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「反安倍」や「反東京」の候補に東京は任せられない

JBpress 7/15(金) 6:10配信

 東京都知事選挙が告示された。私はもう25年、東京に住んでいる都民だが、都知事選のたびにまともな政策論争が行われず、人気投票のような形で知事が決まる傾向が強まってきた。これにはいい面と悪い面がある。

 いい面は石原慎太郎氏や猪瀬直樹氏のように、官僚機構や都議会にしがらみのない人が選ばれることだが、悪い面は青島幸男氏のように行政経験がないため、官僚のロボットになってしまうことだ。今回、有力候補とされる3人は、それぞれに長所と短所がある。

■ 末期ガン患者の擁立は人命軽視

 最悪なのは、76歳の鳥越俊太郎氏(野党4党推薦)だ。彼は11年前に大腸ガンの手術を受けて「ステージ4だ」と宣告され、その後もガンが転移して合計4回の手術を受けたことを明らかにしている。

 ステージ4のガン患者の5年生存率は15%。ガンが4カ所に転移して今も生存しているのはほとんど奇蹟だが、彼が知事の激務に耐えて任期4年をまっとうできるとは思えない。彼を担ぎ出した野党4党は、彼の寿命を縮める人命軽視である。

 彼の立候補記者会見でも「私は昭和15年生まれで終戦のとき20歳だった」とか、政策は「これから考える」といい、強調したのは「改憲の流れを東京から戻す」とか「安倍首相はヒトラーと同じだ」といった話ばかりだった。

 これは2年前の都知事選に出馬した細川護煕氏や宇都宮健児氏と同じく、反原発という国政の問題を主張する舞台に都知事選を利用しており、都民を愚弄するものだ。当選しても、青島以下の知事になるだろう。

 しかし保守が分裂して野党が一本化したので、勝算はある。このパターンに近いのは保守から4人も立候補した1999年だが、民主党推薦の鳩山邦夫氏は85万票にとどまった。これに対して保守票は合計382万票で、石原慎太郎氏の166万票は個人的な人気が大きいとしても、200万票以上の基礎票がある。

 最近で野党推薦の候補が最も善戦したのは、2007年の浅野史郎氏の170万票だが、彼は知事経験もある地方行政の専門家で、そういう票は今回は増田寛也氏に行くだろう。鳥越氏は100万票ぐらいが精一杯ではないか。いずれにせよ健康問題を考えると、出馬を辞退することが本人のためだ。

■ 「反東京」の増田氏が都知事に立候補して何をするのか

 常識的には、最有力なのは自民・公明推薦の増田氏だろう。元建設官僚で、岩手県知事や総務相の経験もある。政策も待機児童の解消や地震対策など手堅い。

 問題は彼の持論が、東京一極集中反対だということだ。彼が座長をつとめる民間研究機関「日本創生会議」は、東京など都市圏への人口流出が進むと、2040年には全国896の市区町村が「消滅する」と警告し、これが安倍政権の「地方創生」と称するバラマキ財政の根拠になった。

 さらに彼は総務相だった時代に「地方法人特別税」という制度を創設し、都税を毎年2000億円も地方に分配した結果、今までに1兆円以上の都税が地方に分配された。今回の立候補会見で、これまでの政策との整合性を質問されると「これからは東京と地方がともに繁栄する共生社会を実現する」と弁解したが、意味不明だ。

 彼の「地方消滅」論は、国土政策としても誤りだ。住民は都市に移住するので、消滅するのは地方自治体であり、困るのは役人だけだ。人口が減少する日本で、今までのように国土の隅々までインフラ整備をすることはできない。投資は中核都市に集中し、東京は世界の大都市と競争すべきだ。

 なぜ自民党は、こんな「反東京」政治家を候補に選んだのだろうか。

 それは彼が舛添要一前知事と同じく、都議会や官僚機構のみこしになるタイプだからだ。岩手県知事の時代に、彼は県債の残高を7000億円から1兆2000億円へと70%も増やした。元建設官僚だけに、ハコモノが好きなのだろう。

 猪瀬前知事は、増田氏を担ぎ出した張本人は自民党東京都連の内田茂幹事長だという。彼は東京の隅々まで利権の網を張りめぐらし、猪瀬氏がそれを是正しようとすると激怒し、都知事選でも都連は推薦しなかった。増田氏は都連に恭順の意を示したので、舛添氏と同じく「みこし」になると見たのだろう。

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最終更新:7/15(金) 10:15

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