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サッカー中継を変えるOTTサービスの夜明け

footballista 7/20(水) 12:47配信

 7月20日、Jリーグがパフォームのライブストリーミングサービス 『ダ・ゾーン』との放映権契約締結を発表。契約期間は2017年からの10年間、放映権料は総額でおよそ2100億円という巨額契約となった。

 今回の契約によりサッカー中継は一大転機を迎えることになるが、これ以外にもサッカーを取り巻くメディア環境は大きく変化してきている。そんなメディアとサッカーとの最新事情に迫った月刊フットボリスタ第35号の特集「新世代メディアとサッカー」から、UEFAマーケティング代理店「TEAMマーケティング」の岡部恭英氏が動画サービスの未来を展望したコラムを特別公開する。


放映権ビジネスを進化させた5つの波。
中国で実現するサッカー観戦の未来像


OTTとはOver-The-Topの略称で、従来のインフラに頼らないインターネット回線を利用したコンテンツ配信のことをいう。中でも注目されているのがPCやスマートフォンで見られる動画コンテンツだ。日本でも『スポナビライブ』『ダ・ゾーン』というOTTサービスが開始されるが、海外サッカーの視聴環境はこれからどう変わっていくのか?
テクノロジーの進化がもたらすサッカー観戦の未来像について思いをめぐらせてみる。


日本にもようやく第5の波の到来?


 2016年3月に日本のソフトバンクとヤフーが、『スポナビライブ』というスポーツライブの配信サービスを開始することを発表。6月、今度は英国ロンドンに本社を置くスポーツメディア事業を主としたパフォームが、同じくインターネットでのスポーツライブのサービス『ダ・ゾーン』をリリースすると続いた。

 放映権ビジネスは、メディアの変化に合わせる形でパラダイムシフトが起こり、増額されてきた歴史がある。私は現在までに起きたパラダイムシフトを「5つの波」と呼んでいる。

「放映権ビジネスの5つの波」とは?
1.公共放送にほぼ無料で提供(看板広告モデル)
2.地上波に有料販売
3.ペイTVに有料販売
4.電話会社が参入
5.インターネット企業の参入

 サッカーのテレビ放映権は、最初はほぼ無料から始まっている。当時はスタジアムに出す看板の露出が重要視されていた。地上波に放映権を有料で販売するようになった後、ペイTV(いわゆるCSなど)の参入もあり、価格が高騰。そして現在、プレミアリーグでは2016-17~18-19の3シーズンにおいて、電話会社であるBT(ブリティッシュテレコムズ)が参入し、国内だけで放映権料が1兆1300億円という金額に膨らんだ。これは上記の第4の波にあたる。長期にわたりインフラビジネスで莫大な利益を上げてきた電話会社が、固定電話のビジネスモデルがほぼ死にゆく中で、自分たちのインフラを生かす形である。


中国で起きている第5の波


 ここからさらに巨大資本を持ったインターネット企業(OTTサービスを提供する)がサッカー放映権ビジネスに参入してくることを、私は個人的に第5の波と定義している。

 Netflix、Amazon、YouTube、日本ではLINE、そして中国ではWECHATなどが知られている。デバイスを選ばず、テレビ、スマホ、PC、タブレットなどインターネットのコネクションさえあれば、ありとあらゆるコンテンツを、プラットフォーム(地上波、ケーブルテレビ)にこだわらず消費できる。

 サッカーにおけるOTTが、一番進んでいるのは中国だ。中国には、テンセントとアリババという2つの巨大資本を持ったインターネット企業がある。ユーザー数、収入の両面から見ても、両社とも世界トップ10に入る規模を誇っており、当然OTTサービスも提供している。さらに最近では中国版ネットフリックスとも呼べるLETVやPPTVなども出てきた。中国のOTTサービスは、すでにCL、リーガエスパニョーラ、プレミアリーグ、ブンデスリーガなど、欧州の人気リーグの放映権ビジネスに参入している。SINAは世界最大のインフォテインメントサービスであり、CLを配信して10年になる。さらに新しく参入したLETVは2016-19のプレミアリーグの権利を香港で取得した。香港は決して大きなマーケットでないにもかかわらず、金額は3年間で約400億円となった。

 中国だけでなく、世界的に若い世代の視聴習慣が根本的に変わってきている。以前はマスメディアといえばテレビであり新聞であったが、若い世代にとってメディアと言えば、中国ではテンセントのWECHAT。日本だとLINEであろうか?視聴習慣がすでに変わっている若者にとって、自分たちが使っているプラットフォームであらゆるコンテンツを消費するのが普通のことなのだ。特に中国ではもともとマスメディアが政府のプロパガンダ、つまり広告塔のような役割と認識されていた。基本は政府がコンテンツをスクリーニングするため、日本やその他先進国のような商業的なメディアが少なかった。当然それは若い人にとっては面白くない。そこで規制の緩いインターネットやSNSを通して、いろいろなコンテンツが一挙に押し寄せた。若者たちはそれらを使ってあらゆるものを消費している。テンセントのWECHATやSINAのweiboのユーザー数はすでにそれぞれ2億人、6億人を超えたと言われている。

 それだけのユーザー数になると、エコシステムの中でビジネスが成り立ってしまうのだ。例えば、動画のコンテンツだけで収益化しようとすると簡単ではないかもしれないが、WECHATにはありとあらゆるサービスが盛り込まれているので、動画コンテンツ自体はサービスの一つに過ぎない。大げさではなく「WECHATでできないことはない」と言えるほど何でもできる。動画視聴はもちろん、財布にもなるし、銀行代わりにもなるし、市役所など行政の手続きも行える。ここまででき上がったエコシステムだからこそ、中国のOTTは一挙に大きくなったのだ。

 今回Jリーグの放映権獲得が報道されているパフォームは、ドイツや日本でアグレッシブに仕掛けているが、スポーツにおいては日本のOTTは中国ほど進んでいないのが実情だ。スポーツに限ると、それは他の欧州諸国、アメリカにも言えるかもしれない。

 中国ではエコシステムを持ったソーシャルメディアが完成していることと、その規模がとてつもなく巨大になっているからこそ、他の国に先行してOTTのビジネスが伸びている。当然巨大なお金を持っているので、彼らからしたら動画コンテンツへの投資は払えない規模ではない。

 日本は中国と比べたらまだまだOTTの夜明けに過ぎない。ここからどのように成長させていくかが本当に大事になってくる。

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最終更新:7/20(水) 13:18

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