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なぜエースコックの即席麺はベトナムで大人気なのか?――圧倒的シェアの謎

HARBOR BUSINESS Online 7/13(水) 16:20配信

◆即席麺業界で一目置かれるエースコックの高い商品開発力

 エースコックは大阪吹田に本社を置く、多くの人気商品を持つ即席麺のメーカーです。王者・日清食品を始め、多くのライバルが凌ぎを削る即席麺業界にあって、シェアこそ4位ですが、ユニークな商品開発能力は長年に渡って、一目置かれる存在です。

 その創業は、創業者の村岡慶二が大阪住吉でパンの製造販売を行う龍門製パン所を1948年に、ビスケットの製造販売を行う梅新製菓を1954年に設立したことに端を発し、1959年に『料理上手なコック』という意味の「エースラーメン」を発売、即席麺メーカー「エースコック」の歴史がスタートしました。

 以後、激しい商品開発競争が繰り広げられる業界にあって、同社が業界で初めて作った人気商品やカテゴリも多く、後ほど触れるような数々の人気商品はもちろん、それ以外でも、カレー味の即席麺「カレーラーメン」や餅を入れた「力うどん」等の発売も、実はエースコックが業界初だったりします。

 もちろん、現在でもその開発力は健在で、最近も従来のカップ麺と比べて大幅に塩分を抑えた「かるしお」シリーズが「国立循環器病研究センター」が認定する商品に加工食品として初めて選ばれるなど、年間に投入するアイテムはリニューアルも含めると150以上に達するそうです。

第62期決算公告:4月26日官報94頁より

売上高:(国内のみ)407億100万円

経常利益:(国内のみ)27億9800万円

当期純利益:(国内のみ)21億6900万円

利益剰余金:(国内のみ)140億6500万円

過去の決算情報:(国内のみ)詳しくはこちら http://nokizal.com/company/show/id/1171720#flst

◆「ぶたぶたこぶた♪お腹が空いた♪」でお馴染みのキャラクター

 なお、エースコックといえば「ぶたぶたこぶた♪お腹が空いた♪」のCMでもお馴染み、こぶたのキャラクターが有名ですが、こちらは上記の「エースラーメン」と同時に誕生しており、ラーメン発祥の地、中国では円満と繁栄の象徴とされることに由来しています。

 彼にはちゃんとプロフィールもあり、名前はずばり『こぶた』。1959年4月生まれで、性別はオス。大阪出身で職業はコック、得意料理はラーメンで、いつもフライパンを肌身離さず持っています。歴代のこぶたを比較すると、現在も使われている4代目での進化がすごいですね(笑)ちなみに、あまり馴染まないうちに消えてしまったディズニー風の「幻の5代目」も存在するようです。

◆時代の空気を反映した各時代の看板商品、名作即席麺

 さて、上記で述べた通り、1959年の即席麺参入から、これまで多数の商品を開発してきたエースコック、その歴史に触れる上で、時代ごとの象徴的な4つの看板商品、名作即席麺を取り上げてみたいと思います。

①ワンタンメン(1963年)

「エースコックのワンタンメン♪」のCMの影響もあり、エースコックと言えば、真っ先にこれが浮かぶ人も多そうなワンタンメンは1963年に「即席ワンタンメン」として登場しました。なお、商品名は「ン(運)」が3つも付いて縁起が良いというところに由来します。

 元々、ラーメンの一種とも言えるワンタンの食感に着目し、ワンタンとラーメンの2つの麺を同時に噛みしめることで大きな満腹感を得られたワンタンメンは、まだ皆がお腹を空かせていた時代に爆発的なヒットを記録しました。

 ちなみに、エースコックのワンタンメンの独特の風味は、松茸フレーバーによるものであり、発売から50年以上経った今も地域によっては販売実績で、同じくロングセラーのチキンラーメンを抜くこともある、看板にふさわしい商品となっています。

②わかめラーメン(1983年)

 70年代に入ると、いよいよ「カップヌードル(日清食品、71年)」や「カップスター(サンヨー食品、75年)」といったカップ麺の時代がやってきました。そして80年代に進み、バブルの匂いが漂う頃になると、即席麺業界に更に新たなトレンドが訪れます。それが「中華三昧(明星食品、81年)」に代表される高級路線です(ちなみに、中華三昧のキャッチコピー『中国四千年の味』を考えたのは、当時売り出し中の若手だった糸井重里氏)。

 最初は売れるわけがないと思われてましたが、さすが時代は80年代、これが予想以上に売れたことで「本中華(ハウス食品、83年)」なども続くことになります。そんな中、70年代のカップ麺の波にも高級路線にもいまいち方向性を見出せていなかったのがエースコックでした。

 業績が低迷する中、エースコックはあえてトレンドの高級路線に背を向けて独自の健康路線を模索します。そこで、着目した食材がミネラルや食物繊維を豊富に含む「わかめ」でした。とはいえ、当時、業界内では「わかめの和風のイメージとラーメンは合わない」というのが支配的な意見でした。

 しかし、エースコックの商品開発チームは、トレンドの高級食材に頼るのではなく、コクのある魚介エキスのスープと同じく健康食材のゴマを香ばしい直火焙煎タイプしにして、わかめと合わせることで、見事にオリジナリティ溢れる名作「わかめラーメン」を生み出したのです。

③スーパーカップ1.5(1988年)

「わかめラーメン」のスマッシュヒットこそあったものの、本格的な業績回復には更なる打ち手が必要だったエースコックが、80年代の最後に送り出した起死回生の新商品が、業界初の大盛りカップ麺「スーパーカップ1.5」でした。

