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ポルトガルがEUROを制した4つの理由。美しさよりタフさ優先、ピッチ内外の大改造でたくましく

フットボールチャンネル 7/15(金) 10:00配信

 EURO2016を制したポルトガル。ロナウドというスターを擁するが、決して本命ではなかった同国はなぜ優勝できたのか。ポルトガルで長く記者として活動し、この国のサッカーを誰よりも熟知する記者が、4つのポイントで解説する。(文:鰐部哲也)

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美しくないが、タフだったポルトガル

 ポルトガル。過去の栄光にしがみついて現実をなかなか直視できない国。

 大航海時代に世界の覇権を握った遥か昔の栄華を持ち出すのはお決まりで、国民的スポーツであるサッカーもまたしかりである。25年前の自国開催でのワールドユース(現U-20W杯)二連覇が最大の語り草になってきた。

 しかし、長らく国としての自己実現を経験していない“サウダーデ”(郷愁)に浸り切った最果ての小国は、EURO2016の優勝によって栄光と自信を取り戻したのである。

 今大会、アウトサイダーばかりとの対戦にも関わらず、たった2勝(4分け)で決勝まで勝ち上がってきたポルトガルに圧倒的な強さは感じられなかった。しかし、勝負強かった。ひとつの敗北も喫しなかったし、真の意味で強豪国との初対戦となったフランスとの決勝では、終始劣勢で2倍となる18本のシュートを弾雨のように浴びながら勝ち切った。

 かつて「黄金世代」と呼ばれたクラッキたちが奏でた美しく脆いパスサッカーの片鱗はどこにも残っていなかったが、最後まで見てくれの悪いタフなカウンターサッカーでアンリ・ドロネー杯を初戴冠した(編注:EUROの優勝トロフィーは欧州サッカー連盟(UEFA)の初代事務総長で、この大会の創設に尽力したフランス人アンリ・ドロネー氏に因んでいる)。

 それでは、なぜポルトガルは優勝できたのか? その要因を4つのポイントにフォーカスしながら解析していこう。

その1:サントス監督による巧みなチーム改造

 まず、監督のフェルナンド・サントスの選手選考と選手起用の柔軟さを挙げたい。

 前任者のパウロ・ベントはスタメンを固定。システムも4-3-3に固執し、不利な状況下で選手交代も含め効果的なカンフル剤を打てずに局面を打開できなかった。

 翻ってサントス監督は、今大会の23人のメンバーにベテランと若手、国内組と海外組を絶妙なバランスで選考した。ミゲル・ヴェローソやラウール・メイレレスらの代表で中心的役割を担ってきた選手を外し、2年前のブラジルW杯メンバーから14人もの選手を入れ替えた。ビッグネームはクリスティアーノ・ロナウドのみ。

 小粒だが誰が出ても一定レベルのパフォーマンスを発揮できる実力差のない選手を揃え、調子が悪い、機能していないと見るや試合ごとにスタメンを変えた。グループステージではゲームメイカーだったジョアン・モウティーニョとアンドレ・ゴメスは、決勝トーナメントではレナト・サンチェスとアドリエン・シルヴァに取って代わられ、守備の要であるCBもスピードに衰えが目立ち、ボールを奪われることの多かったベテランのリカルド・カルヴァーリョがジョゼ・フォンテに取って代わられている。

 ロナウド以外に不可侵の選手を作らなかった監督の選手起用が奏功したと言えよう。サントス監督は、かつて国内三大クラブ(ポルト、スポルティング、ベンフィカ)を指揮した重鎮だが、母国では国民が嗜好する攻撃的サッカーと自分の志向する現実的なサッカーとのジレンマに陥り、苦虫を噛みつぶしたような表情が目立った。

 しかし、ギリシャ代表監督として守備的なカウンターサッカーをせざるを得ない状況で、同国を前回のEUROでベスト8、前回のW杯で初のベスト16に導いたことで自分の志向する守備的なサッカーに絶対的な自信を深めたのだろう。

 今大会の試合前日の公式会見で「たとえ見栄えの悪いサッカーと非難されようとも結果を第一に求める」と繰り返し強調していたのもその証左であろう。電気通信技師という異色の肩書きを持つことから、「エンジェネイロ(技師)」の愛称で呼ばれているサントス監督。正にポルトガル代表を改造することに成功した“技師”と呼ぶにふさわしい手腕だった。

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最終更新:7/15(金) 10:11

フットボールチャンネル

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