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吉野家がラーメン店を買収した理由。 (多田稔 中小企業診断士)

シェアーズカフェ・オンライン 7/15(金) 5:40配信

牛丼大手の吉野家ホールディングスが、人気ラーメン店「せたが屋」などの運営会社を子会社化する、と発表したのは6月27日でした。

その後の解説やネットの反応を見ると、この両社の組み合わせには懐疑的な意見が多いようです。「うまい、やすい、はやい」が信条の吉野家と、食材や調理法に独自のこだわりを持つせたが屋では経営方針の方向性が違うのではないか、というのがその理由です。

しかし、私は今回の買収劇に、吉野家経営陣の確固たる長期戦略を見ました。今回はそのお話をしていきます。

■吉野家が直面する課題
吉野家をはじめ牛丼業界は近年、値引きに頼るのを避けるため、商品単価や客単価の向上を模索してきました。吉野家で言えば、野菜を使った「ベジ丼」など新メニューの投入やアルコール類の提供をメインにした「吉呑み」のサービスに、その努力を見ることができます。

しかし、ここに来て消費環境に再デフレ化の兆しが出て、値引き戦略を取らざるを得ない状況になりつつあります。6月の牛丼大手3社(吉野家・松屋・ゼンショー)の既存店売上高は3社とも増収となりましたが、その要因のひとつは値引きによる客数増加であったと報じられています(日本経済新聞 「牛丼3社、そろって増収」 2016/07/06)。

値上げを瀬踏みして失敗→値引きして売上回復、というスパイラルから抜け出すのは牛丼業界共通の課題ですが、特に吉野家の場合は切実な事情があります。営業利益率を大手3社で比較すると、松屋が4.4%、ゼンショーが2.3%であるのに対し、吉野家は0.9%にとどまっています。利益率が低いということは少しの売上低下で赤字になるリスクが高いということで、勢い、売上高の確保にはナーバスになります。

読者の中には、「値引きして売上が回復するならそれでいいじゃないか」と思われた方もいるかもしれません。しかし、値引き戦略は取り扱いを間違えると大変危険な施策になるのです。

■10%の値引きは、10%の客数増でカバーできるか?
例えば、売価1杯400円、コスト1杯300円の牛丼が100食売れたとします。この場合、利益は(400円-300円)×100食で1万円となります。

ここで、売価を10%値引きして1杯360円にしたとします。この条件で値引き前の利益1万円を確保するためには、販売数を何%増やさなくてはいけないでしょうか?

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最終更新:7/15(金) 5:40

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