「昔と比べて体格が大きくなった若い人達の食欲を満たすには、従来の量では物足りないはずだ」という2代目の現社長の仮説の元、構想から2年かけて実現した「スーパーカップ1.5」はなんと発売から半年で1億食、160億円を売り上げます。

 ただ『大盛り』や『デカい』と表現するのではなく、あえて『1.5』という記号的表現を用いた商品名も功を奏し、業界で前代未聞の数字を叩き出したスーパーカップは、これまでの鬱憤を晴らすかのように、翌89年にも立て続けに新作を出し市場に定着、見事に現在に至る人気商品となりました。

④はるさめヌードル(2002年)&スープはるさめ(2005年)

 わかめラーメン、スーパーカップ1.5の大ヒットにより、見事に復活を遂げたエースコック、90年代には再び業績を伸ばしていきますが、2000年代に入ると、今度は世の中のトレンドが生活習慣病対策や低カロリー志向へと向かっていきます。

 そこで、お弁当に野菜が足りない、カップ麺ではカロリーが気になるという顧客のニーズに対して、即席麺業界で新たな主戦場として浮上してきたのが「カップスープ」カテゴリでした。

 中でも、エースコックの代名詞とも言えるワンタンは、食べ応えとカロリーのバランスを取る必要があるカップスープで、重宝される具材となり、00年には東洋水産から「たまごスープワンタン」日清食品から「とんがらしワンタンスープ」が発売されるなど、各社の商品開発競争が激しさを増していました。

 そしてこのトレンドの中、2002年にワンタンメンのエースコックが投入した新商品は、意外にもワンタンではなく「春雨」でした。カップスープではなく「はるさめヌードル」として発売された、はるさめシリーズの、1食70kcalからと低カロリーながら、満足感のあるしっかりとした味は、女性を中心にヒットし、またもや即席麺業界に新しいカテゴリを作り出すことに成功します。

 さらに続けて2005年には、姉妹商品として今度はカップスープ「スープはるさめ」シリーズを発売、こちらがまた、ドラッグストア等を有力販路に加え、はるさめヌードルを上回る大ヒット。発売以来10年以上連続でカップスープ部門売上1位を記録する等、現在のエースコックの屋台骨を支える売れ筋商品となりました。

◆日本を上回る勢いの即席麺消費のベトナムで圧倒的シェアを獲得

 さて、ここまで見てきた通り、創業以来、低迷期も持ち前の柔軟な発想による高い商品開発力で成長を続けてきたエースコックですが、最近では約900億円の売上のうち、実は約半分は海外で、その大半をベトナムであげています。

 軽くベトナムの市場環境に触れておくと、ベトナムの人口は9000万人、平均年齢も若く、元々「フォー」など麺文化も持っている国なので、即席麺のポテンシャルは高かったのですが、現在では即席麺市場は年間50億食にも達しており、これは世界3位の日本の55億食を近いうちに抜きそうな勢いです。

 そのベトナムで、年間30億食と6割にも達する販売実績を持つ、ベトナム最大手の即席麺メーカーこそが、エースコックなのです。エースコックのベトナム進出は、再び業績を伸ばしていた1993年、1995年からはベトナム現地での即席麺の生産・販売を行っているのですが、現在のシェアに至ったきっかけは、2000年に発売された「HaoHao(ハオハオ=好き好きの意味)」でした。

◆もはや活躍は日本にとどまらない、即席麺開発のパイオニア

 エースコックらしく、現地の好みに合わせてエビをベースに作った酸っぱ辛い味が大ヒット、現在では国内の即席麺のうち3食に1食は「HaoHao」であり、知名度もほぼ100%という国民的人気即席麺にまで成長しています。ベトナムの売上の大半もこちらの商品です。

 また、興味深い取り組みとして、2015年には現地で製造した本場のフォーを即席麺化し「Pho・ccori気分(ふぉっこりきぶん)」というブランドで日本での販売を行う、逆輸入戦略も始めています。50年以上に渡って、国内の即席麺メーカーと激しい商品開発競争を繰り広げてきたエースコックが、今度は日本という枠を飛び越えて、どんな新時代の看板商品を送り出していくのか、一カップ麺ファンとして楽しみです。

決算数字の留意事項

基本的に、当期純利益はその期の最終的な損益を、利益剰余金はその期までの累積黒字額or赤字額を示しています。ただし、当期純利益だけでは広告や設備等への投資状況や突発的な損益発生等の個別状況までは把握できないことがあります。また、利益剰余金に関しても、資本金に組み入れることも可能なので、それが少ないorマイナス=良くない状況、とはならないケースもありますので、企業の経営状況の判断基準の一つとしてご利用下さい。

【平野健児(ひらのけんじ)】

1980年京都生まれ、神戸大学文学部日本史科卒。新卒でWeb広告営業を経験後、Webを中心とした新規事業の立ち上げ請負業務で独立。WebサイトM&Aの『SiteStock』や無料家計簿アプリ『ReceReco』他、多数の新規事業の立ち上げ、運営に携わる。現在は株式会社Plainworksを創業、全国の企業情報(全上場企業3600社、非上場企業25000社以上の業績情報含む)を無料&会員登録不要で提供する、ビジネスマンや就活生向けのカジュアルな企業情報ダッシュボードアプリ『NOKIZAL(ノキザル)』を立ち上げ、運営中。

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最終更新:7/13(水) 16:25

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