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平和という季語があってもいい。一日一句、「平和の俳句」 『金子兜太 いとうせいこうが選んだ「平和の俳句」』 (金子兜太・いとうせいこう 選)

本の話WEB 7/20(水) 12:00配信

忙しくても1分で名著に出会える『1分書評』をお届けします。
今日は俵万智さん。

 新聞の1面に、読者から投稿された「平和の俳句」が毎日掲載される。選者は金子兜太といとうせいこう。画期的なこの試みの1年分をまとめたものが本書だ。各句には、選者のひとこと評がついており、鑑賞の理解を助けてくれる。

 投稿者は3歳から106歳まで。47都道府県だけでなく米国、韓国、タイなどからも寄せられたという。その数、1年間で5万7000余りというから、すごい盛り上がりだ。

平和とは一杯の飯初日の出 浅井将行 18

 1月1日の句である。一杯の飯が、健やかに食べられること、そこから平和が始まる。いや、そこからしか始まらない。

 いとうせいこうは「まずささやかな満足が個人にある。それなしに国の平和などない。」と評に言う。短いが、平和の本質をついた言葉だ。いっぽう金子兜太は「浅井君は毎日のご飯に感謝し、その毎日の平和を守る覚悟だ。」と、初日の出に寄せる決意を読み取る。

ふざけるなオレはおまえの銃じゃねぇ 石川芳子 61

 こんな強い怒りの句もある。人間を銃のように扱い、その犠牲のうえに築かれる平和などあるはずがないだろう。

寒いほど粘るんどすえ九条ねぎ 島田章平 68

 こちらは、なかなかしたたかなユーモアを感じさせる一句。九条ねぎの「九条」は、もちろん憲法九条に掛けている。

「あの日から」「あの日」をぼくらは知りたくない 佐伯遥菜 11

 大人たちが言う「あの日から」。6月23日、8月6日、8月9日、8月15日、9月11日、3月11日…。あの日は、さまざまに考えられるが、佐伯さんは、そんなふうに言わねばならない「あの日」など、持ちたくないと思っている。こんな言い方で、未来への不安を表現できるのかと胸を衝かれた。

「平和を願う気持ちを五七五で」という決まりしかないので、季語の入っていない句も多い。が、これはつまり「平和」が年間を通しての季語ってことでいいんじゃないかと、そういうふうにも思われる。

平和という季語あり21世紀 万智

俵 万智(たわら・まち)

1962年、大阪府門真市生まれ。早稲田大学文学部卒。1986年、『八月の朝』で角川短歌賞受賞。1988年、『サラダ記念日』で現代歌人協会賞受賞。2004年、評論『愛する源氏物語』で紫式部文学賞を受賞。2006年、『プーさんの鼻』で若山牧水賞受賞。その他の歌集に『オレがマリオ』、エッセイ集に『旅の人、島の人』など。

文:俵 万智

最終更新:7/20(水) 12:00

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