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“自由”な野村周平と“不自由”な賀来賢人 真逆コンビが描く『森山中教習所』の面白さ

リアルサウンド 7/15(金) 6:00配信

 現在公開中の映画『森山中教習所』で主演を務めた野村周平と賀来賢人のコンビが話題となっている。豊島圭介による同名原作コミックを映画化した本作は、非公認教習所でおこった一夏限定の青春を描く。野村演じる物事に無頓着で脳天気な大学生・清高と賀来演じるクールで根暗なヤクザ・轟木、2人のなんともいえない距離感と、日常感溢れるのにどこかファンタジー的な雰囲気が物語に奥行きを出している。

 物語の始まり方が何と言っても強烈だ。清高が岸井ゆき演じる松田に「やっぱりダメだった」と言い放ち、あっさり別れを告げるシーンからスタートする。いきなり振られる松田も戸惑い混乱するのだが、観ている方も意表をつかれ唖然となる。そして「腹減ったな~」と独り言を呟きながら自転車に乗っていた清高がものすごい勢いで車に轢かれる。「え!?」と思わず声を出してしまうほどのはねられっぷり。運転していた轟木が車から出て来るのだが、びっくりするくらい無表情で落ち着いている。開始早々で清高と轟木の性格が鮮烈に表現され、そこから物語はゆるやかにまったりと進んでいく。

 同じ高校に通っていたが、特に親しかったわけではない清高と轟木が、奇妙な再会を果たし、惹かれあう。今回初共演となる野村と賀来は「映画の中の役の距離感と、リアルな世界での僕たちの距離感がすごくあっていて、それが上手いこと生かされていると思いました。お互い知っているけれども知らないみたいな、微妙な距離感が」「お互い知らなくてもいい部分もいっぱいあると思うし、それがこの距離感なんじゃないかなと思います」(引用:野村周平&賀来賢人、互いの印象は「頭がいい」「得体が知れない」 初共演の“微妙な距離感”に迫る<インタビュー>)と話すようにまさに“独特な距離感”を終始感じさせた。“自由”な清高と“不自由”な轟木。お互いのことは何も知らない。でも、そんな間逆な2人だからこそピタリとはまる。

 賀来は轟木を演じるにあたって苦労した点を「感情をなかなか出さないからロボットみたいになりがちで。でも人間味を出しすぎても役とは違うと思ったので、良い塩梅を探していましたね」(引用:野村周平&賀来賢人、互いの印象は「頭がいい」「得体が知れない」 初共演の“微妙な距離感”に迫る<インタビュー>)と語るように、轟木という人物はあまりセリフがない。そして感情もあまり表に出さない。賀来はそんな轟木を微妙な表情の違いや視線、声のトーン、まとう雰囲気などで絶妙に表現している。

 野村は自他共に認めるほど清高と共通する部分が多かったようで、豊島監督は「顔合わせの時、(野村が)いきなり部屋にバンと入ってきて『この役やりたいっす!僕のままで清高役できますよ』と(笑)。それを見て、面白い人だなって思いました。人との距離感も近くて、その日のうちに一緒にメシ食いに行ったら、『俺頑張るよ!』って肩組まれましたしね(笑)」(引用:映画「森山中教習所」 豊島圭介監督・野村周平インタビュー 「野村くんをこのまま撮れたら、面白い清高になりそうだなって」 - インタビュー&レポート | ぴあ中部版WEB)と明かしている。まさに野村は自由奔放な清高そのもの。野村か清高かわからなくなるくらい自然で違和感がなかった。

 野村は、当時のインタビューで「清高は楽しく演じなきゃいけないなと思ったので、現場のムードを大切にしながら、自分もみんなも楽しくできるように意識しました。あまり作りこまず、現場で感じたものを出していきましたね」(引用:映画「森山中教習所」 豊島圭介監督・野村周平インタビュー 「野村くんをこのまま撮れたら、面白い清高になりそうだなって」 - インタビュー&レポート | ぴあ中部版WEB)とコメント。清高というキャラクターは、明るいが無機質な印象を冒頭で受ける。しかし物語が進むにつれセリフがない場面での表情や仕草で清高なりに抱えているものが見え隠れし、どんどん人間味が増していく。それは野村が演じるのではなく感じたものをそのまま発したからこそ生まれた生々しさなのだろう。

 「リアルに夏休みのひとコマみたいでしたね」と賀来が話しているように、本作には一夏の青春がギュッとつめ込まれている。野村曰く「水風船は本気で遊んでいた」とのことで、はしゃぐ姿や楽しそうな表情がリアルだからこそ輝いて見えた。賀来は、清高と轟木の関係性について「お互いに憧れている部分があるんですよね。この2人の関係性を考えると、ボーイズラブと友情って紙一重なのかなと思ったりもします。お互いを求め合っていて、奇妙だけど成立している。そこが面白いんです」(引用:『森山中教習所』野村周平&賀来賢人インタビュー)と語っている。

 清高、轟木ともに人物の背景やそれぞれの深い部分はほとんど描かれていない『森山中教習所』。だが、作中でたくさんのヒントが散りばめられている。そんな2人が実際はどういうことを考え、何を思っているのか、観客が各々想像できるからこそ面白い。見終わったあとには、夏の終わりのような切なさが芽生える。地味ではあるが輝きを放つ一夏を、野村と賀来が演じた清高と轟木だからこそ、非現実感と現実感をあわせ持って描けたのだろう。(文=戸塚安友奈)

リアルサウンド編集部

最終更新:7/15(金) 6:00

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