく似ている。

 格差社会であるところもそっくりだ。奇跡の成長は、その波にうまく乗った人々と乗り損ねた人々の間に大きな溝を作り出した。共産党幹部や彼らに有力なコネを持つ人々は豊かになったが、一般大衆はいまだに貧しい。特に農民戸籍の9億人は社会の底辺に押し込められて、豊かになる道を閉ざされてしまった。

 そんな状況の中で、バブル崩壊の臭いが漂い始めた。黙って共産党の言うことを聞いていれば生活が向上する時代は終わった。大学を出ても、これまでのように高い地位につくことは難しい。中国の大卒の初任給は約4000元(約6万円)。それでも定職につければまだまし。まごまごしていると職にあぶれる。

 そんな状況を反映して政治が二分し始めた。中国にも国際協調派がいる。耳を澄まして聞いていると、日本や米国と仲良くした方がよいと言っている中国人は意外に多い。米国のGDPは世界第1位、日本は3位。日本は近い。米国は太平洋を挟んで対岸。両国とは船舶を使って容易に交易することができる。

 そんな両国と対立してAIIB(アジアインフラ投資銀行)を作り、「一帯一路」などと称して中央アジアの国々とだけ交易してもよいことはない。くたびれるだけ。だが、そう冷静に分析するのは、戦前の日本と同様に一部のエリートだけである。

 多くの庶民は冷静な分析よりも直観を好む。GDPで世界第2位になった中国が外国に頭を下げる必要があるのか。中国には中国のやり方がある。中国の皇帝(習近平)に土下座(三跪九叩頭の礼)をしないような国とお付き合いする必要はない──。中国のネット上にそのような意見が満ち溢れている。

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最終更新:7/13(水) 6:15

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