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DeNA戸柱、1年目から正捕手に定着できた理由――幸運だったラミレス新監督の方針

ベースボールチャンネル 7/16(土) 17:00配信

監督推薦で1年目からオールスター

 7月4日に発表されたオールスターゲームの監督推薦選手の中に、横浜DeNAの司令塔・戸柱恭孝の名前があった。ルーキーはファン投票で選出された高山 俊(阪神)と二人だけという栄誉に、球団を通じて次のようなコメントを出した。

「凄くうれしいですが、一番はビックリしました。セリーグの有名なピッチャーがたくさん出場されますので、機会があれば全員のボールを受けてみたいです。ルーキーなので元気を出して頑張りたいと思います」

 近年のプロ野球では、捕手をツープラトン起用するチームが多い。先発投手との相性、打撃の調子など、様々な要素を考慮して捕手を使い分けているが、一方では辛抱強く正捕手を育てられない傾向を懸念する声もある。

 そんななか、今季のセリーグでは、前半戦終了時点で中村悠平(東京ヤクルト)の85試合に次ぐ75試合にマスクを被るなど、戸柱が「正捕手」と言っていい実績と経験を積んでいる理由はどこにあるのだろう。

 今季から横浜DeNAを率いることになったアレックス・ラミレス監督は、久しく正捕手が不在となっている状況について「捕手はレギュラーを固定し、バックアップと二人体制にするつもり」と明言。レギュラーの条件として、捕球とスローイングの正確性、本塁上の守備力を挙げ、黒羽根利規、嶺井博希、高城俊人、戸柱の4人を春季キャンプから競争させた。そして、オープン戦に入る頃には戸柱をレギュラー、高城をバックアップと決断する。

向上心と素直さが成長へつながる

 戸柱にとって幸運だったのは、インサイドワークと打撃面という、プロでの経験がものを言う要素が比較ポイントにならなかったことだ。配球はスコアラーが集めたデータに基づき、難しい局面ではベンチから指示するというラミレス監督の方針により、経験しながら学べるスタイルだったことで、自身の持ち味をアピールすることに専念できた。また、捕手にも打力を求められたなら、左打ちの戸柱にこれほど多くの出場機会は与えられなかったのではないか。

 それに対して、キャッチング、スローイング、フィールディングは社会人を経ている分、ルーキーと言えども完成度は高い。実際、社会人時代にはプロのスカウトから「投手への返球は横着して座ったままではなく、一球ごとに立ち上がって投げなさい。二塁へのスローイングがシュート回転しても、プロの二遊間ならタッチでカバーしてくれる」といったアドバイスを受け、そうした部分に磨きをかけた。

 そして、何より戸柱の成長を支えているのは、「うまくなりたい」という向上心と素直さだろう。プロ入り後はなぜかフライを捕れなくなり、落球してしまう無様な姿を何度か見せているが、毎日のように居残りでフライ捕球の練習を課されても、必死に取り組んでいる。

「バッティングもルーキーにしては頑張っていますが、オールスターに出る選手としては物足りない数字。戸柱には普段から容赦なく罵声を浴びせていますけど、できるようになろうという姿勢は強く感じられる。そうやって少しずつ、チームメイトの信頼も得られていますね」

 打撃を指導する坪井智哉コーチも、戸柱の前向きさについてはそう高く評価している。

 厳しいプロの世界では、心技にわたって「これだけは誰にも負けない」というプライドを持つことが大きな飛躍につながると言われる。だが、その一方では自信を持ってきた技術や考え方の修正を指摘されて心を閉ざし、すなわちプライドが邪魔をして成長できない若手選手も少なくない。

 ドラフトで複数の球団からリストアップされ、ラミレス監督の横浜DeNAに指名されたのが運の強さなら、自分の弱点さえ曝け出して一から大成しようとしているのが戸柱の強みである。12球団で唯一クライマックスシリーズを経験していないチームで、ルーキーの司令塔が初進出に貢献できるか。その過程でどこまで成長するのか、ペナントレース後半も注目してみたい。


横尾弘一

ベースボールチャンネル編集部

最終更新:7/16(土) 17:00

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