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警察や入管はSNSを監視中!? SNSの書き込みを理由とした入国拒否が増加中

HARBOR BUSINESS Online 7/18(月) 16:20配信

 フェイスブックやLINEなど、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)によって人間関係が実生活の行動範囲外にも広がっている現代。世界中の人と繋がることができるようになり、まさにネットの意義が十二分に発揮されているが、逆にネットの発達で急速に世界の環境が変化してしまった結果、それについていけていない人が多いのも事実だ。

 例えば個人情報を知らずに晒してしまっていたり、仲間内で楽しむためにアップしたつもりが公開設定を誤って多くの人の目に留まってしまう。しかも、それが法に触れる行為だった場合、たくさんの人に攻撃される「炎上」が起こったり、実際に官憲が動き出すこともある。

 一般企業でさえ採用前にネット検索をかけてSNSをチェックするといわれる昨今。実際に世界に目を向けてみると、SNSの内容から行動を監視している警察などの捜査機関も増えている。

 東南アジアのタイでは国王に対する悪口などは不敬罪に問われ、ネット上にそういった書き込みがないか、政府側は目を光らせている。さらに、タイ人だけでなく外国人も対象に様々な不法行為にも注意を払う。飲食店などの違法営業取り締まりではSNSが利用される。タイはバーなどは深夜2時までしか営業できないが、さすがに客に向かって帰れとは言えずに明け方まで隠れて飲ませる店も少なくない。それを警察がしっかり見ていて、悪質な場合は摘発をすることがある。日本人が日本語で書いているSNSも監視しているようで、外国語であっても証拠集めのツールとして役立っているようだ。

 法に触れる行為を自分で自慢げに晒したために逮捕されるのならば自業自得だが、SNSが恐いのは、自分の知らないところでその情報が出回っていることだ。先のバーなども客が勝手に写真と記事をアップしたものが官憲の目に留まることもあり得る。

 そんな風にしてアメリカから入国拒否を受けてしまった日本人がいる。静岡と東京を中心に活躍するタトゥーアーティストKrazy-K氏だ。

◆日本人彫師が突然の米国入国拒否

 タトゥー文化の最先端アメリカで、Krazy-K氏は黒インクだけの濃淡で表現をするブラック&グレーというジャンルを専門に勉強し、高い評価を受けている。そのため、友人もファンもたくさん現地にいる。そんな彼が今年初頭にアメリカに出かけた際、突如入国拒否の宣告を受けてしまった。

「不法就労の疑いがあると言われました。正直、心当たりはなくはなかったのですが、そんなことはないと食い下がりました」

 アーティストであることもあり、SNSはフェイスブックやインスタグラムなど「Krazy-K」名義で各種やってはいるが、法に触れるようなことをしているわけでも、アップされているわけでもない。そもそも「Krazy-K」は当然ながら活動名なので、全身に刺青があって目立つ風貌であるのは否めないが、パスポートの本名から彼が「Krazy-K」であると推し量れるものではない。

「しかし、審査官は、おまえはKrazy-Kだ、と断言したんですよ。どうやらファンの誰かがSNSに私の彫った作品をアップしていたみたいで、入国管理局はそれを把握していました」

 何度か知人のタトゥーショップでファンや友人に彫ったことがある。Krazy-Kの名はブラック&グレーの世界では有名で、本人に彫ってもらったファンはその大感激を伝えるためにフェイスブックにアップした。それが監視対象になっていたというわけだ。

「友人のショップで彫ったのがまずかったのですが、あくまでも勉強のためと、友人やファンへの感謝の意を込めて彫らせてもらっただけで報酬を得てはいません。その点を何度も説明しましたが、まったく聞き入れてもらえませんでした」

◆フェイスブックの画面をつきつけられて

 実際にアメリカの入管では以下のような流れで手続きが取られた。

「通常の入国審査場から大部屋に連れていかれました。ほかに50人ほどの旅行者がいて、5つあった各ブースでひとりずつ念入りに質問されていました」

 ここで待機させられている間は、スマートフォンやタブレットなどに触ることも禁止で、見つかると一時的に没収されてしまう。しかも、ほぼ法的に拘束されているも同然のため、トイレに行くことすら許可制になるという。

「私が呼ばれるまでに3時間近くかかったと思います。私の番になって席に着いたのですが、入国審査官が二人で対応してきて、一人は旅の目的や滞在期間などありきたりな質問をするのですが、もうひとりは彼自身が所有しているスマホを触っていて、突然フェイスブックの画面をこちらに見せてきました」

 審査官は「これはおまえだろ?」と言う。しかも、Krazy-Kと呼ばれていることやどこのショップにいるかなど、すべてがお見通しの状態だったという。その後、鍵つきの個室へ連れていかれ、そこでは入国審査官二人がパソコンとスマホでフェイスブックをくまなく見ている。「これは誰だ」、「これはタトゥーショップだな」などとかなり細かいところまでチェックされた。

「私は、カネは取ってない、ただ勉強しに来ているだけだ、と言ったのですが、まったくこちらの話を聞きません」

 そして、独居房に送られた。その際、私物――手荷物や携帯電話、ジャケット、さらに靴ひもやパンツの紐まで没収されたという。私物は帰国時にまとめて返してくれるが、完全に犯罪者扱いだった。

「何回か個室に呼ばれ、指紋をとられたり書類にサインしたり、一通りの手続きが終わってから自腹で帰国のチケットを購入しました」

 あとは帰国便の時間まで雑居房で待機し、搭乗時間になると係官に連れられてゲートへ向かった。

 どの国においても入国審査官には入国の可否を決める絶対的な権限がある。例え信頼度の高い日本のパスポートを所有していようが、入国ビザを取得していようが、審査官個人の判断で拒否ができる。極端な話、機嫌が悪くて単に気に入らないから拒否をしている可能性もあり、しかし誰もそれに逆らうことはできない。

 今回のKrazy-KはSNSに足下を掬われてしまった。しかも、自分が書いたものではないSNSの投稿によって、である。

「フェイスブックは日本を出るときに消してればよかったのかなとも思いますが、タグ付けやほかの人がアップした写真で結局ダメだったのだろうとも思います。私の友人であるアメリカ人彫師も、ドイツでフェイスブックを見られて入国拒否されたことがあります。オーストラリアに行ってダメだった友人もいます。フェイスブックって実名登録が当たり前じゃないですか。タグ付けなどで必ずどこかで繋がってしまい、私も友人もすべてがバレてしまったパターンです」

 友だち申請やタグ付けなどをよく把握しておけば問題解決できそうだが、交流が広がれば広がるほど本人がどうこうできるものではなくなる。最近は写真を自動判別して候補者名を挙げてくるほど画像処理の精度も上がっている。特にアーティストだとファンも含めれば繋がりが数千人にもなる。はっきり言って防ぎようがない。

 恐らく今後もこういった理由で入国拒否を受ける人が増えていくに違いない。海外旅行好きや国際的なビジネスマンは今後SNSの使い方をよりシビアに考えなければならないことをKrazy-Kのケースが示しているのかもしれない。

<取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:@NaturalNENEAM)>

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:7/18(月) 16:20

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