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映画『AMY エイミー』:世界中を虜にした歌姫の真の姿を描いたドキュメンタリー

ローリングストーン日本版 7/15(金) 18:00配信

『AMY エイミー』が描き出す、世界中を虜にした歌姫の真の姿とは。
27歳でこの世を去ったエイミー・ワインハウスの壮絶な人生と悲痛な最期は、これまでにも幾度となく語られてきた。しかしアシフ・カパディアが監督を務めた、主観を排除した事実のみで構成された本ドキュメンタリーは、彼女の知られざる一面を見事に捉えている。本作では北ロンドンに生まれたいたずら好きなユダヤ人の少女が、エラ・フィッツジェラルド、セロニアス・モンク、トニー・ベネットといった、ジャズ / ソウル界の巨匠たちと並べて語られるほどの存在へと成長するまでの物語が描かれる。

【動画あり】映画『AMY エイミー』:世界中を虜にした歌姫の真の姿を描いたドキュメンタリー

本作ではドキュメンタリーにありがちな、真実の歪曲が徹底的に排除されている。名声の重圧に苛まれ、2011年に急性アルコール中毒でこの世を去ったワインハウスは、同世代の若者たちがそうするように、記憶に残る瞬間の数々や日々の些細な出来事を様々な形で残していた。編集を担当したクリス・キングの手腕により、エイミーの家族や仲間たち、信頼を寄せたマネージャーのニック・シマンスキー、親友のジュリエット・アシュビーとローレン・ギルバートらとのプライベート写真や映像の数々は、物語を構成する重要な要素となっている。メディアによって徹底的に露出され続け、大衆を遠ざけたエイミーの若さゆえの未熟さが、本作では残酷なまでにリアルに伝わってくる。本作において、極限まで追い詰められていた娘を守ろうとしなかった父親のミッチ・ワインハウスは、責められるべき存在として描かれる。またエイミーがコカインとヘロインに依存するきっかけを作り、彼女を利用し続けた元夫のブレイク・フィールダー・シビルは、彼女の死に対して誰よりも重い責任を負う人物として描かれている。

決して色褪せることのない輝きを描いた作品/予告編動画はこちら

本作は決して、彼女を悲劇のヒロインとする過剰なドラマ性に頼ろうとしない。本作で描かれるのは、燃え盛る炎にゆっくりと吸い寄せられていく、彷徨える蛾のような彼女の姿だ。そしてエイミーの音楽は、その儚い物語の一部として極めて効果的に使用されている。若かりし日の彼女から親友のギルバートに向けられた『ハッピーバースデー』、そして死の1ヶ月前にベオグラードで行われた、酩酊状態でステージに立ったコンサートでの『リハブ』『ラヴ・イズ・ア・ルージング・ゲーム』を歌う姿が、歌詞とともにスクリーンに映し出される。本編の終盤に映し出される、アルコールとドラッグ、そして摂食障害で消耗しきった彼女の姿には心を痛めずにいられない。しかしどこまでもリアルに描かれる、生身の人間としての彼女の姿から、視聴者は目を背けることはできないだろう。彼女の言葉、音楽、留守電に残された伝言、ホームビデオ、彼女を愛した友人や家族、彼女を追い詰めた人々、そして決して色褪せることのない輝き。本作はエイミー・ワインハウスという存在に魅了されたすべての人々の、心の奥深くに訴えかける。

『AMY エイミー』
★★★1/2 主演:エイミー・ワインハウス 監督:アシフ・カパディア
7月16日より角川シネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷、角川シネマ新宿他全国ロードショー
http://amy-movie.jp/

Translation by Masaaki Yoshida

Peter Travers

最終更新:7/15(金) 18:00

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